2019.08.02

8月3日公開! 連続殺人鬼があなたの隣人だったら…『サマー・オブ・84』

最近笑ってないかも、泣いてないなというおじさんのために、週末公開の心動かす注目映画を紹介するコラム『40歳男子はコレ観とけ!』。今回は、地元で起きる連続殺人鬼の犯人を隣人の警官だと疑う少年たちに降りかかる惨劇を描いた青春ホラー映画をピックアップ!

8月3日公開! 連続殺人鬼があなたの隣人の画像_1

無垢な少年ならではの直感と空想が たどり着くのは残酷な真実かそれとも…

1984年、オレゴン州イプスウィッチ。穏やかな郊外の住宅街で暮らすデイビーは、エイリアン、幽霊、猟奇犯罪といったオカルトやミステリーに夢中になっている少年だ。そんな彼の15歳の夏、近隣の町で同年代の子供たちばかりが狙われる連続殺人事件が発生した。好奇心から街を監視する中で、デイビーは一連の事件の犯人が向かいの家に住む警官マッキーではないかとにらむ。さっそく彼は、親友のイーツ、ウッディ、ファラディとともに独自の捜査を開始する。はたしてデイビーの推理は正しいのか、それとも行きすぎた空想なのか。4人の少年の前に真実が現れた時、彼らは想像をはるかに超えた恐ろしい体験をすることになる。

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80年代の日本は、まだ隣人とのコミュニティ意識が強く残り、各家庭が互いを見守り、鍵をかけずに出かけることもあった(隣人に留守を頼むことだってしばしば)。また、日本は経済に恵まれ、85年からの“バブル時代”を挟んでお祭りのようなムードが充満し、安心と余裕があった時代といえる。映画、音楽、文学でも新しいジャンルやトレンドが生まれ、精神的にも豊かさを享受していたように思う。この頃、特定の趣味に熱狂する人を表す“オタク”という言葉が登場するが、この物語の主人公は、都市伝説や陰謀論にハマっているオタク少年だ。彼が住むアメリカの郊外では、上で記した日本の80年代と少し異なり、移住者が増えたことにより新しいコミュニティの中で隣人への不安を潜在的に抱き始めた頃だという。「連続殺人鬼も誰かの隣人だ。人は決して本性を見せない。郊外でこそイカれたことが起こる」という彼の印象的なモノローグから始まる本編は、そんな時代の歪みに起こり得た衝撃の事件を描いている。
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あの頃、空想がとっておきの娯楽だった。地元を騒がす連続殺人事件を前に、心配よりも好奇心が先に出てくる15歳。親友が集まればなんだってできそうな気がする15歳。怪しい行動を続ける警官マッキーを追いかけるほどに、疑念を募らせるデイビーと親友のイーツ、ウッディ、ファラディ。少年ならではの大胆な冒険心と正義感を胸に危険な捜査を進めるが、決定的証拠は出てこない。我々観客は彼らと同じ目線に立ち、緊張感がMAXとなった時、驚愕のラストへと身を投じることになる…(結末は他言厳禁!)。また同時に、彼らが友情や恋、家庭環境を共有しながら、心の隙間を補完し、成長していく姿は、大人への通過点であった自分自身の少年/青年時代を呼び覚ます。純粋無垢な思春期の終わりのひと時を、手に汗握るサスペンス・ホラーをベースにみずみずしく表現した秀作なのだ。
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ちなみに80年代は、少年少女の想像力を掻き立てる冒険映画や、自分と同じような子どもたちが主人公となるジュブナイル映画がたくさん作られ、その中の多くの名作が今でも敬愛されている。『E.T.』では地球外の未知の存在に思いを馳せ、『スタンド・バイ・ミー』では日常と隣り合わせの非日常的恐怖体験に恐怖し、『グーニーズ』では堅い友情とともに乗り越える初めての冒険に心を踊らせた。この頃から、少年少女×サスペンス&ホラーは鉄板であり、相性の良さは時代を経ても色褪せない。『サマー・オブ・84』を観終わった後は、当時初めて感じた新鮮な感情(もう今となっては得られない原始的なワクワクやドキドキ…)を思い出すために、また80年代作品を振り返ってみるのも面白そうである。

『サマー・オブ・84』

監督:RKSS(フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル) 
出演:グラハム・バーチャー、ジュダ・ルイス、ティエラ・スコビー、リッチ・ソマー
2019年8月3日より、新宿シネマカリテほか全国順次公開
2017©Gunpowder&Sky,LLC

『サマー・オブ・84』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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