12月24日、ついにこの日がやってきた。「週刊少年ジャンプ」にて連載中、単行本の累計発行部数が6000万部を超え、TVアニメシリーズも爆発的な人気を集めるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの大人気コミック『呪術廻戦』、本編の前日譚的なエピソードを描いた『劇場版 呪術廻戦 0』が満を持して劇場公開されるのだ。そのテレビアニメ&劇場版を一手に担い、“呪術”ブームを牽引している立役者であるMAPPAに、映画の見どころや面白さの秘密を直撃!
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『呪術廻戦』はすごくアニメ映えする作品
――漫画の表現を立体的に見せるアクション、魅力あふれるキャラクターとそれを撮るためのカメラワーク、かっこよくて斬新な音楽など、TVアニメシリーズが高い評価を得た要因はいろいろあると思いますが、あらためてつくり手の立場から見て、ヒットした要因は何だと思いますか?
瀬古 原作そのものが有無を言わさず面白いので、それがいちばん大きいと思います。あと、『呪術廻戦』ってすごくアニメ映えする作品だなとも思うんです。そして、朴さんのアクションシーンの演出が本当にうまい。特にスピード感だったり、カメラワークだったり、漫画の表現を立体的に見せるアクションがすさまじくうまい。その部分の相性のよさというか、漫画とアニメのいちばんいいところがお互いに共鳴し合って相乗効果を生んでいるのは大きいですね。
朴 自分もやっぱり原作のパワーがいちばんだと思います。本当に面白いですよね。特にキャラクターが素晴らしい。ものすごく生き生きしていて、一人一人に悩むところがあるんですよ。呪力という特殊な能力をもっているけど、抱えている悩みは多くの人が共感できるものとして表現されているから、見ている側も感情をのせやすいんだと思います。TVシリーズで言うと、瀬古さんがいい感じに各話の脚本を切ってくれたので、次にまた観たいという気にさせてくれたのもすごく大きいですね。TVシリーズは24話あるんですけど、すべての回でそれがあったから、あそこまで盛り上がったんじゃないでしょうか。
瀬古 すごくキリのいいところで24話に収められたのは本当によかったです。原作次第では中途半端なところで終わらないといけない可能性もあったので、それがちゃんと24話に収まって、「よし、次のステージに向かうぞ」というところで終われたのはよかったなと思います。
――TVアニメシリーズのときは、何か疑問点があるとすぐに原作者の芥見下々先生に意見を聞いたりしていたそうですが、今回はどんなやりとりがありましたか?
朴 いろいろありましたね。例えば五条の目隠しはTVシリーズと違っていて、それで言ったらコート、靴下も違うんですけど、そのデザインをどうするかの確認はしました。ほかにも、夏油の出す技で“うずまき”というのがあるんですけど、原作だと細かい描写がないんですよ。それがどういうものかで音のつけ方も違うし、質感のつくり方も全然違ってくるので、そこは先生に確認して具体的なイメージを共有しました。
――劇場版をつくるうえで苦労をしたなという部分はどこですか?
朴 やっぱりスケジュールが厳しいことですね(笑)。
瀬古 「えっ、映画をこのスケジュールでつくるんですか?」って感じでしたよね(笑)。
朴 「ちょっと無理じゃないの?」という進行でしたけど、MAPPAのスタッフが「やってやるぞ」となって、「じゃあ、頑張りますか!」と。
瀬古 それで僕がまず脚本を書いたんですが、そこから上がってきたコンテがめちゃくちゃ素晴らしかった。コンテを読んでいるだけで興奮しました。
朴 みんな信頼できるスタッフたちなので。チェックもスムーズにいけたから、このスケジュールでもできたんだと思います(笑)。
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乙骨憂太がどう成長していくか、ビジュアル面でも見せたかった。(朴)
乙骨憂太
『劇場版 呪術廻戦 0』の主人公。幼い頃に結婚の約束をした幼馴染・祈本里香を交通事故で失い、怨霊と化した彼女の呪いに苦しみ自身の死を望んでいたが、五条 悟の導きで東京都立呪術高等専門学校に編入し、仲間との出会いを経て里香の呪いを解くことを決意する。
コンテの段階でめちゃくちゃ素晴らしくて、読んでいるだけで興奮した。(瀬古)
『呪術廻戦』の前日譚となる劇場版では、TVシリーズだと2年生だった禪院真希や狗巻 棘、パンダが1年生として登場。映画化するにあたり、原作にはないオリジナルのシーンも加わっている。
アニメ監督 朴 性厚(パク・ソンフ)
アニメーター、演出家、監督。『呪術廻戦』のテレビアニメ版、劇場版で監督を務める。監督作に「牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-」「THE GOD OF HIGH SCHOOL-ゴッド・オブ・ハイスクール-」など。
シリーズ構成・脚本 瀬古浩司
アニメを中心に多くの作品を手がける脚本家。代表作に「進撃の巨人」シリーズ、「ヴィンランド・サガ」「平穏世代の韋駄天達」など。待機作に「サマータイムレンダ」「チェンソーマン」がある。