
本当に入っていなかった。
Meta社の新機軸として2023年7月にリリースされたSNSプラットフォーム「Threads(スレッズ)」にて、モード編集者歴30年のエイミーこと龍淵絵美(たつぶちえみ)が回想録として綴っていた「#モード編集者日記」が反響を呼び、待望の書籍化が決定。大幅に加筆して書き下ろしを加えた新感覚エッセイ『ファッションエディターだって風呂に入りたくない夜もある』が集英社インターナショナルから3月5日(水)に発売された。
「出版社・女性誌・モード誌・編集者」というセグメントは大半の大人男子にとっては異世界も甚だしいかもしれない。が、本著にて「モード編集者日記は、私の自叙伝ではありません。平成から令和を、共に駆け抜けたファッション業界+αの女性たちの生き様ストーリー」と武士道を重んじる著者自身が定義付けているように、性差など無関係にサラリーマンが知っておくべき心得が満載である。

また、どの書籍紹介にも書評にも触れられてはいないが、著者の新卒入社は就職氷河期時代の「流行通信社(現・INFASパブリケーションズ)」である。その後の女性誌遍歴とともに、「90年代後半から2010年代におけるモード誌・ファッション誌の栄枯盛衰およびウェブマガジンの台頭」をリアルに学ぶことができる業界研究書としても役に立つ。

そして、『サラリーマン金太郎』『左ききのエレン』『課長島耕作』などのサラリーマンマンガを愛読している大人男子ならば必ず共感を得るはずの「鬼上司」や「ライバル(好敵手)」も実名で登場。その風貌を勝手にイメージできてしまうほどの頻出ぶりであり、同じサラリーマンとして心の底からエールを贈りたくなる。とにかく、2024年11月以降の“続き”が気になって仕方がない。
最後に、肝心要の『ファッションエディターだって風呂に入りたくない夜もある』の「風呂に入りたくない夜」についてだが、本当に入っていなかったので実際に本著を購入して確かめて欲しい。敏腕モード誌編集者の“風呂キャンセル界隈”は、たとえ仕事が忙しくとも、身内の死や自然災害に向き合うときも、気合いで「シャネル」を身にまとうのだ。
書籍『ファッションエディターだって風呂に入りたくない夜もある』
著者:龍淵絵美(エイミー)
発売日:2025年3月5日(水)
発行:集英社インターナショナル(発売:集英社)
判型:四六判
ページ数:288ページ
ジャンル:エッセイ
龍淵 絵美(Emi Tatsubuchi)
ファッション・ディレクター。立教大学経済学部卒業後、モード誌のエディターとして出版社勤務を経てフリーランスに。現在はブランド・ディレクション業でも活躍。15歳、12歳の女の子のママ。『VERY NaVY』にて「1970年代以降生まれの新・Beautiful Aging 50代のロールモデルがいない!?」を連載中。