マンガの中には心揺さぶられる名言がたくさんある。そんな名言の数々を、現在連載中の作品から劇画狼がピックアップ! 来世で使いたいと思ってしまう名セリフを紹介します。
『千年ダーリン』
『千年ダーリン』が生んだ、
今いちばんかっこいい「押忍」!
いますよね、話が長いうえに要領を得ないので、結局何が言いたいのかわからない人! プライベートでの雑談ならまだいいですが、ビジネスの場でこれを繰り返していると、そのうち誰のゲームの打席にも立たせてもらえなくなります。5W1Hを意識して脇道にそれないようにする等、基本的な改善方法はありますが、逆に短さを突き詰めた、最少かつ最大の密度をもつ言葉を使いこなすことができればすべてが解決。限界まで削ぎ落とした言葉に、明確化された意図をぶち込む。そう、今回は今いちばん面白い「押忍」とは何か、という話です。尊敬・感謝・忍耐、それらすべてを併せ持つ「押忍」に並ぶ、新しい決意の最小単位、それは『千年ダーリン』4巻にて生み出された「御意(モチ)」。
「千年剛血(ヘルミナ)」こと美奈は数多の武術を習得したが、まだその本質に到達できない。強さの本質とは何なのかを師である祖母に尋ねると、「強さとは自分で死に方を選べること」「お前の人生をお前のみで完結させるなら 帰る場所を徹底的に潰しなさい」と説いてくれるが、その際に美奈が返した言葉が「御意(モチ)」。「押忍」にある尊敬・感謝・忍耐。そこにさらに「分かりました」「私はそう生きる」「そして今あなたを越えます」を上乗せした無限密度の二文字。腹が決まったいい顔でこんなことが言えるキャラがかっこよくないわけがない。
この完璧な精神性で、美奈は主人公である一平のパンチを顔面で受けて相手の拳を破壊し、固体・液体・気体の三態への肉体変化能力を駆使しながら互角以上の戦いを魅せる。さらには全身をプラズマ化させた最終奥義まで披露し、文字どおり「拳で語り合う」ことに成功。急に出てきたキャラが急にかっこよくなって急に去っていった感じ、例えば床屋の待合室でこの巻だけを読んだ子どもが20年くらい「タイトルも作者もわからないけど死ぬまで忘れない、あのかっこいいマンガはなんだったんだろう?」と思い続けるトラウママンガとしての素養が100点。いいかいお坊ちゃんお嬢ちゃん。それはね、岩澤美翠先生の『千年ダーリン』というマンガだよ。バキトマド(キクチヒロノリ著『爆裂瞑想バキトマ道』に登場する、バカ・キ○ガイ・トンマ・マヌケ・ドアホを同時に発する高密度罵倒語。今コラムにはいっさい関係なし)!
『千年ダーリン』
岩澤美翠
1~4巻/リイド社
1980年代の千年谷でネイロンと戦い続ける一平と銀色の元に、新たな敵が次々と押し寄せる!
特殊出版レーベル・おおかみ書房代表。プロの漫画家が商業誌に掲載したが単行本化されなかった未収録作品の書籍化や書評、原画展企画、イベント司会など。