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切断された⽚⽿に震撼。
奇才、デヴィッド・リンチ(David Lynch / 1946年1月20日~2025年1月15日)の名を世に轟かせた代表作、『ブルーベルベット(原題:Blue Velvet)』(1986年)が39年の時を経て「4K リマスター版」でリバイバル。2月7日から「新宿シネマカリテ」にて限定上映される。
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異例のアプローチとして、本作はヴィンテージTシャツの販売で知られる「weber(ウェーバー)」の配給。劇場限定デザインのTシャツも販売されるほか、ファッションブランド「DAIRIKU(ダイリク)」とのコラボ商品も控えており、劇場外の楽しみも盛りだくさんなのだ。
今さら聞けない、映画『ブルーベルベット』に関して
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ここで改めて。
映画『ブルーベルベット』は、カナダのトロントを皮切りに1986年9月12日(金)に公開(米国では9月19日公開)。アート作品として、当時では異例の大ヒットを記録し、全米批評家協会賞作品賞、同・監督賞、LA批評家協会賞監督賞を受賞。アカデミー監督賞にもノミネートされた。これらの受賞歴以上に、美学視点でひとくくりにされがちなアート作品から、嗜好強めのコンテクストを提案する「カルト映画」のカテゴリーを創出させた功績は、後の映画界にとって絶大なるものである。
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時系列なぞD.リンチ作品には好ましくないかもしれないが、念のため記しておくと、4年の歳月を捧げた『イレイザーヘッド』(1976年)で長編映画監督としてデビュー。批評家に絶賛された『エレファント・マン(原題:The Elephant Man)』(1980年)、未完の大作『デューン/砂の惑星(原題:Dune)』(1984年)を経て、“衝撃のネオ・ノワール”が1986年に公開された。
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最もよく知られるところの『ツイン・ピークス(原題:Twin Peaks)』(1990年~1991年)はブルべ後のテレビシリーズ(1992年に映画化)になる。同年公開の『ワイルド・アット・ハート(原題:Wild At Heart)』(1990年)、そして時系列を破綻させた意欲作である『ロスト・ハイウェイ(原題:Lost Highway)』(1997年)と、アメリカの闇はむき出しにされていく。
80年代から90年代にかけてのD.リンチ作品は、テープが擦り切れるほどに幾度も鑑賞すべき魔窟として、誰も異論は挟まないはずだ。
デヴィッド・リンチはなぜすごい?
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また、クリエイターの美談として広く知られているが、『デューン/砂の惑星』の興行的失敗から、D.リンチ監督は大幅な予算カットの代わりに『ブルーベルベット』本編のファイナルカット権を手に入れている。果たして、複雑に絡み合った世界観でサブカルチャーの沼と化したネオ・ノワールは、当時の批評家筋や映画愛好者から絶賛。
映画人としての矜持をハリウッドに知らしめ、アカデミー監督賞に再びノミネートされるなど、D.リンチ監督は大復活を遂げたのだった。
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倒錯した愛欲、アブノーマルな夜の世界、鮮烈なエロスとバイオレンス、フェティッシュな映像美、歪んだ退廃、ブリリアントな悪夢などなど、公開から39年の間に『ブルーベルベット』の世界観はほぼ語り尽くされていると言ってよい。
今一度、2025年に『ブルーベルベット』を語るに足るモチベーションは、長らく待望されていた「4K リマスター版」になるのだろう。
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ちなみに劇中歌の「Blue Velvet(ブルーベルベット)」は、1951年に米国人歌手のトニー・ベネットが発表して以降、数多くの歌い手にカバーされたラブソングだ。1963年9月に米国ビルボード第1位を獲得したボビー・ヴィントン版にインスピレーションを得て、D.リンチ監督は本作を構想。
主演女優のイザベラ・ロッセリーニとの交際が2度目の離婚の契機となるなど、私生活も青のベルベットに彩られた人生だった。喪に服しつつ、2月7日(金)に控えた『ブルーベルベット 4K リマスター版』の劇場公開を楽しみに待とう!
『ブルーベルベット 4K リマスター版』
上映:2025年2⽉7⽇(金)から
映画館:新宿シネマカリテ
(新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)
監督・脚本:デヴィッド・リンチ / 製作:フレッド・カルーソ / 製作総指揮:リチャード・ロス / 撮影:フレデリック・エルムズ / 編集:デュウェイン・ダナム / 美術:パトリシア・ノリス / ⾳楽:アンジェロ・バダラメンティ / 出演:カイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー、ローラ・ダーン、ジョージ・ディッカーソン、ディーン・ストックウェル、ホープ・ラング
1986年/アメリカ/カラー/120 分/PG-12/原題:BLUE VELVET
配給:鈴正、weber CINEMA CLUB
提供:weber CINEMA CLUB
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