2018.10.19
最終更新日:2024.03.07

10月20日公開! 複製画を描き続ける画家に迫るドキュメンタリー『世界で一番ゴッホを描いた男』

最近笑ってないかも、泣いてないなというおじさんのために、週末公開の心動かす注目映画を紹介するコラム『40歳男子はコレ観とけ!』。今回は、ゴッホの複製画を描き続けた男が抱える人生の葛藤と決断を追ったドキュメンタリーだ。

10月20日公開! 複製画を描き続ける画の画像_1

自分は何者なのか…。 夢と現実の間で生きる複製画家の人生を追う

複製画制作で世界の半分以上のシェアを誇る油絵の街、中国・大芬(ダーフェン)。出稼ぎでこの街にやってきた趙小勇(チャオ・シャオヨン)は独学で油絵を学び、20年もの間ゴッホの複製画を描き続けている。絵を描くのも食事を摂るのも寝るのもすべて工房の中。いつしか趙小勇は、今後の人生の目標を明確にしたいという熱い思いを胸に、オランダ・アムステルダムにあるゴッホ美術館へ行くことを夢見る。

10月20日公開! 複製画を描き続ける画の画像_2
この作品で描かれているのは、複製画制作が産業として確立している大芬の「油画村」の実情と、絵画に対する誇りと愛とともに生きる画工(複製画を描く絵描き)の姿だ。主人公の趙小勇は1996年に出稼ぎでこの街を訪れ、それ以降10万点以上の複製画を家族とともに描き世界中に送り出してきた。そして、彼は自分に問う。数十年もの間、誰よりもゴッホを描いてきたのに本物を見たことがない。ゴッホを生業とし、敬愛する彼は、本物を見てなにか気づきを得たいとアムステルダムへ向かう。度々スクリーンに映し出される趙小勇の眼差しは、大好きなものに熱中する少年のように澄んでいて、その絵画に向かう純粋な姿は、誰もが羨ましく思い、魅せられるだろう。
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妻の反対を押し切り、なんとか渡航費を捻出し、趙小勇はついに仲間たちと旅立つ。取引先のアムステルダム画廊の元を訪ねてみるが、そこには彼が思いもしない現実が待っていた…。自分は職人か、画家か──。ゴッホの生き様に自分を写し合わせ、本物の絵画を前に何百万回となぞった筆致を反芻する中で、彼はたしかにある気づきを得る。大芬に戻った彼は、澄んだ眼差しで前を見据える。絵画に人生を捧げた男の人生の大きな決断に、胸が熱くなる。

『世界で一番ゴッホを描いた男』

監督:ユイ・ハイボー、キキ・ティンチー・ユイ
2018年10月20日より、新宿シネマカリテ/伏見ミリオン座ほか、全国順次公開
© Century Image Media (China)

『世界で一番ゴッホを描いた男』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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