別注アイテムの発売日には全国から大人が飛行機で押し寄せ、200人以上もの行列ができる。定番アイテムもここに置かれるとなぜか欲しくなる。いま最も服好きの大人を惹きつけるショップは、東京ではなく札幌にありました。
札幌 Sapporo
ECも公式サイトもなくていい理由がわかった。
WAKE.
どれだけ求められてもスタイルを変えない。 時代と逆行するショップは温かかった。
SNSで話題のウェイクという店。ネットで検索してみても、インスタグラム以外には公式サイトもオンラインストアもヒットせず情報が極端に少ない。ただ、このムーブメントの仕掛け人が、昔メンズノンノのスナップでよく見かけていた小俣弦也さんその人であることを知った。ただし、今、インスタで見る服装は当時の印象とだいぶ雰囲気が違う。久しぶりに小俣さんに会いに札幌へ向かった。
老舗のサウス2 ウエスト8やアーチといった玄人好みのショップが立ち並ぶ面白いエリアの、ファッションのお店が入居しているとは思えない雑居ビルの3階にウェイクはあった。ほかのテナントは会計事務所や法律事務所ばかり。恐る恐る入り口をのぞくと、昔と変わらない笑顔で小俣さんが迎えてくれた。前の職場はヨーロッパヴィンテージの服やアンティーク家具を扱う渋い名店・アンプラグド。ヴィンテージ中心のお店から独立しての出店にしては、この軽やかかつラフな雰囲気、正直言って意外だった。
「古着はいまでももちろん好きですが、自分も30代になって結婚して、子どももできて、生活が変わってきました。オイルドジャケットとか着ていたらやっぱり子どもを抱っこできないじゃないですか。妻だけじゃなく子どもとの外出も増えるからすぐ洗えるほうがいいなとか、早く乾くほうがいいなとか、汚れが気にならない服がいいなとか、重いロングコートは邪魔になるなとか、そういう生活の変化からくる小さな気づきをベースにセレクトしたアイテムが並ぶお店にしたかったんです。もちろんただ着心地がよければいいというわけではなくて、ちゃんとこだわりのある、ここでしか買えないものを置きたいと思っています」
そして、入手困難なほど人気のキャップやマグカップなどスーベニアグッズの存在を抜きにしてウェイクは語れない。
「旅行や出張でお店に寄ってくれた方が気軽に買えるお土産品として作ったら、ありがたいことにこれをきっかけに認知が広まっていって。通販の問い合わせもいただきますが、店頭販売しかしません。お店に来てくれるお客さんが絶対なんで、一貫して、札幌に来たときに寄って、お話しして、欲しいものがあれば買ってくださいというスタンスです。周辺にうまいごはん屋さんもたくさんありますしね。だから現時点でECは考えてないです。まあウェブサイトくらい作れよって話ですけど(笑)。最新情報はインスタをチェックしてもらえたら」
常に客に寄り添う、小俣さんの等身大の姿勢こそウェイクの温かい空気を醸成している源なのだ。あくまで札幌で着ることを想定した服を売っていたら、東京の大人からも求められるようになった。
「東京に憧れて札幌の人が出かけるのではなく、逆に東京の人から旅の目的地にされるような店になれたらいいなとは思っています。札幌に手ぶらで来て、フルーツオブザルームのトランクスを替えの下着としてお土産に買ってもらう。そのくらいの気楽さがちょうどいいですね」
4月29日からFARAHのポップアップイベントを開催。限定品もあり。
北海道札幌市中央区南3条西12-325-13 3階
TEL:050-1179-3884
営業時間:13時~20時
定休日:不定休
インスタグラム@wake.sapporo