数ある漫画の中から実写にしてほしい作品を紹介する連載。第五回目に取り上げるのは、本気で特撮ヒーローになろうとした人々を描く『劇光仮面』
だ。
ギミック満載のヒーロースーツで 本気の特撮マニアが戦う相手とは!?
『シン・ゴジラ』の大ヒット以降、『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』(2023年3月公開予定)と往年の特撮ヒーローが続々リメイクで甦り、『空の大怪獣ラドン 4Kデジタルリマスター版』の上映など、過去作品にもスポットが当たっている。そんな中、本気で特撮ヒーローになろうとした人々を描くのが本作だ。
特美研の活動のメインは、ヒーローのスーツを自作すること。それも単なる着ぐるみではなく、武器や技のギミックが圧縮空気などによって作動し、特撮の動きを再現するという本格的なものだ。素材も金属や繊維強化プラスチックなどを用い、“実用性”すなわち防御力や攻撃力をもたせる。彼らはそれを「劇光服」と呼び、その危険性ゆえ運用には厳格なルールを設けていた。しかし、ある事件によって実相寺は逮捕、特美研は廃部に追い込まれたのだった。
初代『ゴジラ』が空襲や核兵器の恐怖のメタファーであることは有名だが、本作においても戦争や原発、いじめへの言及がある。「正義とは何か?」という問いかけも含め、それらすべてを特撮愛に収斂させた野心作。この愛に本職の特撮屋たちが応えなければ噓だろう。ぜひ庵野秀明&樋口真嗣コンビで実写化を!
『劇光仮面』
山口貴由 1~2巻/小学館
ビッグコミックスペリオール連載中
主人公・実相寺二矢の過剰な特撮愛が行き着く先は…!? キャラ名や作中ヒーローの設定からレジェンドたちのエピソードまで、特撮ファンにはたまらない魂と情熱のドラマ!
南 信長
マンガ解説者。朝日新聞ほか各雑誌で執筆。著作に『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。
Ⓒ山口貴由/小学館