世界でヒットしている曲を内容まで理解して聴いてみるのはどうだろう? 今回は、ロングヒットを続けているエド・シーランの「Bad Habits」を取り上げる。
午前2時を過ぎたら
リリースする曲どれも耳に残るエド・シーラン。ロングヒットを続けている「Bad Habits」もまたキャッチーなサウンドで、いやはや、つくづくこの人のポップセンスは計り知れないなと思う。
この曲のタイトルを直訳すると「悪い習慣」である。歌は「君が来るたび 僕は断れない 陽が沈むたびに 僕は君のいいなりになる 世界が終わる前に 天国を感じられる」と始まる。一瞬、ドラッグのことを指しているのかなと思うが、これはパーティざんまいで毎晩朝まで飲み明かしていた自身の過去の体験を歌っているそうだ。
サビは「僕の悪い習慣は夜中まで続いて 最後は一人になる ほとんど知らない人と話して こんなことはもうやめようと思うけど できないんだ」「宙をぼうっと見つめて 言うべきことと 言わなくていいことが 分からなくなる」と続いて、個人的にそのあとの歌詞が好きだ。「午前2時を過ぎると 良いことだけじゃなく 悪いことも起きなくなるんだ 本当に 本当に」と、やぶれかぶれの言い訳のような虚無感が漂う名言が歌われるのである。
確かに、誰かと飲みに行って午前2時過ぎから中身のある話をしたことなど、今までにあっただろうか。いや、何一つない気がする。酔って覚えてないのもあるだろうが、夜中の酔っぱらいなんて、大体が同じ話を繰り返しているか、どうでもいい話を熱弁しているものだ。だから大人ならばなおさら、酔ってしまったら醜態をさらす前にさっさと帰るに限る。駅からの帰り道、ほろ酔いで口ずさむのに、戒めの意味でもこの歌は意外とよく似合う。
余談だけれど、最近は夜中に考え事をするのもあまり効率的でない気がしていて、夜はさっさと寝て、朝5時に起き、映画を一本観て、家族と一緒に朝食を食べてから、仕事をするという生活に切り替えた。以前より健康的な暮らしになって、ずいぶん思考もスッキリした気がする。もしかしたら酒の話に限らず、午前2時を過ぎてから浮かぶアイデアというのもまた、いいものも、悪いものもなくなるのかもしれない。
いしわたり淳治
作詞家、音楽プロデューサー。1997年、バンド「スーパーカー」のギタリストとしてデビューし、すべてのギターと作詞を担当。現在までに700曲以上の楽曲を手がけている。