7月12日(金)、全国ロードショー!
中国史についてそこそこ明るい大人男子ならば、コミックス累計発行部数が1億部を突破した人気マンガ「キングダム」(原泰久/集英社「週刊ヤングジャンプ」連載中)の結末が、あのタイタニック号と同様に史実から明らかであること、そして劇場版第4作目『キングダム 大将軍の帰還』に女優・新木優子がキャスティングされたことを知っている。
若手と居酒屋で酒を酌み交わしながらキングダム談義に花が咲いたときは特に注意したほうがいい。
第1話に記された年号が三国志より以前の紀元前245年であること、その24年後の紀元前221年に秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓ら戦国の七雄の中で蟲毒のごとく勝ち名乗りを得た秦が中華統一を成し遂げたこと、劇場版では吉沢亮さんが演じる秦国大王・嬴政(えいせい)が後の秦の始皇帝であること、さらには登場キャラの生死まで「史実では~」とドヤ顔で語ってドン引きされかねないからだ。
「摎」と書いて「きょう」と読む
加えて、若き老害は悦に入りながら続けるかもしれない。大沢たかおさんが演じる秦の大将軍・王騎(おうき)と彼の過去に影を落とす謎多き武将・摎との関係性は史実を超越しており、ファンタスティックなラブストーリーに近いのではないかと。
その夢想が現実になった。今年3月、劇場版第4作『キングダム 大将軍の帰還』で初登場となる武将・摎を新木優子さんが演じることが発表され、遂に7月12日(金)に全国公開。底が浅い蘊蓄の愉悦なぞ吹き飛ばす、すべての「キングダム」ファン納得の神キャスティングだった。
中国史マニア、原作マンガファン、アニメファン、実写版派の誰もが、彼女の鉄仮面姿(と素顔とのギャップ)を映画館の大スクリーンで見てみたいと思ったはず。そこで、秦国六大将軍・摎を演じる新木優子さんのUOMO単独ヴィジュアルシューティング&直撃インタビューをウェブ限定で公開!
女優・新木優子が語る、映画『キングダム 大将軍の帰還』を大人男子が見るべき理由とは?
出自に紐づく兜の謎
―――摎の兜は原作のイメージにかなり近いものでした。製作時のエピソードを教えてください。
新木優子:あの兜は実際に私の頭の形をとって作っています。顔全体に型取りを塗って2時間くらい鼻呼吸だけでじっとしていました。その苦労の後にできた兜は、当然ですが自分の顔にぴったりで感動しました。視界はかなり良好で、戦いには便利なものだなと思いました。
―――いわくつきの兜、今どちらに?
新木:(佐藤信介)監督かプロデューサーさんに聞かないとわからないかもです(笑)。近い将来、映画「キングダム」展などがあればそこで飾られたら面白いですね。説明文に本人着用と書かれたりして。鉄の兜を被る女性はクールでいかにも強そうな印象ですが、実際の摎はそれ以上の魅力がたくさんあります。
―――謎に包まれた秦国六大将軍・摎を演じてみて、彼女はどういう人物だと思いましたか?
新木:映画を観て思ったのは、摎は自分を信じる力がある人だということです。だから秦国六大将軍のひとりにもなれたんだと思います。最初は「敵の城を100個とったら私を妻にしてください」という王騎将軍との口約束から始まったことですが、自分を信じる力も何かを成し遂げる力もしっかり備わっている素敵で魅力的な人だと思いました。
―――自分を信じる力は新木さんにも?
新木:私にとってはそれがなかなか難しくて。自分を信じるのは勇気がいるし、できると思ってできないより、できないと思ってできた方が気持ちが楽だと思ってしまうこともあって。純粋に自分を信じることができる摎は、人としてすごく強いですし、見習いたいなと思いました。
―――新木さんも一途なほうですか?
新木:摎には及びませんが、私も信じたいと思った相手には一途な性格だと思います。信頼には応えたいし、素の自分をさらけ出して理解して欲しいです。
30歳という節目
―――最近、プライベートで戦ったことは?
