2023.03.15
最終更新日:2024.03.08

井上祐希(陶芸家)「伝統と今の感性をつなぐユーモラスな表現への挑戦」

400年もの歴史をもつ美術工芸、有田焼。その伝統と技術の継承の中に、ストリートカルチャーや現代アートの要素を取り込み、陶芸の新しい在り方を追究している井上祐希さんの話を伺う。

井上祐希(陶芸家)「伝統と今の感性をつなの画像_1

井上祐希さん/陶芸家

 佐賀県有田町に生まれ、人間国宝の祖父の代から続く「井上萬二窯」の三代目として伝統を背負う一方、新たな表現を開拓している井上祐希さん。有田焼にステッカー風のモチーフをのせたり、釉薬でペイントアートのような絵付けをしたりと、陶芸にストリートの要素を融合させた作風が新しい。


「物心つく前から職人さんに囲まれて育ち、おのずと陶芸に愛着をもったし、祖父や父を尊敬しています。窯で修業し家業を継ぐことは僕にとって自然なこと。とはいえ伝統の枠組みの中だけでの制作にはワクワクできない自分も。有田焼を続けたいからこそ、好きなものを取り入れるべく挑戦し始めたんです」


 彼が取り入れるストリートカルチャーは、伝統的な価値観や様式美を重んじる文化とは真逆とも言える。ちなみに、作陶中にかぶっているハットはステューシーだ。


「自分が幼い頃から浸かっている環境にはないものに憧れたんです(笑)。ストリートならではの反骨精神やハングリーな熱量は新鮮に映った。昔から街へ向かう電車の中、次第にグラフィティが増える風景を眺めるのが好きでした。現代アートにもコンセプトを込めるという点で影響を受けていて、僕の『われもの注意』のステッカー柄を白磁器にのせたシリーズなんかはそう。ささいでも日常の固定観念にクエスチョンを与えられるモノが好きですし、自由な発想を大事にしたいですね」


井上祐希さん
1988年佐賀県有田町生まれ。祖父の井上萬二氏に師事し陶芸家の道を志す。2015年、佐賀美術協会展工芸部門で最高賞を受賞。伝統工芸である有田焼にストリートの要素をミックスさせた作風が注目を集める。New BalanceやYOKE、5525galleryといったアパレルブランドとのコラボレーションなど、ジャンルを超えて活躍中。3月18日から東京駅構内「スクエア ゼロ」にて作品の展示を開催予定。



Photo:Koji Maeda
Interview&Text:Takako Nagai

RECOMMENDED