2021.07.25

円城塔が語る『ゴジラS.P』の裏側【大人が夏休みにハマりたい「サーガ」】

深遠なテーマや物語性を秘めた、心躍るような冒険譚にファンタジー、歴史物語…それが「サーガ」。現在は映画や小説だけでなく、メディアの多様化、ネット配信サービスの広がりに伴い革新的な“物語”が続々と生まれている状況。本編完結後もスピンオフ的に枝分かれするサーガ、ダークヒーローを描いたサーガ…今見るべき作品とは?

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円城 塔 EnJoe Toh
小説家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年に『Self-Reference ENGINE』でデビュー。’12年に『道化師の蝶』で第146回芥川賞受賞。’17年に『文字渦』で第43回川端康成文学賞、’19年には同作で第39回日本SF大賞を受賞。


円城 塔が語る時をかけるサーガ

ゴジラS.P の裏側

『ゴジラS.P』を観て、30年後にまた新しいゴジラが花開けばうれしい

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 日本が生んだ世界に誇る怪獣といえば、ゴジラである。1954年の『ゴジラ』から2016年の『シン・ゴジラ』まで、これまでに29作品がつくられ、さらにハリウッド版も製作されるなど、世界中で人気を集めている。このように時代や国を超えて連綿と続くゴジラのサーガに新たに加わったのが、完全新作テレビアニメシリーズとして製作された話題作『ゴジラS.P〈シンギュラポイント〉』だ。シリーズ構成と脚本は、芥川賞作家の円城塔さんが手がけている。
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「最初はSF考証の立場で参加していたのですが、監督の高橋(敦史)さんと設定を詰めていくうちに、脚本も僕が書くことに。ゴジラは小学生の頃から好きで、初めて観たのは1984年の『ゴジラ』でした。当時からゴジラは生き物として気になる存在で、あんなにでかい生物がいていいのか、どこに住んで何を食べているのか、一体しかいないけれど群れじゃないと生存できないんじゃないか、といったことをずっと考え続けてきました。そうやってヘンなことを考えるのが好きだったので、大学で物理の道に進んだというのもあります。だから、今回ゴジラにかかわることができて、これまで考えてきたことが役立つ日が来たぞと(笑)」
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 誕生から70年近くたつにもかかわらず、今も新しく作品が生み出され続けるゴジラ。これだけの人気コンテンツとなったのは、「ゴジラにはどんな世界でも受け入れられる強靱さがあるから」だと円城さんは言う。 「今回は初めてのテレビアニメということもあって、わりとスタンダードな設定にしましたが、打ち合わせの段階では学園ものにしようかというアイデアもありました。どんな形であれ、ゴジラが出てきただけで、それはゴジラ作品として成立するんですよね。かつての僕がそうだったように、小さい頃にゴジラを観て何かしらの影響を受けて、大きくなって新しいゴジラ作品をつくる。そうやってループしていけるのも、ゴジラがサーガ化していった理由だと思います。若い人たちが『ゴジラS.P』を観て、物理学に興味をもつでも、生物学に興味をもつでも、映画に興味をもつでも何でもいいんですが、30年後ぐらいにまた新たなゴジラとして花開いてくれたらうれしいですね」

円城塔がすすめるサーガ的作品「ゲーム・オブ・スローンズ」

「ゲーム・オブ・スローンズ」〈第一章~最終章〉4K ULTRA HDコンプリート・シリーズ(30枚組+ブルーレイボーナス・ディスク3枚付き)発売元:ワーナー・ブラザースホームエンターテイメント 7月30日発売

ジョージ・R・R・マーティンのファンタジー小説『氷と炎の歌』を原作としたテレビドラマシリーズ。「原作シリーズは現在も続いていて、非常によくできたサーガです」。

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Photo:Tohru Yuasa
Interview&Text:Masayuki Sawada

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