新木:地味に鳩と戦っています(苦笑)。ベランダがたいへんな賑わいで…。
1993年12月15日生まれの新木さん。2014年3月号から務めていた女性誌「non-no」(集英社)専属モデルを2021年12月号で卒業。女優として開花して内外の支持を集めるなか、昨年30歳の節目を迎えた。
新木:自分自身との戦いはもちろんあります。摎はフィジカルとメンタルで優れた女性だと思います。私は、少し前の20代後半のときは迷いや葛藤を抱いていた時期がありました。いただいたお仕事からの学びを、自分の中でどうやって整理して残していけばよいのだろうって。体力にも限界があるし、スケジュールは迫っているし、精神的にいろいろと追い付いていなかったと今になって思います。
―――その戦いには勝利したのですね。
新木:わかりません。ただ、そのときそのときの気持ちを言葉にして残すことで、自分なりにポジティブに士気を高める方法にたどり着く努力をしました。そういう意味では乗り越えられたのかな。
台本のセリフももちろん言葉。これは役者として成長する通過儀礼であると同時に、役柄に命を吹き込むルーティンにもなっているのだ。今では自分の気持ちを改めて紙にペンで書くことも多いという新木さん。ケータイで何気なく打ってしまったメールでは思いが流れて行ってしまうと憂う。
新木:きちんと言葉にする作業は、たとえば雑誌やテレビでのインタビューもそのひとつです。演じる役の性格や生い立ち、生きる理由などを自分なりの解釈で話しますが、言葉になって残ることで、「自分はこういうふうに考えているんだ」と客観的にも見られて納得できることが多かった。頭も整理されるし、壁があったとしてもその壁が掴めるかもしれないと思うようになりました。
馬に乗り刀剣を振るう新木優子
―――摎のフィジカルにも触れられましたが、乗馬や殺陣の稽古について聞かせてください。
新木:他の作品で馬に乗る機会があったので乗馬自体は経験があったのですが、馬に乗ってトップスピードで走ったり、大きなアクションを行ったりするのは初めてで大変でした。まずは馬をコントロールするトレーニングから始めました。どこかに向けて馬を走らせる場合、「私が馬を走らせる」という意志を強くもたないと、そこに向かって馬が走ってくれないんです。しかも武器を持ちながら。
―――なんでもCGで解決できる時代です。
新木:何本もテイクを重ねたのが、馬をトップスピードで走らせながら剣を振るうアクションです。完成したアクションシーンは、自分が思っていた以上にかっこいい映像になっていて、摎の戦闘シーンにもちゃんと戦いの流れがあったので、アクションに気持ちが乗って、緩急もつけることができました。
映画『キングダム 大将軍の帰還』はバトルシーンもド迫力。9年前のある因縁との決着をつけるべく帰還した王騎と、趙国三大天の一角である宿敵・龐煖(ほうけん)との一戦、すなわち秦vs趙の「馬陽の戦い」は瞼を閉じることすら惜しい。ともに180cmを超える大沢たかおさんと吉川晃司さんが極限までフィジカルを燃焼して大立ち回りを披露するシーンの撮影は、5日間連続で続いた。
王騎・大沢たかおとの共演
―――大沢たかおさんの印象は?
新木:王騎将軍は摎にとって好きな相手ですから、現場でお会いしたときにドキドキしてかなり緊張しました。でも、大沢さんとお話ししていると緊張が解けて、その場がすっと心地よい空間になっていくんです。それは温かくて包容力のある大沢さんの存在と、身にまとっていらっしゃるおおらかな優しい空気のおかげだと思います。常に現場の中心にいてくださるのもすごく素敵だなと感じました。
ちなみに、劇場版1作目の(2019年4月公開)の撮影初日からすでに摎とのエピソードを念頭に置きつつ王騎を演じていた大沢さんは、二人のシーンの撮影を今作まで5年以上も待っていた。「新木さんが摎を演じてくれて、一緒にお仕事できて本当に良かった」と舞台挨拶でも語っている。
新木:摎にとっても一番の存在は王騎将軍なので、私も現場で「やっと会えた」というような気持ちがありました。演じていて一番グッと来たのはやっぱり、口約束だと思っていたことを王騎が覚えていてくれたシーンです。摎としてもすごく嬉しかったですし、王騎将軍の摎への愛を感じたシーンでもあり、印象に残っています。
―――「あのときの約束」を憶えている王騎のような男性は素敵だと思いますか?
新木:あれは二人の長い関係性があって、お互いが大切に想う人同士だからこそ。こちらが抱いている気持ちと同じくらいで相手もいてくれたら嬉しいですね。
そして、例の「きちんと言葉にする」作業だ。一呼吸して逡巡し、新木優子なりの言葉で丁寧に言い直してくれた。
新木:自分が大切にしている人が、私のことも同じように大切にしてくれていたんだなって。とても素敵な関係性ですよね。小さな約束は、それを知るきっかけにはなると思います。
『キングダム 大将軍の帰還』を大人男子が見るべき理由
―――最後に、UOMO世代に一言お願いします!
新木:時代や運命に翻弄されながらも諦めず、地に足をつけて道を切り拓いていく、そんな映画です。戦うことだけでなく、もっと厚みのある人間になりたいと願う大人の男性ならば、きっと内なる勇気が沸いてくるはずです。私もそうでした。圧倒的なスケールを、ぜひ映画館で体感してください。
インタビューを終えて…
ペットボトルの水をひと口。キャップをしっかり締め、座したまま深く一礼して席を立つ。
飲みかけのボトルに取材陣の視線が集中した刹那、振りかざした右手でスパーンと奪取して背を向けた。微笑とともにロングヘアが舞った。
その振る舞いは、馬上で片手太刀を繰り出す摎のごとき。女優・新木優子の雄姿を映画『キングダム 大将軍の帰還』で目に焼き付けよう。
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『キングダム 大将軍の帰還』
劇場公開日:2024年7月12日(金)
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉、原泰久
原作:原泰久「キングダム」
(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載中)
出演:山﨑賢人 吉沢亮 橋本環奈 清野菜名 山田裕貴 岡山天音 三浦貴大 新木優子 吉川晃司 髙嶋政宏 要潤 加藤雅也 高橋光臣 平山祐介 山本耕史 草刈正雄 長澤まさみ 玉木宏 佐藤浩市 小栗旬 大沢たかお
製作:映画「キングダム」製作委員会
配給:東宝 / ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
上映時間:146分
©原泰久/集英社 ©2024映画「キングダム」製作委員会