2020.10.24

映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、大人コーデ術

近年で言えばティモシー・シャラメがその筆頭だが、文化系スポーツ男子のファッションアイコンは映画にも数多く存在する。ガチなスポーツ映画では見られない知的なスタイルサンプル!

「パフォーマティブ」な感覚が欲しい。

知的にスポーツウェアを着る文化系男子、と言われて最初に思いつくのがヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグだ。ポロシャツ、ラガーシャツ、クリケットセーター、マドラスのショーツ――そんなプレッピーなアイテムは彼のトレードマーク。きっかけは古着屋でラコステのポロを見つけたことらしい。彼が高校生だった’90年代末のニュージャージーでは、それは誰も着ていないキッチュなブランド。早速ターコイズのポロ姿で学校に行くと、先生に「ジョン・ヒューズ映画の悪役みたいだな」と言われたという。以後、エズラは「パフォーマティブなプレッピー」にハマりだす。コロンビア大学で始めたバンド、ヴァンパイア・ウィークエンドのコンセプトもまさにそれ。彼の着こなしに知的なユーモア、ひねった感じがあるのはそのせいだ。個人的には、文化系としてはこの「パフォーマティブ」な感覚がちょっと欲しい。

映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_1

Ezra Koenig


コロンビア大学と同じアイビーリーグのハーバード大学が舞台の『ソーシャル・ネットワーク』(2010)で考えてみよう。フェイスブック黎明期の裁判で争う三者の着こなしを比べてみると、ジェシー・アイゼンバーグ演じるマーク・ザッカーバーグは、フーディに冬でもスポーツサンダルという典型的ナードスタイル。友人役のアンドリュー・ガーフィールドは少し頑張ってブランドものを取り入れている(映画ではその中途半端さが「ダサい」と言われてしまう)。そしてアーミー・ハマーが双子を演じるウィンクルボス兄弟は上流階級のボート部選手で、正装はブレザーで決めるタイプ。いちばん取り入れやすいのはナードだが、いまはあえて、ウィンクルボスの正統派アスリート風に挑戦してみたい。ヘッドギアは難度が高すぎるかもしれないが、きちんとしたラガーシャツやライン入りのバスローブなど、目に留まるアイテムに事欠かない。

映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_2

Jesse Eisenberg 『The Social Network』(2010)


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_3

Armie Hammer 『The Social Network』(2010)


ヘッドギアは難しくても、テニスのヘッドバンドなら? 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)でルーク・ウィルソン演じる元テニス選手は、もちろんビョルン・ボルグがモデルだ。長髪にヘッドバンドのアイコニックなスタイルに、ウェス・アンダーソン監督はいつも自身が着ているようなスーツジャケットを合わせている。そのユーモラスなカッコよさ! この最高にモードな映画では、アディダスのジャージにも注目してほしい。

映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_4

Luke Wilson 『The Royal Tenenbaums』(2001)


一方、エズラ的プレッピー・アイテムをそのまま着こなしているのが『君の名前で僕を呼んで』(2017)のティモシー・シャラメだ。ラコステのポロシャツだけでも、冒頭のえんじのポロなど、何度も着替えてくる。’83年、北イタリアの夏。このあまりに美しい映画は、シャラメが着るものだけでなく、アーミー・ハマーの短いショーツという意外なアイテムまで「イン」にしてしまった。ちなみにシャラメは、本作でのブレイク前に『ホット・サマー・ナイツ』(2017)でラガーシャツ姿の危うげな少年を演じている。こうしたアイテムは、華奢で美麗なシャラメが着たことで少し印象が変わったかもしれない。

映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_5

Timothée Chalamet 『Call Me by Your Name』(2017)


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_6

Timothée Chalamet 『Hot Summer Nights』(2017)


少年と言えば、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)でトム・ホランドが着たサッカーシャツもかわいい。ヨーロッパ旅行中のアメリカ人観光客が着そうなアイテムながら、オランダ代表のクラシックなオレンジのユニ、というチョイス! ヨーロッパではどの年代の男性も普段着にしているサッカーシャツ。どれを選ぶかで「わかる人にはわかる」ところがいい。そしてもう一つ、わかる人にはすぐわかるアイテムがスニーカー。ジョン・ヒューズ映画では悪役ではなく、つねにナードなヒーローを演じていたアンソニー・マイケル・ホールが『ブレックファスト・クラブ』(1985)で履いているのがナイキのブルーのインターナショナリスト。これがアップで映るのは、「これでしょ、これ」とアピールするためだ。

