クリスマスシーズンにぴったりのラブコメ王道作品。実は…ある事件と深い繋がりがあった!?
“運命”に導かれた!? 王道ラブコメ映画
——前回の『めぐり逢えたら』(1993年)に引き続き、“運命”がテーマの『セレンディピティ』(2001年)です。
高橋芳朗(以下、高橋):では、まずは簡単にあらすじを。「舞台はクリスマスシーズンのニューヨーク。買い物客で賑わうデパートで、偶然に同じ商品の手袋へと手を伸ばしたジョナサン(ジョン・キューザック)とサラ(ケイト・ベッキンセイル)。二人は譲り合っているうちに惹かれ合うものを感じて“素敵な偶然”という名のカフェ“セレンディピティ3”でお茶をすることに。その後一旦別れたものの、二度目の偶然の再会によって共に運命めいたものを感じはじめていた。しかし、サラはこの出会いが本当に運命なのかを試そうと、ある提案をしてジョナサンのもとを立ち去ってしまう。それから数年後、ジョナサンは別の女性と婚約。一方のサラはミュージシャンの恋人からプロポーズを受けていたが、二人はまだお互いのことを忘れられないでいた…」というお話。
ジェーン・スー(以下、スー):王道でしたね。とにもかくにも、出てくるアイテムの転がしが「ラブコメ映画のお手本」のような作品。“セレンディピティ3”のカフェだったり、黒い手袋だったり、本だったり、5ドル札だったり、サラの妹カップルだったり。細かく出てくる伏線や前振りが、すべて気持ちよく記号的に回収される。私は5ドル札のエピソードが好きだな。サラの手元に戻ってきた時、「そこでそうきたか!」って思ったもんね。
高橋:ジョナサンもサラも、とにかく忘れ物をしまくることで運命を引き寄せるんだよね。厳寒の冬のニューヨークで公園にジャケット忘れてくるとか、さすがにご都合主義がすぎるよ! と思わなくもないけどさ。でもその一方、これぞ正統派ロマンティックコメディの面目躍如だろう、という気もするんだよな。人肌恋しいこの季節、なんとかロマンスを呼び込みたいあなたは積極的に忘れ物をしてみよう(笑)。
『セレンディピティ』
監督:ピーター・チェルソム
出演:ケイト・ベッキンセイル、ジョン・キューザック、ジェレミー・ピヴェン、ブリジット・モイナハン、ジョン・コーベット
初公開:2002年11月9日
製作:アメリカ
Photos:AFLO
ジェーン・スー
東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家、ラジオパーソナリティ、コラムニスト。現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月曜~金曜 11:00~13:00)でパーソナリティーを務める。近著に「女に生まれてモヤってる!」(小学館)。
高橋芳朗
東京都港区出身。音楽ジャーナリスト、ラジオパーソナリティ、選曲家。「ジェーン・スー 生活は踊る」の選曲・音楽コラム担当。マイケル・ジャクソンから星野源まで数々のライナーノーツを手掛ける。近著に「生活が踊る歌」(駒草出版)。