ドラマ、映画、お笑いなどのポップカルチャーのレビューで人気のブログ「青春ゾンビ」のヒコが、“テレビ”について熱く語ります! 今回取り上げるのは、再ブレイク中のもう中学生が奮闘するバラエティ番組だ。
再ブレイク中! 純度100%な もう中学生ワールドの冠番組
「有吉の壁」「マツコ&有吉 かりそめ天国」などでの活躍めざましく、再ブレイク真っ最中のもう中学生(以下:もう中)の在京キー局初となる冠番組が10月よりスタートした。タレントグッズ集めが趣味だというもう中が、番組公式グッズを作るためにロケを繰り広げていくという月並みなスタイルの番組なのだけども、これがほかではけっして味わえない圧倒的な面白さなのだ。もう中の偏りながらも豊富なタレント知識もさることながら、“もう中ワールド”としか呼びようのない多彩なボケの嵐に酔いしれてしまう。どこか狂気的な発想がポップに着地してしまう“もう中ワールド”にさくらももこの『コジコジ』や『神のちから』といった作品に重なるものを感じていたのだけども、第4回の放送にて、「夜間に始まった番組なので…」と顔にアルミホイルで作ったやかんを纏って登場するもう中に、「やかん君だ…(『コジコジ』登場キャラクター)」と独りごちた。
もう中のボケにはイマジネーションの飛躍がある。ナンセンスでシュールなイメージが矢継ぎ早に放たれ、理解の範疇を超えたイメージ同士のぶつかり合いにより形成される条理の外れた世界の不思議な心地よさ。それはまるで詩の成り立ちそのものだ。そして、立川談志がかつて提唱したイリュージョンという概念を彷彿とさせる。
現実には〝かけ離れている〟もの同士をイリュージョンでつないでいく。そのつなぎ方におもしろさを感じる了見が、第三者とぴったり合った時の嬉しさ。〝何が可笑しいのか〟と聞かれても、具体的には説明できない。でも可笑しい。(立川談志『談志最後の落語論』より)
談志を倣うのであれば、もう中の話芸はまさにイリュージョン漫談である。時に、もう中の陽気でハッピーな芸風の陰に、どこか“さびしさ”のようなものを覚えやしないだろうか。喧騒の中にいても、常にひとりぼっちであるような感覚。この番組においても、平成ノブシコブシ・吉村、シソンヌ・長谷川といった手て練だれ芸人をゲストに呼びながらも、「生ワイプ枠」というこれまたナンセンスな手作り小道具の導入でもって、相互のコミュニケーションを遮断(どちらかが笛を吹くと会話が可能になるという無駄なシステムも最高)してしまうのだ。しかし、その話芸は“かけ離れている”ものをつなぎ合わせていく。もう中の放つボケは、おのおのが持ち合わせる孤独をつないでいく“優しさ”なのかもしれない。
「もう中学生のおグッズ!」
出演:もう中学生
テレビ朝日系にて月曜26時36分から放送中。
グッズ集めが趣味のもう中が「売れる番組グッズ」を作るべく大奮闘。自由すぎる彼のセーブ役として、毎回さまざまなツッコミ芸人がゲスト出演!
©テレビ朝日
連載「語りたがる俺のための必修アニメ」
ヒコ
人気ブログ「青春ゾンビ」で、ドラマ、映画、お笑いなどのポップカルチャーのレビューを執筆。「10代の頃の自分が読んでも嫌な気持ちにならない文章を書く」ことが信条。