デザイン、防寒性、動きやすさ、ボリューム…さまざまな点においてアプローチが異なるファッションブランドとアウトドアブランド。それぞれの人気ダウンを比較レビュー。
アウトドアブランド編
防寒性や動きやすさなどスペックの高さはもちろん、普段の着こなしとどう合わせられるかも検証。
英国アウトドアらしいトラッドなダウン
1P.H.Designs
有名冒険家も愛用する英国発のピーエイチデザイン。コットンのような風合いのシェルを使用し、クラシカルな雰囲気に仕上げられており、アウトドアブランドのものの中では都会的に着られるデザイン。オリーブが渋い。
ダウンジャケット¥132,000/ピーエイチデザインズ(グラストンベリーショールーム) その他/本人私物
百日紅 オーナー 山下武紘さん
「シンプルでシルエットのきれいなデザインに惹かれます。これは防寒性や止水ジップなど本格アウトドアの仕様ですが、ボリュームが程よく着丈も長すぎないのでタウンユースに最適。英国らしいエレガントな佇まいに、落ち着いたオリーブとのコンビも好みです」
TF バイヤー 鈴木雄介さん
「シルエットはコンパクトに見えますが、ダウンがしっかり詰まっているので防寒性が高い。ミニマルでありながら、表地のマットな質感からはクラシカルな雰囲気も漂っていて、トラッドなデザインが好きな人にも刺さりそうです。まさに玄人ウケするダウンだと思います」
暖かさ、機能性、定番ダウンの安心感がある
2Patagonia
パタゴニアで人気の「フィッツロイ・ダウン・フーディ」はソフトな肌触りが特徴で、軽量ながら保温性と防風性は抜群。裾とフード部分は便利なドローコード付き。折りたたんでコンパクトに収納できるパッカブル仕様なのもいい。
ダウンジャケット¥55,000/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス) その他/本人私物
Bshop バイヤー 山本慎さん
「定番アイテムとして間違いない安心感がありますね。着膨れしないコンパクトなフォルムですが、暖かさは十分。正直、このダウンにマッチしないアイテムはないと思いますが、トラックパンツやスニーカーを合わせて全身スポーティに寄せたスタイリングにするのもよさそう」
NEAT デザイナー 西野大士さん
「王道ダウンを一着は持っておきたいところで、着回し用にパタゴニアを選びたい。ワードローブにあれば、寒い日は悩まずコレをはおればいい。海外からの観光客がクライミングパンツをさらっと合わせているのをよく見かけますが、その気取らないスタイルがかっこいいです」
パックが見えないスマートなデザインに赤が効いてます
3Marmot
1982年にデビューしたマーモットの定番モデル「マンモスダウンパーカ」。ビッグシルエットによる丸いフォルムと、褪せた赤がレトロな印象だ。「GORE-TEX WINDSTOPPER®」を使用した2層素材と撥水ダウンを採用し、極寒にも耐えうるハイスペックな一着。
ダウンジャケット¥55,000/マーモット(サードシップ) その他/本人私物
TF バイヤー 鈴木雄介さん
「これぞアウトドアブランドのダウンというノスタルジックな色と形が自分好み。ダウンパックが見えないデザインなのでマウンテンパーカ感覚で着やすく、ボックスシルエットでスタイリングがまとまりやすい。裾ではなく、腰上の位置にドローコードがあるのも新鮮でした」
百日紅 オーナー 山下武紘さん
「’80年代のモデルではありますが、2000年代以降にストリートカルチャーとして流行していたこともあり、馴染みがあります。色とボリュームが好みで、久しぶりに赤いダウンが着たくなりました。かなり暖かいのにあまりの軽さに驚きましたし、デザイン面も機能面も満点です」
ガチのスペックを搭載したクライマーズダウンが新鮮
4Rab
プロのクライマーたちが愛用している、知る人ぞ知るイギリス発のブランド。高い保温性と耐久性を兼ね備え、ヒマラヤ山脈のような高所でクライマーをサポートするための機能を搭載した一着。アウトドアダウンらしいグレーとオレンジのコントラストが目をひく。
ダウンジャケット¥132,000/ラブ(ランドアール) その他/本人私物
NEAT デザイナー 西野大士さん
「オレンジとグレーの配色が新鮮ですし、袖がパンパンに膨らんだシルエットもいいですね。サイドジップやフードのドローコードなどギミックがきいている。これくらいアウトドア感全開のほうがファッションとして成立する気がします。ただ、暖かすぎて汗が止まりません(笑)」
Bshop バイヤー 山本慎さん
「アウトドアダウンらしく機能に振り切った一着ですね。ベンチレーションやサイドポケットなど、ディテールの作りがほかのダウンと比べて圧倒的に細かい。ダウンを主役に、ハイゲージのニットにワイドなスラックスを合わせたりして、大人っぽくドレッシーに着こなしたいです」
機能的なデザインこそをファッションとして楽しむ
西野 ダウンってもともとは防寒のための機能服じゃないですか。アウトドアブランドは登山家や冒険家に愛用されていたり、素材を開発し続けていたりとルーツやストーリーも含めて愛せるのがいい。
山本 道具をファッションとして着る感じに惹かれますよね。真冬の海外出張用に防寒や防風を重視して定番のザ・ノース・フェイスやモンベルを持っていますが、王道のよさがあります。今回パタゴニアのダウンを着て、あらためて王道の魅力に気づきました。
山下 同感です。ただ、トレンドを意識したスタイリングを楽しむにはやや難しいイメージがあります。
鈴木 確かにアウトドアダウンは、いなたい雰囲気を生かして着るイメージですね。でもむしろ、そこを楽しみたい。僕はウォッシュドデニムにレザーシューズで、あえて普通に合わせるぐらいでもいいと思っている。
西野 その感覚、アメカジ好きとしてわかります。あるいはオーバースペックに振り切るのもアリ。ラブのジャケットのように思い切ったほうがファッションとして主張しやすい。
Text:Takako Nagai
Cooperation:PACIFIC FURNITURE SERVICE