けっして派手でもわかりやすくもない。なのに持っているものをことごとく「欲しい」と思わせるその人=エディター小澤匡行さん。いったい何が違うのか? センス? 経験? そこには単なるベーシック志向とは一線を画す、買い物への緻密な複眼的視点があった。
同じブランドでわざわざ「似たもの」を買う意味は?
今は、昔みたいに多くのブランドを試す必要を感じないし、シーズンで大きく気分が変わることもなくなりました。大好きなブランドの似たもの同士、ほんの少しの振れ幅を楽しみたいんです。
霜降りグレーのスウェットにフリース、軍パンなどの定番はこれまで実に多くのブランドのものを買って身につけてきました。ただ数多く所有したところで着るものと着ないものが生まれるだけだし、服の間に優劣ができるのも何だか嫌で…。思考も持ち物も整理した結果、量ではなく、本当に好きなブランドの「似たもの」を買い足そうという発想に辿りつきました。
わざわざ同じブランドで似たものを買うなんて無駄だしもったいなくないか?と思われるかもしれませんがそれは違います。チャンピオンのリバースウィーブの1stと2nd、パタゴニアのフリースのフルジップとハーフジップ、エアジョーダン1のハイカットとローカット…おのおのディテールや役割には微妙な違いがあり、どちらも甲乙つけがたい。「ベストワン」を「二つ」揃えることで、逆にほかのブランドを買う必要がなくなるメリットがある。
ダブルタップスのデザイナーの(西山)徹さんが作る「ミル」シリーズの軍パンは、BDUパンツもベイカーパンツもオーセンティックなのに重苦しくなく、共通してモダンなムードがあります。リーボックのクラシックとクラブCをアップデートさせたマルジェラのスニーカーも同様で、ともにマルジェラにしか出せない知性とセンスを感じます。「どちらがいい」ではなく「どちらもいい」。昔ほどシーズンで大きく気分が変わることもなくなり、むしろこの微差から生まれるスタイルの違いを楽しみたいこの頃です。
<
>
Masayuki Ozawa
エディター。「MANUSKRIPT」代表。執筆業ほかウェブサイト等のブランディングなど幅広く手がける。ファッションのみならずプロダクトにも精通。
東京スニーカー氏が選ぶ、買うべき大人スニーカー3選
Photos:Yoshio Kato