斬新なキャラクター造形に、ダイナミックなアクションシーン、意表を突きまくりのストーリー展開。いま最も注目すべきマンガ『チェンソーマン』。第2部スタート、そして待望のアニメ化など、怒濤の快進撃を続ける衝撃作の魅力とは何なのか? アニメ・原作関係者、ファンなど9人が熱すぎる思いを激白する。
フルーツポンチ 村上健志(芸人) 切り株の上にチェンソー木の芽吹く雪合戦の相手がいない手が冷たい
※マンガ原作を未読で、アニメ版のみ
視聴している方には、
キャラクターや
ストーリー上のネタバレを含みますので、
ご注意ください。
淡々と目の前で起きていることを描く。それって俳句と似ている
『チェンソーマン』って、エモーショナルなだけでなく、目の前の出来事を淡々と描いている。その点で、風景を「写生」する俳句と似ている。
それを強く感じたのは、第75、76話で銃の悪魔が日本に上陸して攻撃するシーン。数ページにわたって死者の名前がひたすら羅列される。感情を排除して事実を提示することで、「いったい何が起きているんだ」と、読者はぐっと作品世界に入っていける。俳句も五七五の型の中で感情を描かない「余白」があるから、読み手は想像力を使って当事者になれるわけです。
また俳句って、“風景あるある”の一面があると思うのですが、僕が詠むときは、身のまわりにあるけど、まだ誰も見つけていない視点を入れたい。「言われてみればそうかも」と思われるくらいがちょうどいい。だから恐怖が大きい概念の悪魔ほど強いという設定なのに、主人公が一体化するのが銃や剣じゃなく「チェンソー」の悪魔ってところも好き。絶妙なところ見つけたなって。
今回僕の好きな俳句との共通点から『チェンソーマン』をお題に俳句をつくってみました。〈切り株の…〉の句は、具体的なシーンやキャラをもとにつくったのではなく、チェンソーのある平和な景色を思い、詠みました。怖いイメージがあるけど、本来は武器でなく道具。切り株の上にじっと静かに置かれたチェンソーは、誰も傷つけない。その横には小さな木の芽が生えている――という情景。〈雪合戦…〉の句は、本編の、弟とキャッチボールをしたかった少年時代の早川アキに着想を得ました。雪合戦の相手はおらず、手に雪玉だけがあって、ただ手の冷たさを感じる様子を描いています。
©︎藤本タツキ/集英社
銃の悪魔が初めて現れたとき、早川アキの家族との日常は儚くも一瞬で消えてしまう(第13話)
©︎藤本タツキ/集英社
「これだけハードな内容でモチーフが多いと俳句にしやすい。逆に戦いの間の日常パートもいい。作品では描かれてない皆の生活を想像して詠むのも楽しそう」。
KENJI MURAKAMI
1980年茨城県生まれ。フルーツポンチのボケ・ネタづくり担当。俳句を嗜み、『フルーツポンチ村上健志の俳句修行』も上梓。〈昼寝覚頰にパワーの角刺さり〉(「仲よく昼寝する二人。パワーの角が頰に刺さり目が覚めたデンジの穏やかな風景」)、〈指を嚙む力が君であたたかし〉(「指を嚙む力で、マキマと気づく。春」)とほかの句も秀作揃い。
ガチ語り! アニメに関するオススメ記事はコレ!
Interview&Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]