『平成敗残兵すみれちゃん』｜元・売れないアイドルが同人写真集で令和のグラビア女王を目指す!?【このマンガの実写化が見たい！｜南信長】

数ある漫画の中から実写にしてほしい作品を、マンガ解説者の南信長氏が紹介する。

『平成敗残兵すみれちゃん』

元・売れないアイドルが同人写真集で
令和のグラビア女王を目指す!?

　モーニング娘。に端を発した平成のグループアイドルブーム。AKB48、ももいろクローバーＺ、乃木坂46など、いくつもの人気グループを生み出した。しかし、その陰には売れずに消えていったグループも多々あるわけで…。

　本作のヒロイン・東条すみれ（31）も、そうした元アイドルの一人である。今やスナックでバイトしながら、酒とタバコとパチンコに明け暮れる自堕落な日々。そんなある日、スナックのママの息子で、すみれにとってはイトコに当たる高校生・泉雄星に同人アイドル写真集のモデルになってほしいと懇願される。

　秒で断るすみれだったが、「今の同人アイドルの中にすみれちゃんよりいい身体してるヤツなんていない　だから絶対天下とれるよ」「すみれちゃんはホントにすげぇって!!　うまくすみれちゃんを活かせなかったヤツらにお前らバカだなって言いたいんだよ」という激ホメと泣き落としにほだされ、ついOKしてしまう。

　そこから二人の下剋上作戦が始まるのだが、何よりまず雄星の高校生離れした有能プロデューサーぶりにシビれる。「売れるよ　ぜったい」の言葉どおり、初写真集は見事完売。すみれのSNSアカウントも勝手に運営。売れるグラビア研究も怠りなく、口八丁手八丁ですみれを乗せていく。すみれはすみれで、パチカスのヤニカスだけど性格はよく義理人情に厚い。私生活はグダグダでも仕事はきっちりやるからスナックの客にも人気。そのプロ根性と本気出したときのオーラは“腐ってもアイドル”なのだ。

　そんな二人に海千山千のタレント事務所社長兼モデルのファムファタ任三郎（ロリ系美女だが超変人）が加わって繰り広げられる末端芸能界奮闘記は、お仕事ものとして意外なほどに真っ当かつ痛快。グラビア撮影や動画配信の舞台裏がリアルに描かれ、会話のリズムや言葉選びのセンスもバツグンだ。ただ儲けたいのではなく、幼心に憧れていたすみれを輝かせたいという雄星のピュアな動機にも胸を打たれる。

　キャラも物語も絵ヅラも実写映えすること間違いなし。難しいのは、すみれのキャスティングだ。高身長の超グラマラスボディでありながら、だらしない汚れ役の部分もある。一昔前なら小池栄子？　今なら誰がハマるだろうか。