2024.06.09

『東大の三姉妹』|おっとり型の末っ子長男から見た優秀すぎる東大三姉妹の生態とは!?【このマンガの実写化が見たい!|南 信長】

数ある漫画の中から実写にしてほしい作品を、マンガ解説者の南 信長氏が紹介する。

『東大の三姉妹』

おっとり型の末っ子長男から見た
優秀すぎる東大三姉妹の生態とは!?

 2024年度の東大合格者の女子率は20.6%(学校推薦含む)。東大新聞オンラインの記事によれば、合格率(2023年度)では男子32.5%、女子31.2%と大差ないので、そもそも女子で東大を受験しようという人が少ないのだ。

 そんななか、本作の主役・坂咲家は三姉妹そろって東大(たぶん母親も東大)という激レア一家。長女・世利子(34)は外資系企業のバリキャリ、次女・比成子(32)はテレビ局のプロデューサー、三女・実地子(22)は理系の現役東大生でカビの研究をしているらしい。

 そして坂咲家にはもう一人、末っ子の長男・一理(18)がいる。まさに東大理Ⅰに入ることを運命づけられたような名前と環境。合格発表の日、当然合格するものと思っている姉たちは前祝いで飲み始める。ところが結果は不合格。「うそ…落ちることってあるんだ…!?」と驚愕したのは、姉妹の中でも一番優秀な世利子である。ほかの二人も「私大に行くの?」「まさかね!? 浪人するよね?」と口々に言う。

東大の三姉妹 1
Ⓒ磯谷友紀

 こんな姉たちに囲まれながらひねくれずに育った一理も立派。私大の演劇科に進学することにした彼は、春休みの間、比成子のテレビ局のバイトに駆り出される。そこで見た比成子の八面六臂の仕事ぶりに感心しつつ、一理自身も意外と“使えるヤツ”であることが判明。一方の比成子は「やっぱり女で若くしてPになったのって東大だから?」と陰口を叩かれ、担当ドラマ出演者の不祥事が発覚すれば「東大とか出ててもほんと仕事できないな!」などと、いわれなき中傷を受ける。男女を問わず“東大卒あるある”だが、そのへんの心理描写は絶妙。そこで急遽代役を手配し撮り直しするエピソードは、お仕事ドラマとしての爽快感に満ちている。

東大の三姉妹 2

 一方、物語の軸になりそうなのが、少々変わり者の世利子である。自分の計画どおり人生を進めたい彼女は、なんとアメリカの精子バンクを利用し妊娠したという。世利子と高校時代の先生との関係、比成子が学生時代から付き合っている彼氏との倦怠、今後出てくるであろう実地子の事情など、気になる要素が山盛り。ジェンダー格差が注目される今、「東大女子の生きづらさ」は時宜を得たテーマだし、何より三姉妹と一理のキャスティングに妄想が膨らむ。

『東大の三姉妹』コミック

『東大の三姉妹』
磯谷友紀 1巻/小学館

三姉妹全員東大という坂咲家。が、末っ子長男・一理は不合格。そんな折、長女・世利子がまさかの妊娠を告白し…。東大女子の人生を見つめるファミリードラマ、ここに開幕!

南 信長

マンガ解説者。朝日新聞ほか各雑誌で執筆。著作に『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』『漫画家の自画像』など。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。

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