2022.04.01

『Dr.Eggs ドクターエッグス』|僕は、この作品に象徴される“コツコツ”三田先生が大好きなんです【マンガ編集者を唸らせるこのIPPON|浅田貴典】

数多くの漫画を見てきたマンガ編集者が「おもしろい」と思わず口に出してしまう作品がある。今回取り上げるのは、三田紀房先生の『Dr.Eggs ドクターエッグス』だ。 

『Dr.Eggs ドクターエッグス』|僕の画像_1

僕は、この作品に象徴される “コツコツ”三田先生が大好きなんです

 三田紀房先生と言えば、ドラマ化された『ドラゴン桜』が有名ですね。ほかに『砂の栄冠』『アルキメデスの大戦』など代表作も多いですが、今回紹介する「グランドジャンプ」で連載中の『Dr.Eggs ドクターエッグス』は、2月に第1巻が発売されたばかりの最新作。自社の作品で手前味噌ですが、こそっとステマ的に…ではなく堂々と公開応援したい素晴らしい物語です。

『Dr.Eggs ドクターエッグス』|僕の画像_2
 さて三田先生ですが、実は作品には“二つの顔”があることをご存じでしょうか? 一つは“イケイケ”の三田先生。その代表例がまさに『ドラゴン桜』です。主人公の辣腕弁護士・桜木のように、オラオラなキャラクターが強烈にダメ出ししたり、ぐいぐい周囲を巻き込むなど、スカッとして突破力のあるタイプの作品。そしてもう一つが『甲子園へ行こう!』や今作などの“コツコツ”三田先生です。
『Dr.Eggs ドクターエッグス』|僕の画像_3
 本作は、成績がいいというだけの理由で何となく山形県の医大に入学した、医師の卵(ドクターエッグス)である主人公・円(まどか)の成長を描いた作品ですが、実は先生自身も同じ東北地方の岩手県のご出身。だからなのか、これはこの作品に限りませんが、その土地の風習や風俗に対して優しい眼差しが向けられ、描写も実に細やか。また若い頃に大変苦労されたこともあってか、普通の若者が一歩一歩頑張って歩んでいく姿を、丁寧に描くんですよね。派手な仕掛けはないけれど、僕はこんな“コツコツ”のほうの三田先生が大好きでたまらないんです。
『Dr.Eggs ドクターエッグス』|僕の画像_4
 本作には円を導く古堂真也(こどうしんや)という教授がいて、いきなり熊の解体を命じたりするんですが、桜木のような「いいからやれ、つべこべ言うな」って強引なタイプではありません。ちゃんと円の気持ちに寄り添い、道理をもって指導してくれる。ちゃんと今の時代の理想の教師になっていて、それもすごくいい。 「苦労して地道に積み上げたものは、けっして無駄なんかじゃないんだよ」という、これまで長年にわたって三田先生が伝え続けてきたテーマが本作からも強く感じられます。御年64歳。本当にすごい熱量です!

『Dr.Eggs ドクターエッグス』
三田紀房/集英社
1巻~/「グランドジャンプ」連載中

志なしに、ただ何となく地方の医学部に入学した円千森(ちもり)。このまま本当に医者を目指すべきかどうか悩んでいたが、古堂真也教授との出会いにより、心境に変化が見え始める。

©三田紀房/集英社



浅田貴典
1973年生まれ。マンガ編集者。週刊少年ジャンプ、ジャンプスクエアで『ONE PIECE』『BLEACH』『血界戦線』などを立ち上げた。現在は集英社第3編集部部次長、第3編企画室室長。


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