ニットに奥行きを与えるフレグランスを、香りに一家言ある池田尚輝氏が提案。コートをはおる前に、まずは香りから。
01：素朴なニットに華やぐ香りでひねりを
ニットJamieson’s シェットランドウールニット
香りDRIES VAN NOTEN Voodoo Chile
「満を持して誕生したドリス ヴァン ノッテンのフレグランス。洗練されたムードがありつつ、デザイナーが愛する庭やそこを彩る花々が思い浮かぶような温かみもあって、どの香りも実にドリスらしいというのが第一印象。10種のラインナップの中から選んだのは、ジミ・ヘンドリックスの曲名「ヴードゥーチャイル」から着想を得た香り。確かに華を感じる複雑な香りがテーマに合っています。そこにドリスの柄ニット…ではなく未脱脂のシェットランドニットにデニムを合わせたシンプルさがちょうどいい。女性がこういうスタイルにパールネックレスを合わせるようなノリですね」
スコットランドのシェットランドウールの稀少なアンダーコート（内側の毛）のみを使った一枚。ゆったりとしたサイズを選んで、素朴な着心地に包まれたい。対して香りは、昨年本国でローンチし、今年4月に日本上陸を果たしたフレグランスシリーズ。中でも男性からの支持が高いジミ・ヘンドリックスのナンバーを冠した香りは、スパイシーなローズマリーとオリエンタルなパチュリのハーモニーがメイン。心地よい歪みは、まるでジミヘンが奏でるサイケデリックサウンドのようだ。
ニット¥24,200／ジャミーソンズ ニットウェア（ビショップ） デニム／スタイリスト私物 （香水）オード パルファム ヴードゥー チャイル 100mL ￥40,700／ドリス ヴァン ノッテン
02：「クラシカルだけどモダン」を高い次元で楽しむ
ニットCristaseya カーディガン
香りPerfumer H INK
「パフューマーHは以前から好きなブランドの一つ。重厚感があって冬向きの香りが多い印象。今回はその中から、インクをチョイス。紙にじわっとにじんだインクの香りの懐かしさにかけて、ヘリンボーン柄のVネックカーディガンを選びました。世界中から厳選された素材を丁寧に調香した香りは、素朴でありながらモダンな仕上がり。クリスタセヤのカーディガンも、上質な素材で紡がれた伝統的なシルエットを、発色や細かなディテールでブラッシュアップさせていて、共通する部分が多いと思います。美術館や老舗のホテルに、こんな装いで出かけてみたいものです」
懐かしさを覚える色のカーディガンは、Vが浅くゆったりとした5つボタン仕様。前後に施された大胆なヘリンボーン編みが絶妙ないなたさを演出する。パフューマーHは、調香師リン・ハリスが手がける、ロンドン・メリルボーンに工房を構えるブランド。全18種の香りの中でもウッディなノートが特徴的なインクは、古代エジプトで紙の原料として使われていたパピルスの要素やハイチ産ベチバーなどをブレンド。それらがトルコ産のローズと混ざり、すがすがしくも個性的な香りに。
カーディガン¥103,620／クリスタセヤ（ジュンカスタマーセンター） シャツ¥36,300／マーガレット・ハウエル （香水）パフューマーH パフューム インク 100mL（ボトルセット） ¥69,300／&SHOP 青山
03：菜園の香りに合わせる英国のニットスタイル
ニットSUNSPEL メランジニット
香りOFFICINE UNIVERSELLE BULY Concombre D’inde ET Menthe De Syrie
「庭で育つ野菜の香りをフレグランスに落とし込んだコレクションは、アルコールを使わない水性の処方でみずみずしくて軽やか。これは本当にきゅうりの香りがするんですけど、フレッシュさの中にまろやかさもあって、ビュリーを通すと野菜もこういう表現になるのか、と。真っ先に思い浮かんだのは、クラフト系のジンとツイードを愛する英国紳士。今回はニットなので、いい意味で“おじさんっぽい”メランジニットとモールスキンのハットで、『ひつじのショーン』に出てくる牧場主のような雰囲気に。寒くなったらこれにバブアーをはおって、知る人ぞ知るジンが揃うバーにでも」
英国で最高級の羊毛を用いたリブニット。ネックラインのリブを細くすることで全体にメリハリが生まれ、英国的などんよりとした色味が落ち着きを与える。香りは、今年の初夏に誕生したビュリーの菜園のシリーズより。新鮮なきゅうりの香りに、やわらかなムスクと抜けるようなミントが重なる。フルーティながらどこか野性的だ。
ニット￥83,160／サンスペル（サンスペル カスタマーサービス） 帽子￥24,200／マーガレット・ハウエル （香水）レ・ジャルダン・フランセ オー・トリプル コンコンブル・ダンド・エ・マント・ドゥ・シリィ 75mL ￥24,200／オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー
04：温かくも構築的なブランクーシの彫刻のように
ニットMARGARET HOWELL Vネックニット
香りORMAIE 28°
「ボトルを見た瞬間にコンスタンティン・ブランクーシの彫刻のようだ、と感じました。モダンな中に温もりを感じる彼の作品のように、28°と名づけられた香りにもシャープさと優しさが共存した印象を受けます。ニットもカジュアルだけれど構築的なものがいいと思い、選んだのがマーガレット・ハウエル。ざっくりとした優しい風合いがありながら、濃いネイビーの発色とVネックからは硬質さも感じられます」
やや粗い肌触りを生かしつつ編み上げたカシミヤニット。香りはナチュラルな植物原料のみを使用し、ボトルキャップには再生可能な森林のブナ材を採用した、フランス発のサステナブルフレグランス。心地よい朝の散歩をイメージした香りは、シトラスで幕を開け、やがてウッディなノートへと変化。
ニット¥83,600／マーガレット・ハウエル （香水）オルメ オードパルファン 100mL ￥35,200／トゥモローランド
05：今を感じる都会的な香りはラフに着られるニットベストで
ニットH BEAUTY&YOUTH ニットベスト
香りTAMBURINS CHAMO
「今回唯一のニットベストがエントリー。タンバリンズは、苔の香りをベースとした森を思わせる香調ながら、最終的なアウトプットは非常に都会的でファッショナブルな印象。そんなフレグランスに合うのは、赤みを帯びたブラウン系のメランジニットで温度感を出しつつ、オーバーサイズで今っぽくブラッシュアップされた形のベストがいいと思います。サーマルやロンTにザクッとはおって、ゆるくカジュアルに着こなすのがおすすめです」
程よくルーズなウールのニットベストは、冬のインナーだけではなくスリーシーズン活躍する。フレグランスは、韓国のアイウェアブランド・ジェントルモンスターが手がける話題のもの。甘いカモミールとほろ苦いクラリセージが入り混じった湿度を感じる苔の香りを、エレガントなムスクが包み込む。
ニット￥22,000／エイチ ビューティー＆ユース （香水）タンバリンズ パフューム カモ 50mL ￥13,990（参考価格）／エム
Hair&Make-up:AMANO
Stylist:Naoki Ikeda
Model:Yoshiaki Takahashi
Text:Sachico Maeno
