深遠なテーマや物語性を秘めた、心躍るような冒険譚にファンタジー、歴史物語…それが「サーガ」。現在は映画や小説だけでなく、メディアの多様化、ネット配信サービスの広がりに伴い革新的な“物語”が続々と生まれている状況。本編完結後もスピンオフ的に枝分かれするサーガ、ダークヒーローを描いたサーガ…今見るべき作品とは?
柳沢 翔が語る
未来 のサーガ
まだ短いが、この先、さらなる壮大な広がりを見せる物語
ポカリスエットの新しいCM「でも君が見えた」篇をはじめ、話題のCM作品を数多く手がけている映像ディレクターの柳沢翔さん。演出のアイデアを好きな漫画から得ることもあるそうで、85mの動く舞台セットが話題となった「でも君が見えた」篇も、当初のプランは、『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場する岸部露伴のスタンド「ヘブンズ・ドアー」から着想を得たものだったという。
「露伴のヘブンズ・ドアーの能力って、人間が本のようにパラパラとめくれていくじゃないですか。あのビジュアルが昔から大好きで。学校の廊下が教科書やテスト用紙のようにめくれていったら面白いと思ったんです。結局、巨大な紙を風圧でめくるのがうまくいかず、そのプランは断念しました」
そんな漫画好きの柳沢さんに、今はまだ始まったばかりの“未来”のサーガ作品を教えてもらった。
そのほかに、『チ。―地球の運動について―』と『天国大魔境』もおすすめだと柳沢さん。
「『チ。』は、15世紀のヨーロッパが舞台で、当時は異端とされていた地動説を、まさに命がけで追い求める人々の物語。知的探求心って、言い換えるなら“自分はどこまでいけるのか”だと思うんです。自分の才能や能力を信じて、まだ誰も見たことのない地平を目指す。それは情熱と同じぐらい狂気をはらんでいるんだと、『チ。』を読むと痛感します。作者の魚豊さんは前作の『ひゃくえむ』でも“自分がどこまでいけるのか”というテーマを根底に描いていた気がします。やっぱり、そうした純化された魂の物語を読むとエネルギーをもらえますね。© 魚豊/小学館
『天国大魔境』は、廃墟と化した未来の日本を生き抜く少年少女たちの冒険物語。傑作『外天楼』で震えた最高密度の伏線回収とナンセンスな笑い、そして浮かび上がってくる人間の悲哀。そのすべての要素を継承しながら、さらに大きなスケールで展開される物語に夢中になっています。AKIRA的なSF世界に加えて、ディストピアものの批評的視点を感じられるのも、作者の圧倒的センスによるものなのか…ああ、早く続きが読みたい!」© 石黒正数/講談社
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