世界でただ一人のアートテラーであるとに〜が、現在開催中のアート展を独自の目線で読み解きます。今回はゴッホやピカソの作品を携えて来日した、ドイツを代表する二館の美術館展を紹介する。
独のカリスマコレクターが独自の 美意識で形成した独創的なコレクション
現在、国立西洋美術館では、ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館とコラボし、両館の収蔵品を対話させるように紹介する展覧会が開催されています。日本ではあまり耳馴染みのないフォルクヴァング美術館ですが、今年で開館100周年を迎えるドイツを代表する美術館の一つ。あのMoMAが開館する際に、お手本にした美術館として知られています。この美術館のコレクションの屋台骨をつくったのは、ドイツの実業家カール・エルンスト・オストハウス。彼は当時まだそこまで評価が定まってなかったポスト印象派の作品を積極的に収集しました。
今回初来日を果たしたゴッホの《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》もその一つ。晩年、精神を病んだゴッホが、療養所裏の麦畑で農夫が黙々と麦を刈る姿を描いた作品です。ゴッホ曰く、「自然という偉大な書物の語る死のイメージ」を見たとのこと。この絵を描いた翌年、ゴッホは麦畑で拳銃自殺を図っており、数あるゴッホの作品の中でも特に意味深な作品です。
さて、くしくも同じくドイツのルートヴィヒ美術館からも名品の数々が来日中です。こちらは、ペーター&イレーネ・ルートヴィヒ夫妻が寄贈したコレクションをもとに1986年に開館した美術館。チョコレート製造業で財を成した彼らもまた、同時代の美術品を積極的に購入しました。特に世界的に名高いのはピカソのコレクション。ペーターはピカソで博士号を取ったこともあり、作品を見る目は確か。質・量ともに、世界で3本の指に入るといわれているほどです。もちろん展覧会にはピカソの作品も来日しています。さらに、ドイツではいち早くポップ・アートを集めていたルートヴィヒ夫妻。そのコレクションはヨーロッパ最大級とも。ポップ・アートの作家とも直接交流があり、ペーターはウォーホルに自身の肖像画も注文しています。なお、展覧会では、ルートヴィヒ夫妻以外のコレクターが寄贈した珠玉の作品たちも紹介されていました。見ごたえたっぷりの展覧会はどこのドイツの美術館展だ~い? ケルンのルートヴィヒ美術館展だよ!
『自然と人のダイアローグ』
【国立西洋美術館】
東京都台東区上野公園7の7
開催中~9月11日
TEL:050(5541)8600(ハローダイヤル)
https://nature2022.jp
『ルートヴィヒ美術館展
20世紀美術の軌跡
ー市民が創った珠玉のコレクション』
【国立新美術館】
東京都港区六本木7の22の2
開催中~9月26日
TEL: 050(5541)8600(ハローダイヤル)
https://ludwig.exhn.jp
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とに〜
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