2021.05.16
最終更新日:2024.03.07

レショップ金子恵治さん自ら長文解説。機能性よりも愛着重視のパンツ、シャツ、財布3選

モノづくりの背景を知っていようがいまいが、よい服に変わりがないのは事実。ただその裏にある熱すぎる情熱と細かすぎるこだわりを知ってしまったら、また格別の愛情が生まれるはず。作り手の皆さん自ら、抑えられない思いを字数制限めいっぱい語っていただきました!

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機能性よりも愛着重視

金子恵治さん(レショップ コンセプター/バイヤー)の場合

当時のオリジナルに、現代の化学調味料を入れるような別注はやりたくない。

まずはLeeの“ロガーパンツ(きこりのパンツ、1)”。オリジナルは1800年代半ばに創業したBOSS OF THE ROADというワークウェアブランド。1940年代にLeeに買収されたんですが、その後も作り続けられているモデル。以前にデニムで復刻したんですが、今回は生成りのペインターパンツ生地で再復刻。最大の特徴はオリジナルにもついているサスペンダーボタン。ウエストにアジャスタータブをつけ、絞ってはける仕様に。“通称ピエロパンツ”と呼ばれる「101-Z Rodeo Clown Pants」のディテールを、ロガーパンツと“ガッチャンコ”させています。根っからのファンも納得できるものを作らなきゃダメ。縫製から付属まで当時のものにこだわってます。

僕自身ヴィンテージが好きだから現代の化学調味料を入れるようなことはやりたくない。ボタンもLeeのヴィンテージレプリカ用のドーナツボタンを使ってます。もう一つ大きな特徴はバックポケット。普通パンツのサイズを変えたら、全体の比率のバランスって調整しますよね? でもLeeのバックポケットって両端ギリギリについていて、サイズが変わってもそこは同じ。サイズが大きくなるほど中心からポケットが離れて不格好に見える。それが逆にかわいい。実際手も入れやすくて理にかなってる。ちなみにこれは38インチ。ウエストを絞るとタックが入ったように見えて面白い。

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brandLee×L’ECHOPPE
modelBOSS OF THE ROAD 88 logger pants
price¥18,000
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ヴィンテージレプリカのドーナツボタン

不細工LOVE!


コモリのシャツ(2)は、小森さんと居酒屋で話しながら生まれたシャツ。僕らみたいに普段カジュアルな格好の人が、急に冠婚葬祭でドレスシャツが必要になってもどこで買ったらいいかわからないよねってところからスタート。ターンブルアッサーやシャルベとか、いいシャツはあるけどもっと身近で作れないのかな?って。ベースは定番のコモリシャツ。もともと細番手の糸を使っていてドレスシャツに匹敵する生地だから、そこは生かして処理を変えよう、と。

身幅は少し狭くして襟やカフに芯を入れて、ボタンも少しドレッシーに。製品後には薄めにアイロンをかけています。最大の特徴は襟。ネクタイを通せるように台襟の高さを上げたんですが、「僕らが本当に好きなものを作ろう」ってことで、小森さんが実際に愛用しているタイ・ユア・タイの“セッテピエゲ(芯地を用いず、生地を7回折り込んで作られる製法)”に合うように作ってます。ニッチすぎる(笑)。実際にタイを当てたり巻いたりしながら襟型は決めました。これまでに2回販売したけど、再販時はリピーターの人が多くて「リアルにスーツに合わせてます」ってお客さんの声も…。僕自身はネクタイをする機会がなく、今なお静かに出番を待ってます(笑)。

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brandCOMOLI×L’ECHOPPE
modelDRESS SHIRT
price¥28,000
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ニッチですみません…


がまぐち(3)は僕の私物。N25っていう日本のガレージブランド。デザイナーはがまぐちの口金の職人さん。手作業でこのクオリティはすごい。10年くらい使ってもびくともしないし、仮に壊れても直してくれる。がまぐちって勝手に日本のものだと思い込んでたんですけど、西洋由来で、明治時代頃にフランスとかから入って日本で進化を遂げたものらしいんですよね。歴史的背景がクリアになったら急に腑に落ちて、「じゃあ洋服と合わせてみたいな。トライしてみよう」と。実際に数カ月使ってみて、僕の中でGOサインが出たので、レショップでも取り扱ってがまぐちをもっと一般化させてみたいって。これはカバの革を使ってるんですが、輸入のハードルが高く、二つで20万円以上してめちゃくちゃ高級。でも実際に触るとみんないいって言ってくれる。お札の出し入れも楽だし、実用にかなってる。領収書もきれいに入る。小さいほうは完全にファッションだけど僕は“親子”で持ちたい(笑)。

唯一のネックは重さ。ただこれだけカード文化だと、お金に対する感覚が希薄になりますが、これはいろんな意味でお金の重みを感じます。がまぐちを開けるときの所作もいい。今はみんな財布コンパクトですよね。時代錯誤かもしれないけど、僕は機能より愛着に惹かれるタイプ。バチッと開けて小脇に抱える所作が日常に彩りを与えてくれるように思えるんです。お昼に行くときも、毎日ちょっと楽しい(笑)。

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brandN25
modelLeather GAMAGUCHI wallet
price¥180,000(large)・¥48,000(small)
レショップ金子恵治さん自ら長文解説。機能の画像_4
お問い合わせ先/すべてレショップ 渋谷店



Photos:Yoshio Kato(Still) Kanta Matsubayashi

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