価値があるものへの投資は厭わないが、ないものにはたとえ千円でも払いたくない。課金へのハードルが高く、お金を使う前にとことんモノを精査するスタイリストとエディターが語り合う、本当にいいものの話。
無課金スタイリスト(以下S) 無課金スタイリストってなんかすごくケチみたいですね(笑)。
無課金エディター(以下E) いえいえ、むしろ価格に左右されずに本当にいいものをジャッジできる目利き、というポジティブな意味で編集部に命名されました。光栄に思ってください(笑)。
S 以前、一緒に他誌で「ポチッとしてんじゃねー」というお手頃な名品をネットでなく自分の足で探す連載をして以来、無課金イメージがついたんですかね。いまも昔も「名もなき名品」は常に探していますが、変わったのはいまは普通に「ポチッ」としていることです。
E 実はそのときにピックアップしたラングラーのランチャージーンズ1は僕にとって名品の象徴。
S 今日までお互いにはき続けていますね。
E 当時6000円程度のラングラーと、片やデザイナーズブランドであるヴェロニク・ブランキーノを同列の名品としてSが語っていたのが新鮮でした。
実際にめちゃ美脚に見えるし、ほぼストレートに見える恥ずかしくない繊細なフレアもいい。大人の男がはくべきパンツです。
S 日本企画のものはストレッチ生地で機能的だし、日本人の体型に合う丈感。ただ180㎝以上の人はやっぱりUSA企画がオススメです。
E ダメージドーンのリメイクの一本は太めのウエストにゴムを入れたイージー仕様ですよね?
1.Wranglerのランチャージーンズ
S ラクにはけるので僕は日によって替えています。実はラングラーには最近もう一点、推しがあって。その名もサンダルカットジーンズ2。サンダルに合わせる前提のワイドシルエットでフレアが目立ちにくい。色落ちもしにくく崩れにくい、タフなのにクリーンなデニムです。
E ヴィンテージでヒゲやアタリを楽しむのも手ですが、ずっときれいな状態ではけるというのも、大人の名品の基準だと思っています。
2.Wranglerのサンダルカットジーンズ
S ちなみにタフという視点ではガチなミリタリーから名品が見つかることがやっぱり多い。僕は若い頃に『チープ・シック』を読んで共感しました。リメイクのXXXLのBDUジャケット3はビッグシルエットだけど丈が短く直されていてはおるとAラインを描き、深いグレーも上品。機能的な4ポケットは時代感にも合う。ガチなミリタリーもいいけど、30歳を過ぎたらこういうリメイクもののありがたさを素直に享受できるようになりました。
3.XXXLのBDUリメイクジャケット
E 時代感と言えば…2020年は特別な年でした。家で過ごす時間が増えたぶん、部屋着やインナーにあらためて目を向けるようになりましたよね。
S 肌着の名品ならYGのタンクトップ4。アメリカンマッチョ向けのリブ生地のタンクトップではなく、あくまでランニング風というのがおじさんのちょっとだらしなくなった体型にはフィットするんですよね。しかもピュアUSAコットン100%で、タグレスの丸胴は地味にスゴイ。肌あたりもよくてノンストレスなんです。
4.YGのタンクトップ
E スウェットでいうとクロス ステッチのスウェットパーカ5とドリス ヴァン ノッテンのスウェット6は価格こそ差があれど名品ですよね。
S ⑤のフードコードの金具はありがちな真鍮ではなくステンレスだからモダン。生地のテクスチャーも滑らかで品があります。
E フードも小ぶりだからストリートに振れすぎない。肩が凝らないのもうれしいポイント。一方⑥はそれなりに課金する必要がありますが、リピート買いし続けていますよね。その心は?
S 裏地が裏毛でなくきめ細かなパイルで季節問わず使え、袖口に独特なカッティングが施されていて丸みのあるフォルムになるのがドリスらしい。袖のつき方など微妙に変更がありますが、基本的な仕様は継続。ラグジュアリーブランドが本気で作ってこの価格はむしろ課金価値が高い。
E 編集部員にファンも多い。毎シーズン店頭に出ると即完売というのも納得できます。
5.CROSS STITCHのスウェットパーカ
6.DRIES VAN NOTENのスウェット
S そして最近注目しているのがSNGのセットアップ7。「クラシックスポーティンググッズ」をテーマにしたブランドで「at-home wear」の名前どおりスウェットにキャップ、ショッピングバッグと家の周りで使うアイテムばかりのラインナップ。ロゴ刺繡だけで部屋着感が払拭されておしゃれ。
E パンツはLとXLのみの展開に意思を感じます。
7.SNGのスウェットセットアップ、ニット帽
S 足元については、何か変化がありましたか?
E 最近はローファーやスリッポンなど着脱が楽なものばかりを無意識に探しています。パラブーツのローファー8はデッキシューズのソールを使っていて、トップはカーフレザーでシックです。
S 甲が低いのも上品なポイント。僕は3足リピートしていますよ。ヴァンズのスリッポン9のトゥルーホワイトも清潔感があってあらためていい。USA企画は数百円の追加課金が必要ですが、このミニマルさが手に入るなら喜んでします。
8.Parabootのペニーローファー「コロー」
9.VANSのスリッポン
E 真逆をいくようですがメレルのサンダル10も新鮮でした。単純にデザインがかっこいい。
S モード好きな人には刺さるはず。このマーブル模様なんか、ファッションを意図したわけではなく偶然生まれた賜物です。
E 履き心地もふわふわで驚き。ビルケンシュトック以外のサンダルの新しい選択肢ですね。
10.MERRELLのハイドロモック
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Stylist:Junichi Nishimata
Text:Takako Nagai