2020.07.25

内田理央さんが勧める、大人買いしたい「一気読みマンガ」3選

時間を忘れてしまうほど面白い。完結しているから続きが気になってやきもきすることもなく、読みたいときに大人買いしてすぐ読み切れる。そんな「一気読みマンガ」の醍醐味とおすすめ作品を、だーりおこと内田理央さんに聞きました。

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内田理央 / 女優

だーりおのおすすめはまさかの「潜水艦」マンガ!

 雑誌「MORE」でお気に入りのマンガを紹介する連載「ウチダマンガ店」をもつなど、大のマンガ好きとして知られる内田理央さん。そんな“だーりお”が「これはハマる!」と激推しする一気読みマンガとは?

内田 悩んだんですけど、今回は『沈黙の艦隊』『BLUE GIANT』と『I【アイ】』の3作品にしました。

――『沈黙の艦隊』、懐かしいです。

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内田 実を言うと私、潜水艦マニアなんですよ。ヘンな話ですけど、何かつらいことがあると、自分よりも過酷な場にいる人たちのことを調べてしまうクセがあるんです。私は水に潜るのが苦手で、閉所も苦手だから、それが合体した潜水艦のようなところで働いている人たちってどんな人なんだろう?…と思っていろいろ調べ始めたら、『沈黙の艦隊』にたどり着いたんです。読んでみると、とにかくその発想が面白くて一気に引き込まれました。現実の日本は原子力潜水艦をもってないんですけど、『沈黙の艦隊』ではアメリカと共謀して日本初の原子力潜水艦がつくられます。その艦長が海江田四郎さんというすごい切れ者で、この潜水艦を一つの独立国にして「やまと」と名乗って独立宣言するんです。それで世界各国が「やまと」を撃沈しようと攻撃してくるんですけど、海の中で頼れるのは音と磁場だけで、それを踏まえた心理戦がメチャメチャよく描かれています。20年以上も前の作品なのに、テーマは今の時代にも通用するところがあって、ラストの国連本部での海江田艦長の演説とか、何回読んでもすごい。潜水艦好きじゃなくても(笑)、めくるめく一気読み体験が待っています!©️かわぐちかいじ/講談社

――では『BLUE GIANT』は?

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内田 マンガって本来なら音が聞こえませんよね? なのに、この作品は音がちゃんと表現されていて、しかも演奏者の気迫みたいなものも伝わってくるから、本当に音が聞こえてくるような感覚になるんです。演奏シーンの臨場感がすごくて、鳥肌が立つ瞬間が何度もありました。音の描き方って作者の個性が表れると思うんですけど、『BLUE GIANT』は個人的にすごく刺さりましたね。 ――主人公の宮本大の、まっすぐでがむしゃらなところがいいですよね。 内田 そうなんですよ。私、中学の3年間、吹奏楽部だったんですね。トランペットを吹いていたんですけど、すごく下手だったんです(笑)。大はサックスをメチャクチャ練習するじゃないですか。それでジャズバーで初めて演奏したとき、がむしゃらにやりすぎて、客のおじさんから「うるさいんだよ!!」って怒られて。でも、そこから自分なりにすごく学んで練習して、もう一度そのお客さんの前で演奏して、最後に認めてもらえるんです。その努力と成長が素晴らしくて、しかも全編を通じてこんな感じだから、本当に感動します。私も中学のとき、もっと頑張ればよかったな(笑)。終盤にえーっていう悲しい出来事が起きてトリオは解散するのですが、大は単身海外に旅立ち、最終的にはポジティブな気持ちで読み終わります。次に『BLUE GIANT SUPREME』『BLUE GIANT EXPLORER』と続いていくので、まずはこちらから一気読みで楽しんでください。 ©石塚真一/小学館

――そして最後は『I【アイ】』です。

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内田 これ、ストーリーがすごく説明しづらくて…。宮城県の田舎に生まれた少年二人の話なんですけど、一人は雅彦という医者の息子で、もう一人はイサオという何かちょっと不思議な男の子。イサオは他人の魂を自分に乗り移らせることができる力をもっていて、雅彦はそんなイサオに惹かれて、二人で神様を探す旅に出るんですね。私は仕事で訪れた秋田県の増田まんが美術館でたまたまこの作品を手に取って、内容のあまりのすごさに衝撃を受けて、その場で全3巻ポチりました。生と死とか、神様をテーマに扱っているので、内容は賛否両論分かれると思います。たった3巻ですが、深いテーマを描いているので読み応えはたっぷりだし、次の展開が気になりすぎて一気に読んでしまいます。ただ、読後感はズシリと重い…私自身、とんでもない本を読んでしまったなって思いました(笑)。 ©いがらしみきお/小学館

『沈黙の艦隊』
かわぐちかいじ[著] 講談社 漫画文庫 全16巻プロフィール画像
『沈黙の艦隊』 かわぐちかいじ[著] 講談社 漫画文庫 全16巻
日本初の原子力潜水艦「シーバット」が独立国「やまと」を宣言する――。国とは何か、戦争とは何か、安全とは何か。米ソ対立があった時代の国際社会を舞台にした話だが、この作品が問いかけるものは今なお熱い。人類の未来がここに!
『BLUE GIANT』
石塚真一[著] 小学館 全10巻プロフィール画像
『BLUE GIANT』 石塚真一[著] 小学館 全10巻
高校3年生の宮本大は、雨の日も猛暑の日も毎日サックスを吹く。メチャクチャな演奏だが、その音は不思議と人を惹きつける。激しく変化し、激しく成長する大。世界一のジャズプレーヤーへの夢はグイグイ加速していく。一気読み必至!
『I【アイ】』
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『I【アイ】』 いがらしみきお[著] 小学館 全3巻
宮城県の田舎町に生まれ、身寄りのないイサオ。一方、医者の息子である雅彦は、小学生の頃から自分が生きていることの意味について悩んでいた。高校入試の日、二人はトモイという神様を探しに旅に出る。二人の長い長い旅が始まった――。

PROFILE

1991年生まれ、2010年デビュー。現在は女優、モデルとして映画やドラマ、バラエティなどで活躍。近日放送予定のNHK BS時代劇「明治開花 新十郎探偵帖」では時代劇に初挑戦。好きな漫画を紹介する「ウチダマンガ店」を「MORE」で連載中。「MORE」専属モデル

Photos:Yoshio Kato 
Composition&Text:Masayuki Sawada

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