2017.10.24
最終更新日:2024.03.21

男は挑戦せよ! 安藤忠雄氏が大人へ送る“全力疾走”のすすめ

世界的にその名を知られる巨匠・安藤忠雄。 近年は建築の枠組みを超え、社会活動にも
積極的に取り組み、世の中に刺激を与え続けている。この稀代の建築家が自らの歩みを振り返り、
40歳になる大人に向けて送る、“全力”メッセージ。

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無我夢中で走れば 面白いことが起きる

40代というのは、いちばん元気な時期ですよね。肉体的な体力も知的な体力も、どちらも充実している時期だからこそ、一心不乱に全力で走り続けたほうがいいと思います。


私は、20代の後半に事務所を開き、30代と40代はそれこそ脇目も振らずに、死に物狂いで働いてきました。これだけ長くやっていると、よく「どういう基準で仕事を選ぶのですか?」と聞かれることがありますが、たいてい難しいものを選んで挑戦してきたように思います。やりやすいものは誰かがやればいい。特に40代の頃は、「これはちょっとできないのではないか」と思うものばかりやっていました。

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例えば、『光の教会』は敷地条件はそれほど悪くなかったけど、なにせ予算がない。設計依頼を受けたのが1987年で、当時はバブル絶頂期で建設業界が巨額のビッグプロジェクトに沸いているときだったため、小規模でコストも厳しい仕事を引き受けてくれる工事会社がまずなかった。どうしようと困っていたら、過去に仕事をしたことがある工務店の社長が「たとえ条件が厳しくとも、新しいことに挑戦するのであれば、ぜひやりたい」と手を挙げてくれて、「足らないぶんは私が出しましょう」とまで言ってくれて、ようやく完成することができました。意欲をもって一心不乱にやり続けていると必ず誰かが助けてくれるのです。
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無我夢中で走ったほうが間違いなく面白いことが起きます。仕事というのは毎回が勝負であり、常に己のすべてを懸けて取り組むものです。そうやって懸けたぶんだけ相手に対しても強烈に伝わるし、そこに緊張感が生まれる。自分を追い込んでいかないと本当の力は身につかないし、心の底から人を感動させるものは生まれないと思います。

現代の日本人男性の平均寿命は約80歳といわれています。私もそうですが、これからの時代は年をとっても元気なうちは仕事をすべきですし、そのエネルギーを蓄える時期が40代だと思います。ガソリンがなかったらクルマは走らないのと一緒で、人間も知的体力と肉体的体力がなかったら走れません。気のもちようで人生はいくらでも変わります。青春というのは、10代や20代だけのものではありません。たとえ70代でも80代でも、前向きな気持ちで何かに挑戦していたら、その人は青春を生きているといえます。今後の人生をよりよく生きるための地固めの時期が40歳なのです。一心不乱に全力で走り抜けてください。


国立新美術館開館10周年 安藤忠雄展- 挑戦-

会期:9月27日(水)〜12月18日(月)
休館日:火曜
会場:国立新美術館 企画展示室 1E+野外展示場
開館時間:10:00〜18:00(金・土曜 〜20:00。入場は閉館の30分前まで) http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/


安藤忠雄 TADAO ANDO
1941年大阪府生まれ。元プロボクサー。独学で建築を学び、’69年に安藤忠雄建築研究所設立。’79年に「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞。その後も日本芸術院賞、プリツカー賞、国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル、イサム・ノグチ賞など、受賞多数。2010年に文化勲章、’13年にフランス芸術文化勲章(コマンドゥール)、’15年にイタリア共和国功労勲章グランデ・ウフィチャーレ章を受章。イェール大学、コロンビア大学、ハーバード大学の客員教授を務め、’97年より東京大学教授、’03年より同名誉教授。代表作に『FABRICA(ベネトンアートスクール)』『フォートワース現代美術館』『地中美術館』『東急東横線 渋谷駅』『プンタ・デラ・ドガーナ』『クラーク美術館』など。現在、アジア、欧米、中東の各地で20〜30の建築計画が進行中。

Photos:Teppei Hoshida
Text:Masayuki Sawada

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