2025.03.22
最終更新日:2025.03.22

【乃木坂46 久保史緒里インタビュー後編】「自分には才能がない」と感じてしまう、後輩に対して悔しいと思う瞬間とは?

乃木坂46久保史緒里『ネムルバカ』

漫画家・石黒正数の同名青春コミックを、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの阪元裕吾監督が実写映画化した『ネムルバカ』で、平祐奈さん演じる大学の先輩・鯨井ルカと大学の女子寮で同じ部屋に住む後輩・入巣柚実を演じている、久保史緒里さん。乃木坂46としての活動では現役メンバーでは一番上の世代となる3期生としてグループを牽引しながら、後輩の4、5期生に対して「悔しい」と感じることもあるという。

 ――『ネムルバカ』で演じた入巣柚実の「何者でもない焦り」は、久保さんも乃木坂46加入当初は似たような感情があったと思います。

久保 いまもそんな感情を持っているんです。グループ特有なのかもしれません。『ネムルバカ』でいたく共感したところでもあるんですけど、地道に壁を叩いている自分を横目に、いとも簡単にピョンと飛び越えていく子がいて。そんな経験を何度も味わってきたんです。やがて「自分って何なんだろう」と考える時間が訪れて……。私にとって乃木坂46での活動は、その繰り返しなんです。

――傍から見ると、この2、3年の久保さんは壁を軽々と越え続けているように感じます。だけど、久保さんの主観では違うんですね。

久保 こんなことを言うアイドルはいないかもしれないけど、後輩に対して悔しいと感じる瞬間がいくつもあって。ライブや撮影で自分にできない表現をしていると「カッコいい!」と思うと同時に、「自分のほうが踊ってきたはずの曲なのに、表現を超えられた」という悔しさも生まれるんです。

――後輩にあたる5期生の川﨑桜さんの、カメラに抜かれた時の表情に悔しさを感じた話をされていましたよね。

久保 そうなんですよ。最近だと、『雪が降る日にまた会おう』という曲での(川﨑)桜に「スタートラインは同じはずなのに、いい顔してるなぁ」と思いました。研究した結果、その表現にたどり着く子もいれば、感覚で掴める子もいて。(4期生の)遠藤さくらは、もちろん研究はしていると思うけど、感覚でやったことが光を放つんです。そんな子が横にいると、「自分には才能がないんだ」と感じます。『ネムルバカ』のルカ先輩の気持ちがわかるというか。乃木坂46には才能がある子がたくさんいて、贅沢な悩みを抱え続けています。

乃木坂46久保史緒里『ネムルバカ』

 ――映画『誰よりもつよく抱きしめて』への出演もあって、久保さんの2024年はグループ活動以外でも撮影に追われていたと思いますが、乃木坂46のライブにも全公演参加、冠テレビ番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)の収録も10月まで皆勤賞だったんですよね。

久保 そうなんです(笑)。

――ドラマ撮影と乃木坂46の活動を並行していた時期がある同じ3期生の岩本蓮加さんが、「私は自分を奮い立たせてなんとか両立してきたけど、史緒里は楽しんでいるように見えるので尊敬します」と話していました。

久保 自分の中で「忙しい時ほどタフでいよう」と決めているんです。自分が選んでお芝居をやらせていただいているのに、しんどい顔を見せることはメンバーに失礼だと思って。楽屋でも明るくいようと意識しています。その分、家ではグタッとしているけど(笑)。

――ラジオ『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)を聴いてると、最近は家での生活もだいぶしっかりされているように感じます。

久保 ちょっとずつ、ですけどね(笑)。『乃木坂46のオールナイトニッポン』のおかげで元気になっている、というのはあると思います。どんなに気分が落ちていても、生放送でギアを上げてしゃべってると、そのうち復活するんです。週に1回、復活できる日があるから、タフでいられるのかもしれません。

