彼にしかできない技で見る者を魅了し、9月の「Xゲームズ」では初優勝を飾った世界トップレベルのスケートボーダー。あらためてパリ五輪で見た景色を聞いた。
2001年神奈川県生まれ。スケートボードを5歳頃から始め、’19年に「ARK LEAGUE/SKATE ARK」で優勝を果たすなど国際大会で実績を積み、東京五輪日本代表に。’23年の世界選手権(男子ストリート)にて優勝。’24年のパリ五輪では4位入賞。そして、9月22日に行われた「Xゲームズ」千葉大会で、悲願の初優勝を飾った。
オリンピックがすべてじゃない。でも、ここで結果を残したい。
「あのときできる自分の滑りは全部見せられたと思う。本当によかったです」
パリオリンピック、スケートボード男子ストリート決勝。白井空良は全体4位で大会を終えた。メダルまであと一歩のところ、悔しい気持ちもあったに違いない。しかし、朗らかな表情で結果を受け止める白井の姿があった。
開幕前に体調を崩して入院し、本番10日前に退院。「ダメでも仕方ないって気持ちがあったので、そこまで緊張せずに気持ちよく滑れたと思います」と白井は当日を振り返った。万全の状態ではなかったが、そう思わせないキレのある滑走で高得点を記録。一時はメダル圏内にも入ったが、堀米雄斗ら他選手の追随もすさまじかった。
「トリック4本目は自分的には十分な点数だったんですけど、みんなリスクを背負って高難度の技にチャレンジしていて。こんなことは普通の大会では起こらない、オリンピックならではのことです。会場の盛り上がり方や歓声が今までに経験したことのない熱をもっていて、僕も純粋に楽しんでいました」
東京オリンピックでは思うような滑りができず予選で敗退。「パリへの思いは誰よりも強かったです」と語るように、白井にとっては3年越しのリベンジの意味合いが強かった。
「SLSとかの大きな大会もあるけど、オリンピックは影響力が違う。自分たちが生活していくうえで、この舞台で結果を残せばスケボーがやりやすくなるってわかってるんです」
その一方で、「オリンピックがすべてなわけではない」とも口にした。
「街中をカッコよく滑る姿がスケートボードの原風景。僕もそれに憧れて始めたので、目指すのは大会で結果を残すことだけじゃないんです。オリンピック競技になって少しスポーツ寄りにもなりましたけど、夢をつかむ方法はもっとたくさんある。今後は街中でのビデオパート(技を撮影した映像作品)の制作にも力を注ぎたい。そして4年後にまた機会があれば、オリンピックにも挑戦したいですね」