2019.11.08
最終更新日:2024.03.07

11月8日公開! チェット・ベイカーの知られざる“最期の日々”を辿る『マイ・フーリッシュ・ハート』

最近笑ってないかも、泣いてないなというおじさんのために、週末公開の心動かす注目映画を紹介するコラム『40歳男子はコレ観とけ!』。今回は、歌うトランペッターと賞賛されたジャズ界のレジェンド、チェット・ベイカーの知られざる最期の数日間を描いたミステリーを紹介します!

11月8日公開! チェット・ベイカーの知の画像_1

栄光と闇の狭間で愛を求めてもがく 伝説的ミュージシャンの死の真相を映す

1988年5月13日金曜日、午前3時。アムステルダムに滞在中のチェット・ベイカーが、宿泊先のホテルの窓から落下して死亡した。いち早く現場に駆けつけた地元の刑事ルーカスは、うつ伏せの状態で頭部から血を流している遺体を確認し、その男が落ちた窓辺に謎めいた人影を目撃する。しかし、チェットがいた殺風景な部屋の内部には誰もおらず、机にはドラッグ用の注射器などが散乱し、床にはトランペットが転がっていた。すぐさまルーカスは捜査に乗り出し、チェットを取り巻く人々、マネージャーのピーター、医師のフィールグッド、ルームメイトのサイモン、そしてチェットの最愛の女性サラに話を聞く。捜査を進めるうちにルーカスは、チェットの傷ついた心の闇に触れていく。やがてチェットがドラッグディーラーに借金返済を迫られていた事実を突き止め、ある“真実”にたどりつく。

11月8日公開! チェット・ベイカーの知の画像_2
1950年代のジャズ・シーンに突如として現れ、そのハンサムな容姿から溢れるやさしい歌声とトランペットの音色で絶大な人気を誇ったトランペッター、チェット・ベイカー。50年代後半からアメリカ、ヨーロッパと拠点を移しながら活動するが、薬物摂取やそれによるトラブルが絶えず、一時再起が難しい状態となった。その後奇跡的にカムバックを果たし、音楽に専念するものの薬物依存から抜け出せず、88年の5月にホテルの窓辺に足を向ける。チェットの最期は、いまだ謎のまま──40cmしか開かない窓からどのようにして落ちたのか──今作はそんな不可解な死から始まるミステリーだ。
11月8日公開! チェット・ベイカーの知の画像_3
地元の刑事であるルーカスは、チェットがいたホテルの部屋の窓辺に見た幻のような影を追いかけるうちに、彼の才能とその裏に潜む闇に触れることになる。愛を渇望しながらも手に入れられず、不器用で、弱く、孤独に向き合い続けたチェットに、自分を重ね合わせはじめる。奇妙な共感と使命感を胸に事件を追うルーカスと、次第に露わになるチェットの最期の数日間を、独自のフィクションと幻惑的な映像、そしてタイトル曲「マイ・フーリッシュ・ハート」をはじめ「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」などの名曲とともに紡いでいく。極上の音を地上に届けにきた天使と言われるチェットの才能を誰もが愛し、その演奏に夢を見たが、本人は心に住み着いた悪魔に抱かれて堕ちていくことになってしまい…そう、最期は冷たい路上に…。聞き込みをすすめるうちに不穏な胸騒ぎを覚えたルーカスは、チェットが最期の時間を過ごしたホテルの部屋に舞い戻る。そこで待っていたのは、観る者が予想しえない真実の入り口だった…。

『マイ・フーリッシュ・ハート』

監督:ロルフ・ヴァン・アイク
出演:スティーヴ・ウォール、ハイス・ナバー、レイモンド・ティリー
2019年11月8日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
©2018 (PUPKIN) – VPRO

『マイ・フーリッシュ・ハート』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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