日常にアートを取り入れてみるのはどうだろう。世界でただ一人のアートテラーであるとに〜が、現在開催中のアート展を独自の目線で読み解き紹介する新連載。第2回目は、世界中が熱狂するアーティストと江戸時代に脚光を浴びた浮世絵師をピックアップする。
現代と江戸時代。皮肉をユーモラスに描く、 ヒーロー二人の展覧会
新作が発表されるたびに、世界中が熱狂する覆面アーティスト、バンクシー。その活動の軌跡を辿る大々的な展覧会が、現在、寺田倉庫G1ビルで開催中です。会場では、個人コレクターによる貴重なオリジナル作品を一挙公開。バンクシーの代名詞ともいえる花束を投げる青年や、ネズミの作品、風船と少女の作品も展示されています。また、彼のファンを公言しているポール・スミス氏愛蔵の稀少なバンクシーの油彩画も! さらに、世界中に散らばるバンクシーの代表的なストリートアートの本物…はさすがに壁ごと持っては来られませんが、その雰囲気を体感できるように、ロンドンやニューヨーク、パレスチナの街並みがリアルサイズで再現されています。その完成度は、まさに本展のキャッチコピーどおり“映画のセットのよう”! 海外旅行が難しい今、バンクシー展の会場で旅行気分を味わってみてはいかがでしょうか?
さて、バンクシーのように社会や世情を風刺する作品を次々に発表して、庶民のヒーローとなったアーティストは江戸時代にも。幕末に活躍した浮世絵師・歌川国芳です。天保の改革により、贅沢は禁止に。遊女にかかわる絵や役者絵も幕府により出版禁止が命じられます。多くの浮世絵師がしぶしぶ従う中で、国芳は遊郭に集う遊女やお客たちを雀の姿に変えて描いた《里すゞめねぐらの仮宿》や、役者の似顔絵を壁の落書き風に描く《荷宝蔵壁のむだ書》といった浮世絵を生み出しました。奉行所の取り調べを受けたりもしたけれど、国芳は元気です。持ち前の反骨精神とユーモアセンスで、エンターテインメントの灯を灯し続けました。
そんな国芳の没後160年を記念して、ラフォーレ原宿の程近くにある日本屈指の浮世絵専門美術館・太田記念美術館では彼の回顧展を開催。10月から始まる後期では、国芳が得意とした武者絵が特にフィーチャーされるそう。出世作である《通俗水滸伝豪傑百八人之壹人》シリーズも出展されます。実はこのシリーズが人気を博したことがきっかけで、江戸の男子にあるブームが巻き起こりました。それは、彫り物。描かれた豪傑たちの彫り物に憧れて、江戸っ子たちは競い合うように彫り物を入れたようですよ。
『バンクシーって誰?展』
【寺田倉庫G1ビル】
東京都品川区東品川2の6の4
開催中~2021年12月5日
TEL:050-5542-8600
https://whoisbanksy.jp
『没後160年記念 歌川国芳』
【太田記念美術館】
東京都渋谷区神宮前1の10の10
開催中~2021年10月24日
TEL:050-5541-8600
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp
暮らしにアートを取り入れる。
世界でただ一人のアートテラー。難解で敷居が高い美術のイメージを払拭すべく、元吉本芸人ならではの視点で面白おかしく美術の魅力を伝える。公式BLOGはこちら。