エディ・スリマンが手掛ける「CELINE HOMME(セリーヌ オム)」が、2月10日(金)にパリのナイトクラブ「LE PALACE」で2023年ウィンターコレクションを披露した。トレンド再燃気配のレザーライダースほか、7月入荷に備えよう。
コレクション記事ではあるが、これは来春夏ではなく直近の今秋冬の話だ。当世きっての天才デザイナーであるエディ・スリマン(Hedi Slimane/1968年7月5日生まれ)がクリエイティブ・ディレクターを務める「CELINE HOMME(セリーヌ オム)」が、2月10日(金)に2023年ウィンターコレクションをパリで披露した。
発売が迫る「セリーヌ オム」2023年ウィンターコレクションは、この思い出の地にオマージュを捧げたもの。2018年にはスリマンの50歳のバースデーパーティーもサプライズで開催されたという「LE PALACE」について、少しでも知見を広げておこう。
時を経て1923年にはミュージックホールとして、1931年にはシアター、1933年にはまたミュージックホール、1946年にはまたもやシアターへと気紛れに変遷していたが、“The Prince of the night(夜の王子)”として著名な興行主だったファブリス・エマー(FABRICE EMAER/1935年~1983年)に引き継がれた1975年が分水嶺となる。1978年3月1日、パリを代表するナイトクラブとして生まれ変わったのだ。
なお、時を同じくして1977年、NY・マンハッタンの54丁目に後の伝説的ナイトクラブである「STUDIO 54」が誕生している。ライバル視していたエマ―にとっては蔑称であったかもしれないが、「LE PALACE」が「STUDIO 54」のフランス版と称されるや、アーティストや著名人、文化人、異なるコミュニティが交流するパリ初のナイトクラブとして瞬く間に一世を風靡した。
さらに地下にはプライベートクラブの「LE PRIVILEGE」があり、そこに向かう前に仮面舞踏会やライブパフォーマンスを楽しんだという。青年期のスリマンが出入りするようになるのはまだ先の話だ。
「セリーヌ オム」2023年ウインターコレクションのテーマは「PARIS SYNDROME」。時代を見据えた非凡なアプローチとして、スリマンは2000年代のエレクトロクラッシュやエレクトロニックロックのサウンドや音楽シーンにおける昨今のリバイバルブームを掘り下げた。都市に生きるヤングジェネレーションたちに新鮮味をもって受け入れられている“エレクトロな再発見”を、安易な回顧主義に陥らずに料理したのだ。
ショー音楽も「SUISIDE」の片割れである御年75歳のマーティン・レヴ(Martin Rev)がこの日のために制作したオリジナル楽曲。いつも以上にタイト&リーンな「セリーヌ オム」を印象づけた。
トレンドのオーバーサイズの打ち出しもあるが、ボリュームに寄与する緩さよりも、ゴージャスなパワーを打ち出すもの。カシミアや伝統的な織機で織られたイングリッシュツイードは贅沢の極みだ。
ヤングジェネレーションが纏うアンバランスの妙とともに、16歳のエディが「LE PALACE」を初めて覗いたときに感じたであろうクラス感とフレッシュなモチベーション、その混沌を見る者に想像させる。
公式リリースによると、コレクションのキーアイテムは、スタッズやラインストーンでカスタマイズされたバイカーやレーサージャケットと合わせたタイトなレザーパンツであるから間違いない。
五感のなかで最も先鋭化された記憶のトリガーと言われている嗅覚もまた、UOMO本誌編集長の池田誠ほか、世界各国の編集者やジャーナリストたちの記憶の奥底に刻まれたことだろう。
CELINE 18 HOMME WINTER 23 AT THE PALACE
「LE PALACE」全盛期へのオマージュを込めた限定コレクションは7月販売予定。期待して待とう。大人のナイトクラビングは「セリーヌ オム」で決まりだ。
セリーヌの旬をもっと知りたい!
開催日:2023年2月10日(金)※パリ現地時間
場所:LE PALACE(8 Rue du Faubourg Montmartre)
テーマ:PARIS SYNDROME
CELINE