乃木坂46の3期生としてグループをけん引しつつ、オールナイトニッポンのパーソナリティ、そして俳優としても映画、舞台で活躍の場を広げる久保史緒里さん。最新出演作は漫画家・石黒正数の同名青春コミックを、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの阪元裕吾監督が実写映画化した『ネムルバカ』。平祐奈さん演じる大学の先輩・鯨井ルカと大学の女子寮で同じ部屋に住む後輩・入巣柚実を演じている。
――久保さんは阪元裕吾監督の『ベイビーわるきゅーれ』シリーズが好きとお聞きしました。『ネムルバカ』も主人公２人の関係性やシニカルな視点など、阪元監督の色が出た作品になっていると思います。
久保 お話をいただいてから『ネムルバカ』の原作を読んで、いましかない大学時代の刹那的な生活が、「自分が味わってみたかった青春だな」と憧れたんです。さらに、阪元監督の世界を味わってみたい気持ちもありました。『ベイビーわるきゅーれ』で繰り広げられる、ちさととまひろの日常会話が素敵じゃないですか。２つのやりたいことが重なったので、撮影がすごく楽しみでした。
――セリフのオフっぽいテンポやトーンは、監督から細かい指示があったんでしょうか。
久保 本読みの段階から、阪元監督に細かいところまで演出していただきました。ひとりの役柄というより、私と平祐奈さんの関係値を重視されていたんです。２人でいる時の会話のテンポや間にこだわって、現場でセリフを追加することもありました。リハーサルでふと出た言葉に「それいいですね。本番でも入れましょう」と言ってくださることが新鮮で、撮影がずっと楽しかったです。特にセリフを足したのが居酒屋のシーンなので、注目してみてください。
――平祐奈さんは、これまで演じてきた役からおしとやかなイメージがあったので、『ネムルバカ』で演じた鯨井ルカのカッコよさに驚きました。
久保 平さんがルカ先輩を「やってみたかった役」とおっしゃっていて。本読みの時はまだ黒髪で、現場の初日から金髪姿になっていたんですけど、いい意味で違和感がありませんでした。平さんの人柄を知る前にルカ先輩として出会ったので、現場では「ルカ先輩と入巣」の関係でいることができたんです。
――ライブシーンの平さんも痺れました。
久保 カッコよすぎて平さんのことを遠い存在に感じて、原作と同じような現象が起きてしまいました(笑)。ライブシーンを撮り終わった後、みんなで集合写真を撮ることになって、平さんが肩を組んでくれたのに「離れた場所にいるようだな」と思ったんです。お芝居を超えて、入巣と同じような感覚を味わったのは、今回の撮影方法にもあると思います。ライブハウスにお客さんを入れて、実際の音響や照明で撮影したんです。貴重な体験ができました。
――LINE CUBE SHIBUYAでも撮影していましたよね。
久保 遠い存在に感じたことを平さんに言えないまま、LINE CUBE SHIBUYAでの撮影があって。会場を覗いた瞬間から泣きそうで「ここに長くいることはできない」と思ったんです。
――最初は平祐奈さんに人見知りをしていたそうですが。
久保 そうなんです(笑)。本読みで人見知りを発動している私を見て、平さんは「仲良くなれないかもしれない」と感じたらしくて。一方で、肩にポンと手を置いてきた平さんに、私も「仲良くなれないかもしれない」と感じていたんです(笑)。なのに、現場に入った初日からグッと距離が縮まって、「ルカ先輩と入巣」になることができたので、出会いって運命なんだなと感じました。
――『ネムルバカ』撮影後も平さんと会っているんですよね。
久保 たくさん会ってます(笑)。撮影中は「平さんってルカ先輩のような人なんだろうな」と思っていたんです。それくらい、ずっと「ルカ先輩」でした。でも、撮影後に会えば会うほど素の平さんを出してくれて。「平さんって、こんなにお茶目な子なんだ」という発見がありました。
――この２、３年、舞台や映画、ドラマに多く出演したことで、久保さんはさまざまな人の価値観に触れてきたと思います。特に共演された中でも、石倉三郎さんや古田新太さんといったベテランの方から大きな刺激を受けたんじゃないでしょうか。
久保 ものすごく刺激を受けました。年齢もキャリアも大きな差がある若手に対して、石倉三郎さんはオリジナルＴシャツをくださったり、古田新太さんはいろんなところに連れて行ってくださったり、信じられないくらいフランクに接してくださるんです。それでいてひとつひとつの言葉に重みがあって。三郎さんが褒めてくださると泣きそうになるし、おとっつぁん(古田新太)がポロッとこぼした「芝居続けろよ」という言葉に「やらなきゃ！」と背筋が伸びました。
――最近の久保さんは、デビュー当初からは考えられないくらい、乃木坂46メンバー以外の方たちと密にコミュニケーションを取っている印象があります。久保さんなりに踏み込んだ結果なのでしょうか。
久保 舞台でも映画でもドラマでも、たくさんの出会いがあって。経験を重ねるうちに「この縁を無駄にしちゃいけない」という感覚が大きくなりました。まだ足りないけど、素敵な方たちに囲まれているおかげで、一歩踏み出せるようになったんです。
『ネムルバカ』
