マンガの中には心揺さぶられる名言がたくさんある。そんな名言の数々を、現在連載中の作品から劇画狼がピックアップ! 来世で使いたいと思ってしまう名セリフを紹介します。
『バックホームブルース』
青空柑二郎から学ぶ、
「中年の危機」打破の突破口!
怖いよ! ミッドライフ・クライシス! ということで皆様ご存じ「中年の危機」。加齢による体力や運動能力の低下、ライフスタイルの変化、職場でのノルマや出世競争でのストレス。そんな複数の要因が絡み合った結果、我々ミニ四駆と『マシンロボぶっちぎりバトルハッカーズ』のことしか考えてこなかったタイプの働き盛り世代は簡単にぶっ壊れます。自己の限界を知ってしまい、成し遂げられなかったことに失望し、それを持っている他人に嫉妬し後悔する。そうなりたくない気持ちはあるものの、かといってそれらすべてを実力で跳ね返すことはできない。じゃあどうするか……。そう、もう根拠のない自信と異常肥大した自己肯定感で人生中盤以降をサバイブしていくしかない!
そんな我々の手本となるべく現れたニューヒーローがこの人、令和マンガ界に突如降臨した名言の大金脈、『バックホームブルース』の青空柑二郎だ! プロ野球選手生活25年の大ベテランが3人の子どもたちを連れて崖っぷちの条件で弱小球団の湘南シーガルズにやってきた。何もかもが一気に変わった環境で、選手としてはタイムリミットが近い年齢の柑二郎はどうやって戦うのか。その答えが「自信」と「自己評価」を暴走させること。柑二郎は自分の格を高く見積もって当たり前。シーガルズ参加初日には、チームメイトを格下扱いした上で「お会いできて光栄だろ?」の自己紹介。その自信過剰ぶりは「威勢がいいだけのハッタリ野郎」と見えるかもしれないが、根拠のない自信だと思っているのは周りだけ。「ホームランは本数ではない、飛距離だ」という独自の価値観を持ち、そこに絶対的な価値を置いているからそもそも他者との競争で自信が揺らぐということが発生しない。全方面に「エビデンスは俺」を根拠として物事を組み立て続ける中で膨張した自己評価からくる「健全な発言」は虚勢ではない。その結果発生する人間関係のトラブルはすべて有名税で切り捨てる。出る杭は打たれるかもしれないが、杭が異常に硬ければハンマーを壊せる。もうこういうハッタリを自在にコントロールして心の健全性を自分で担保するしか生きていく道はない。自分のスケールを巨大に例える言葉を常に準備して、周りをビビらせて生きていくぞ!
『バックホームブルース』
長尾謙一郎
1巻/小学館
カリスマギャグ漫画家・長尾謙一郎の新境地。崖っぷちのプロ野球選手である青空柑二郎が万年最下位球団シーガルズで巻き起こす逆転物語!
特殊出版レーベル・おおかみ書房代表。プロの漫画家が商業誌に掲載したが単行本化されなかった未収録作品の書籍化や書評、原画展企画、イベント司会など。