――『ネムルバカ』で「先輩大好き」な入巣柚実を演じていますが、乃木坂46での久保さんも「先輩大好き」だったと思います。すでに卒業された中元日芽香さんや生田絵梨花さんに対して、入巣が鯨井ルカ先輩を見るような憧れがあったんじゃないでしょうか。

久保 そうですね。先輩のことは無条件で愛することができたんです。いまでも大好きだし、中元さんの人と近い距離で接する優しさだったり、生田さんの自分で決めたことをやり抜く姿勢だったり、先輩からもらったことは心に染みついてます。最近はあまり先輩の話をしていないので、「(以前のような気持ちは)なくなっちゃったのかな」と思う方がいるかもしれないけど、あの時の全部が心の中にあるんです。

乃木坂46久保史緒里『ネムルバカ』

――同期のメンバーの卒業もあって。大園桃子さん、山下美月さん、与田祐希さんとのグループ内ユニット「いもうと坂」は、久保さんと与田さんの2人だけになりました(インタビュー後、与田さんも卒業を発表)。

久保 「いもうと坂」でいることができたのは奇跡だなと思います。4人とも「なんで自分はここにいるんだろう」と感じながら活動していたんです。自分だけがそう感じていると思っていたら、他の3人もそうだったという(笑)。だからこそ刹那的な輝きを放っていたんじゃないかな、と思うんです。

――久保さんら3期生が一番上の世代となった乃木坂46ですが、久保さんのグループに対するスタンスを教えてください。

久保 「自分がいまどんな立ち位置でいるべきか」と、すごく考えるんです。これからの乃木坂46は4期生、5期生が引っ張っていくべきだと思ってます。5期生の悩みは4期生が聞いてほしい。私としては、5期生が悩んでいることに気づいても、あえて違う話をするくらいのスタンスがいいのかなって。少し離れたところから、4期生と5期生の絆が深まっていくところを眺めたいと思ってます。その分、4期生の悩みは全部引き受けたいです。もちろん、5期生のことも守りたいし、何かあれば駆けつけようと思ってます。ALSOK(アルソック)のように(笑)。

―ステージでも一歩引いているのでしょうか?

久保 いや、現役中は輝いていたいですね。

――その言葉を聞けてうれしいです。

久保 自分からは言いにくいけど、私って負けず嫌いでギラギラしているじゃないですか(笑)。いまでもライブでセンターのポジションをもらった時は心から喜んでます。「乃木坂46大感謝祭2024」(2024年12月14日、15日開催)で、初めて『Sing Out!』をセンターで踊ったこともめちゃくちゃうれしくて。「私がセンターで申し訳ない」なんて思わず、最善を尽くそうとパフォーマンスしています。

『ネムルバカ』

映画『ネムルバカ』ポスター

大学の女子寮で同じ部屋に住む後輩・入巣柚実(久保史緒里)と先輩・鯨井ルカ(平祐奈)。ルカはインディーズバンド「ピートモス」のギター&ヴォーカルとして夢を追っているが、入巣は特に夢や目標のないまま、古本屋で何となくアルバイトする日々を過ごしている。2人は安い居酒屋で飲んだり、暇つぶしに古い海外ドラマを観たりと、緩く心地よい同居生活を送っていた。そんなある日、ルカに大手音楽レコード会社から声が掛かったことで、2人の日常は大きく変わりはじめる。
(C)石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

久保 史緒里

2001年7月14日生まれ。宮城県出身、アイドルグループ「乃木坂46」3期生。ラジオ「乃木坂46のオールナイトニッポン」(ニッポン放送)のメインパーソナリティーを務める。映画『左様なら今晩は』(2022年)や、大河ドラマ『どうする家康』(23/NHK)、劇団☆新感線の舞台『天號星』(2023年)などグループとしての活動と並行して俳優としても活躍中。乃木坂46としては3月26日に38thシングル『ネーブルオレンジ』をリリース。

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