5月23日までグラフペーパー 青山にて岡山発祥ブランド「ソウモ」のポップアップストアが開催中。ブランドの名を一躍有名にしたアイコンパンツを筆頭に、椅子やアートなども幅広く網羅するクリエイションへの熱い想いをデザイナーに聞いた。
ここは都内で最も辿り着き難いとされるショップ「グラフペーパー 青山店」。袴のような、それでいて軍モノのような、特異なデザインパンツを着用した洋服好きがひっきりなしに来店し、「SOUMO(ソウモ)」のポップアップスペースを目指してまっしぐらだ。
この、大人男子が注目すべき新進ブランドの魅力とは? 期間限定ポップアップストアの店内にて、岡山発祥ブランドとしての誇りと“作品”に込めた熱い想いを、山本雄太=「ソウモ」デザイナーに聞いた。
SOUMO 山本雄太:ポップアップストアはクリエイションの実験結果のようなもの。自由を勘違いして物語とこだわりに溢れすぎたこの国、その「(自由)」から解放されたところにクリエイティブは存在すると思います。
岡山弁で饒舌にまくしたてるが、物腰は柔らか。デニムの産地であり職人気質のデザイナーが多い岡山県人ならではの熱量に圧倒され、その背景を探りたくなる。
百聞は一見に如かず。ポップアップの目玉である限定パンツに、意識高いコンセプトが反映されていた。
コレクションに付随する数字はブランドを始めた2015年1月からの通し番号で、区切り以上の意味はないという。最新セクション「12/12」では「改善・再構築」のキーワードを加え、過去の制作物を見つめ直した。解釈する行為と服を着る行為は同義ということらしい。
極太シルエットのグラフペーパー限定デニムは、1940年代の米軍が採用した「41カーキ」を着想源に、深いプリーツを内側に入れたアイコニックなフォルム。「ソウモ」を語るうえで外せないデザインパンツがこれだ。
山本:4年ほど前、セクション「04/04」で初めてリリースしたビッグタックチノがこれです。認知度が一気に上がり、岡山まで指名買いに来てくれるファンもいらっしゃいます。今回は「グラフペーパー」のデニム生地のリジッドとグレーを使って“改善・再構築”してみました。
もう1型の限定パンツは、1950年代の米軍が採用した「M-51」が着想源。セクション「06/06」でリリースされた変形カーゴを、「グラフペーパー」オリジナルのコットンツイルで仕上げている。先のプリーツパンツと迷いつつ、結局両方購入してしまうファンも多いとか。
山本:垂らしたストリングは戦禍の中でポケットの中身が揺れないように外側を巻いて縛るものです。自由に巻いてスタイリングのポイントでも使っていただけます。古着屋で働いていた20代の頃の経験と知識と理想を注入した、玄人好みのデザインかと。
惜しげもなく、恥じらわず、ブランドの独自性を語る。
興味の幅も広く、三脚椅子(受注生産)とシリアルナンバー入りのアート作品も、等しく手掛けた作品だ。外套の雰囲気が一変する防寒用のフーデッドマフも、単品別売りでアートのごとく鎮座している。
洋服も椅子も絵も価値はフラット。滲みでる出る熱量を語る最中、背中越しのマスク裏に笑みが見えた。
山本:私と同じく岡山拠点のKITAWORKSと共作した3本脚のチェアは、ハンス・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンの発想と逆で、後ろ脚が1本です。前に1本脚の椅子よりも倒れやすいので、常に緊張感を強いるデザインだと言えるでしょう。利便性や実用性よりも、モノが直立する最小単位、3本脚の佇まいの美しさに重きを置きました。
洋服以外販売される整然としてカオスなこの世界観は、「ソウモ」だけのもの。ファンが虜になる理由がわかる。
また、同じフロアで行なわれる秋冬商品の受注会では、ボリューミーなカシミアコートがいち推し。デザイナー自ら別売りフードマフをコーディネートしてくれる。
都内での取り扱い店は片手で数えるほど。岡山に根差す「ソウモ」のユニークな立ち位置は、ともすれば地方の名物ブランドで括られてしまう危うさがある。
同時に、目利きにとっては、宝探しの醍醐味でもある。
山本:岡山でカーゴパンツを購入されたジャッキーさんが、ディレクターの南(貴之)さんに「ソウモ」との取引を猛烈プッシュしていただいたと聞きました。ジャッキーさんと本気の想いをぶつけあった記憶が蘇りますね。
岡山オリジンの少量生産、東コレへの参加は考えたこともなく、展示会すら催さない。先のKITAWORKS、倉敷市児島のデニム工場など、気心の知れた地元の職人たちとの地に足の着いたコミュニケーションを大切にしている。既存のファッションサイクルに異を唱えているようにも見える、独自のスタンスは頑なだ。
山本:言葉は悪いですが、展示会の代わりに、洋服が完成するとサンプルを勝手に送りつけて良し悪しを判断してもらっています。やはり岡山拠点は譲れないところ。ネットも見ませんしSNSもやりません。
これぞ教科書のように明白な、ファッションデザイナーが手掛けるデザイナーズブランドの本懐。ピンポン玉のように服作りへの熱い言葉がまろび出て、会話が弾む。うっかり、インタビュー取材のイロハであるブランド名“SOUMO”の由来を聞き忘れてしまっていた。
山本:そこは深く考えずに、アパレル用語の梳毛(そもう)でもよいかと思います。今はファンと一緒に「グラフペーパー」と「ソウモ」のシナジーに刺激を受けているところです。これだけは、岡山では味わえませんから。
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Graphpaper
Text: Takafumi Hojoh