動画配信サービスでドラマを楽しむ人が増えている。ハマってしまい、朝まで観てしまうという人も…。そんな魅力あふれる作品の中からおすすめの1本を紹介する。
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』

’80年代娯楽映画の要素を詰め込んだ
懐かしく新しいジュブナイルSW
『スター・ウォーズ』(以下SW)の世界を舞台に描かれるオリジナルドラマシリーズの中には、西部劇風の『マンダロリアン』や硬派なスパイもの『キャシアン・アンドー』など個性派な作品も多い。本作『スケルトン・クルー』が目指したのは、名作文学『十五少年漂流記』や『トム・ソーヤーの冒険』を思わせる「ジュブナイル(少年少女向け作品)」であり、子どもが主人公のSWという斬新なアイデアにまずは意表を突かれる。舞台は帝国軍が敗れた後の銀河。故郷の星から飛び出した4人の少年たちは、危険な宇宙で冒険の旅を繰り広げる。
筆者がすぐに連想したのは、スピルバーグ製作の往年のヒット作『グーニーズ』(’85)だ。それだけでなく、本作には『E.T.』(’82)の名場面を彷彿とさせる浮遊バイクによる追跡劇や、『インディ・ジョーンズ』シリーズにも似た謎の遺跡をめぐる財宝探しなど、’80年代のルーカス/スピルバーグ映画を中心とした大らかな時代の娯楽作のエッセンスが随所にちりばめられている。映像面でもあえてアナログな手法が採用され、模型を使用した宇宙船、コマ撮りによる怪物の表現、手描きの背景画との合成など、CGだけでは出せない「味」が魅力。最近の映像作品にはあまりない無条件にワクワクさせる雰囲気は、当時を知る大人には懐かしく、若い世代には新鮮に映るだろう。
監督のジョン・ワッツといえば、『スパイダーマン』3部作のヴィランたちや、『COP CAR/コップ・カー』の悪徳警官など「邪悪な大人」を描くのを得意とするが、本作で主人公たちが出会う謎の悪党ジョッド(ジュード・ロウ)もまた、平気で人を欺く利己主義の権化として子どもたちの前に立ちはだかる。そんなジョッドと、命令次第で味方にも敵にもなる危険な海賊ドロイドSM-33の存在は、小さな世界しか知らなかった少年らが初めて出会う複雑な「世間」そのものだ。一見ひたすら楽しいだけに見える冒険の陰には、大人のズルさや怖さ、それに直面した子どもたちの苦い成長がある。少年向けという先入観を抜きに観れば、きっと「新たなSW」に出会えるはずだ。
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』
監督/ジョン・ワッツほか
出演/ジュード・ロウ、ラヴィ・キャボット・コニャーズ
帝国崩壊後の銀河を舞台にした大冒険を描くスター・ウォーズ・オリジナルドラマシリーズ最新作。平和な惑星を飛び出した子どもたちは、謎めいた男と出会い故郷に帰るための試練に立ち向かう。Disney+『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』全8話配信中。
編集者・ライター。ネット配信作品のレビューサイト「ShortCuts」などで海外ドラマの紹介記事を執筆中。TBSラジオ「アフター6 ジャンクション」出演。