2024.02.01

俳優・小川あんさん「一周回って自分がまた生まれたような感覚」

15歳のときに初めて芝居を経験し、2023年で10年目を迎える小川さん。主演映画『彼方のうた』を経て、新たな自分に出会ったと語る。

俳優・小川あんさん「一周回って自分がまたの画像_1
小川あん
今月の顔

小川あんさん

俳優

1998年東京都生まれ。主な出演映画に『天国はまだ遠い』『ピンカートンに会いにいく』『あいが、そいで、こい』『スウィートビターキャンディ』『わたしは光をにぎっている』『PLASTIC』『4つの出鱈目と幽霊について』『犬』など。主演を務めた映画『彼方のうた』が2024年1月5日よりポレポレ東中野ほかにて全国順次公開。


一周回って自分がまた生まれたような感覚

 ヴェネチア国際映画祭に正式出品された『彼方のうた』。小川さんと杉田協士監督の出会いは2021年に遡る。

「当時、私は俳優の活動をやめようとしていたんです。映画やドラマはどこまでいってもつくり物で、非日常の世界でお芝居を続けることに心が追いつかなくなってしまって。そんなときに杉田さんの『ひかりの歌』を観ました。映画には温かい日常がそのまま描かれていて、画面の中に存在するすべてが優しく、澄んでいた。どうやったらこんな映画をつくれるんだろうとものすごく興味が湧いて、面識はなかったのですが、長いDMを送ったんです」

 出演したいとまでは考えていなかったが時間をおいて杉田監督からオファーがあり主演映画が始動。小川さんはデビュー当時から好きな映画との出会いを大事にしていて、『天国はまだ遠い』で仕事をした濱口竜介監督とも自分から縁をつくりにいった過去がある。

「杉田さんも濱口さんも、まずは映画をつくる工程がすごく面白い。現場に行って『はい、撮影スタート』じゃなくて、一緒にロケ地を見にいったり、時には監督とお茶したりもする。そこでのお話が、当て書きでつくられる脚本にもにじみ出ていたりして。極論を言えば今の時代、AIでも芝居ができると思うんです。でも人と人として俳優とかかわり合い、自分が見ている世界をよどみなく反映した映画を撮っているのが杉田さんや濱口さん。私はやっぱりそういう作品に出たいです。『彼方のうた』を経た今、一周回って自分がまた生まれたような感覚になっています。10年目にしてやっとお母さんのお腹からオギャーって出てきて、自分の姿を認識し始めたところ。さあこれからどんな世界が見られるんだろうと、ワクワクしながらお芝居をしています」



Photo:Masashi Ura
Text:Kohei Hara

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