モノづくりの背景を知っていようがいまいが、よい服に変わりがないのは事実。ただその裏にある熱すぎる情熱と細かすぎるこだわりを知ってしまったら、また格別の愛情が生まれるはず。作り手の皆さん自ら、抑えられない思いをめいっぱい語っていただきました!
至高のフォルムを追求する
小山雅人さん(HEUGN デザイナー)の場合
本当にいいコートは、背中。肩の後ろ斜め45度がいちばんかっこいい。
理想は、一見シンプルだけど着たときに「何か違うな」と思ってもらえる服。バルカラーコート(1)の特徴は“フォルム”。’40年代くらいのヴィンテージのミリタリーコートがベースですが、昔のコートって肩の傾斜が絶妙で。この肩の傾斜ゆえに出る色気がある。一般に傾斜が強いと着づらいとも言われるのですが、かっこよく見えるフォルムと着心地を追求するほうがいいんじゃないか、と。製品化に際しては何度もトワルチェック(テスト生地でフォルムなどを確認する作業)をして、ギリギリの線を狙いました。着用時にどう見えるかはこだわっている部分。「ユーゲンのコートって自然に襟を立たせたくなる。(コートを着て)最後はここ(襟)で終わる」なんて人に言われたこともありますが(笑)、それを含めてきりっと見えてほしい願望がある。
個人的にはコートの色気は肩、背中で感じることが多い。僕自身、街で「あの人のコートの後ろ姿かっこいいな」って振り返ることありますよ。素材はダブルクロスのコットンで二重織り。張りのある質感が特徴で着るうちにいい味が出る。細かい話だと、基本的にはコバステッチできれいに処理していますが、脇と肩はダブルステッチでかっちり見えすぎないように意識したり…。こういう微妙な部分で、着たときの印象って左右されるもの。ベーシックだからこそディテールを大切にしています。
コートは
背中と肩で決まる!
1
brand | HEUGN |
---|---|
model | “Daniel” Balmacaan coat |
price | ¥157,500 |
シャツは最初から定番展開しているバンドカラー(2)とレギュラーカラー(3)の2型。ブランドの軸はシャツとスラックス、補完する形でコートやブルゾンがある。そう考えたときに、自分が作るべきはネクタイをするシャツではないし、カジュアルに振り切ったシャツでもない、と。中間的かつニュートラルに着られるシャツは?と考え抜いて、上品なレギュラーカラーシャツと、カジュアルなバンドカラーシャツの両方を作る、という結論に落ち着いたんです。ベースのフォルムは1940年代のヴィンテージのシャツ。どちらも同じ年代ですがバンドカラーはイギリス、レギュラーカラーはフランスものがモチーフに。肩幅はジャストフィットですが、裾にかけてゆとりがあって、今着てもモダン。バンドカラーシャツはデタッチャブルカラー(別売り)タイプ。つけ襟はワイドスプレッドとラウンドの2型。プラケット(前立て)付きのデザインで、動きやすいよう背中にプリーツをとってスポーティに仕上げています。当時のシャツはどれもヨークの位置が高く、肩甲骨の上に位置するので運動量が確保されて着心地がいい。
対してレギュラーカラーは、フォーマルな作りなので前立ては設けずバックはギャザーに。ただこちらもギャザー位置が高く、着ると馴染むのでいやらしく見えません。袖も動かしやすいように二枚袖で立体的にしているんですが、バンドカラーのほうは袖口まで切り替えがあるのに対し、レギュラーカラーは上からジャケットを着ることも想定して袖元がもたつかないように肘先で終わるように処理しています。さらに細かいことを言うと、レギュラーシャツは袖をまくれるように剣ポロにボタンをつけているんですが、あえて中央でなく袖口に近い位置につけています。通常の位置だと袖が折れすぎてしまい収まりが悪い。ちょっとニュアンスをつけて折り返したときに色気が生まれる位置、そこにこだわっています。
2
brand | HEUGN |
---|---|
model | “RoB”Band Collar |
price | ¥29,400 |
3
brand | HEUGN |
---|---|
model | “JAMES” Regular Shirt |
price | ¥29,400 |
British!
French!
ツープリーツのワイドパンツ(4)は、ユーゲン的にはチノパンの位置づけですが、パターンは完全にドレス仕立て。横から見るとワイドだけど、ウエストをジャストではくとクリースがまっすぐ落ちて立ち姿がすっきり見える。逆に腰ばきするとクッションが生まれ、スニーカーでも収まりがよく見えます。後ろのほうの股上の位置を高くして、ホールド感をよくしているのも特徴。裾は7㎝の縫いしろを残していて、3~4㎝のダブル幅ではきたい人にも対応できるように配慮しています。今後取り組みたいのはハイゲージニット。それこそさまざまなブランドのものがあるので自分がやる意味を考えないと…。やはり着用時の佇まいに色気があるものにしたいのですが、それが糸なのか編み地なのか、はたまたフォルムなのか…。綿かウールかも悩ましい。オールシーズン着たいけど、どちらかの糸でしか作れないとしたらどっちだ?みたいな(笑)。
4
brand | HEUGN |
---|---|
model | “George” 2p PANTS |
price | ¥39,900 |
正面から見たら細身で
スッキリ!
横から見たら
ボリューミー
長文解説!に関するおすすめ記事はコレ!