世界でただ一人のアートテラーであるとに〜が、現在開催中のアート展を独自の目線で読み解きます。今回はヨハネス・フェルメールと野田弘志、日蘭の写実絵画の巨匠による名画を紹介する。
写真には写らない、絵画だからこその 美しさをオランダと日本の作品で見比べる
現存する作品が少なく、真作と認められているのは35点ほどとされるオランダの画家ヨハネス・フェルメール。近年、彼が描いたキューピッドの絵が新たに発見された。といっても《窓辺で手紙を読む女》という絵の中から。実は以前よりX線調査によって、女性の背後の壁にキューピッドの画中画が隠されていることはわかっていたのだそう。当然、それはフェルメール本人によって上塗りされたと考えられていました。
ところが2017年にあらためて調査をしたところ、フェルメールが亡くなったずっと後に上塗りされたことが判明(誰が何のために上塗りしたかはミステリー)。そこで、フェルメールが描いた元の姿に戻すべく修復されることに。そして昨年、4年にも及ぶ修復作業の末、見事キューピッドが姿を現したのです。そんな修復ホヤホヤの《窓辺で手紙を読む女》が現在、東京都美術館にて所蔵館以外で初公開中。その後、札幌・大阪・仙台と日本を巡回します。キューピッドについ目が向いてしまいがちですが、カーテンや窓ガラス、絨毯、果物などの質感にもぜひご注目を! 本物と見まがうほどの写実的な描写にハートを射抜かれることでしょう。
さて、写実といえば、千葉県にある“写実絵画の殿堂”ことホキ美術館をお忘れなく。世界でも類を見ない写実絵画専門美術館として2010年に開館した美術館です。そんなホキ美術館の写実絵画コレクションに昨年新たに加わったのが、上皇ご夫妻の肖像画を描いたことでも知られる写実絵画界の生きる伝説、野田弘志さんによる《神仙沼-保木将夫氏に捧ぐ-》。ニセコにある神仙沼の絶景を縦約3m×横約7mの大画面に描ききった超大作。野田さんにとっても過去最大となる作品です。当初は3年で制作を終える予定でしたが、その倍の6年かけて昨年一応の完成を見ました。一応というのは、素人目にはわからないものの、野田さん曰く、現時点では未完成とのこと。今後、年に2回のペースでホキ美術館を訪れては作品に筆を入れ、完成に近づけていくそう。この絵が完成するのが先か、サグラダ・ファミリアが完成するのが先か。
なぜ人は写実絵画に惹かれるのか。それは、写真には写らない美しさがあるからなのかも?
『ドレスデン国立古典絵画館所蔵
フェルメールと17世紀オランダ絵画展』
【東京都美術館】
東京都台東区上野公園8の36
開催中~4月3日 ※日時指定予約制
TEL:050(5541)8600
https://www.dresden-vermeer.jp /
『野田 弘志新作展 神仙沼- 保木将夫氏に捧ぐ-』
【ホキ美術館】
千葉県千葉市緑区あすみが丘東3の15
開催中~5月22 ※日時指定予約制
☎043-205-1500
https://www.hoki-museum.jp/exhibitionnow/183/
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とに〜
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