映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_7

Tom Holland 『Spider-Man:Far From Home』(2019)


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_8

Anthony Michael Hall 『The Breakfast Club』(1985)


さりげなく取り入れるのではなく、一瞬「これ、いけるかな?」と思うようなアイテム、レトロでクラシックなものを着る。そのイメージで遊ぶ。そこに文化系男子のウィットを感じたい。

文/萩原麻理



映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_9

『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)

2003年、ハーバード大学に通う19歳の学生マーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、親友のエドゥアルド・サヴェリン(アンドリュー・ガーフィールド)と学内で友人を増やすためのサイトを立ち上げた。そのサイトは瞬く間に学生たちの間に広がり、いつしか社会現象を巻き起こすほどの巨大サイトへと成長していく。一躍時代の寵児となった彼らは、若くして億万長者に! それと同時に最初の理想とは大きくかけ離れた孤独な場所にいる自分たちに気づくが…。


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_10

『ザ・ロイヤル・テネンバウムス』(2001年)

テネンバウム家の3人の子どもたちは若くして成功した天才児。10代で不動産売買に精通し、国際金融にも才能を発揮する長男チャス(ベン・スティラー)。長女マーゴ(グウィネス・パルトロー)は12歳で劇作家デビュー。次男リッチー(ルーク・ウィルソン)もまたテニスのジュニア選手権を3連覇し、将来を嘱望されていた。だが、父親の過ちと裏切りにより一家は崩壊。3人とも輝きを失ってしまう。そんな彼らに再び家族の絆を取り戻したいと考えた父親はある計画を立てるのだが…。


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_11

『僕の名前で君を呼んで』(2017年)

1983年夏、家族に連れられて北イタリアの避暑地にやってきた17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会う。一緒に自転車で散策したり泳いだり、本を読んだり音楽を聴いたりするうちに、エリオはオリヴァーに特別な感情を抱くように。やがて思いは通じるが、ふたりは激しい恋に落ちるのだが、夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づいてきて…。


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_12

『ホット・サマー・ナイツ』(2017年)

1991年、最愛の父を亡くしたショックから立ち直ることができないダニエル・ミドルトン(ティモシー・シャラメ)は、夏を叔母の家で過ごすため、海辺の小さな町ケープコッドにやってくる。周囲と馴染むことができないダニエルは、ひょんなことから地元の不良ハンター・ストロベリー(アレックス・ロー)とつるむように。町で一番の美女と称される妹のマッケイラ(マイカ・モンロー)を守ることに命をかけていたハンターから「妹には近寄るな」の言葉に怯えながらも、ダニエルはマッケイラと秘密のデートを重ねていくが…。


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_13

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2017年)

スパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)は夏休みに学校の友人たちとヨーロッパ旅行に出かけることに。しかしそこで待っていたのは、元S.H.I.E.L.Dの長官であるニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)だった。なんと迫り来る新たな脅威を察したニックは、スパイダーマンの力を必要としていたのだ。怖気付くピーターだったが、ニックはその使命をスパイダーマンに託すことに。ヨーロッパの各都市に自然の力を操るクリーチャーたちの脅威が迫り…。ピーター=スパイダーマンはこの危機にどう立ち向かうのか!?


映画の中の「文化系スポーツ男子」に学ぶ、の画像_14

『ブレックファスト・クラブ』(1985年)

土曜日の早朝、イリノイ州シャーマー・ハイスクールの5人の学生が、休日にも関わらず登校してきた。彼らを呼びつけたヴァーノン先生(ポール・グリーソン)は、図書館に5人を集め、「自分とはなにか?」という作文を書くように命じる。彼らはさまざまな問題を起こしたを罰として、この作文を書かされるハメに。約9時間、大きな図書館に軟禁状態にされる5人。何から書いていいのかわからないまま時間だけが過ぎていく。そんななか、雑談からお互いの身の上話を交わし始めた彼らは次第に心を開かせていくのだが…。


Text:Mari Hagihara
Illustration:Naoto Kawashima
Photo:AFLO

RECOMMENDED