数多くの漫画を見てきたマンガ編集者が「おもしろい」と思わず口に出してしまう作品がある。今回取り上げるのは、国民的4コマギャグマンガ作家である、いしいひさいち先生の『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』 だ。
マンガ表現の現在地を象徴する、 奇跡のような作品
2023年度の「このマンガを読め!」でめでたく第1位に輝いたのが、この『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』。作者は、1970年代の『がんばれ!! タブチくん!!』に始まり、長年にわたって朝日新聞紙上で連載された『となりの山田くん』『ののちゃん』に代表される国民的4コマギャグマンガ作家である、いしいひさいち先生。スポーツ物から時事ネタまで幅広く取り上げ、笑いへのアプローチ一つとっても、センスオブワンダー。多彩、多芸、多作。それでいてオリジン…とてつもなく偉大な作家です。
最後に特筆すべきは、本作が自費出版である点です。商業マンガ誌にウェブやアプリ、オリジナルの同人誌や即売会、画像共有サイトにSNS…現在、マンガはあらゆる形式・場で発表されていて、豊かな「生態系」が存在しています。人間の想像に果てはなく、常に新しい才能や表現が生まれ続ける奇跡――マンガって本当にいいものですよね。これを、本連載の締めの言葉とさせていただきます。
『ROCA
吉川ロカ ストーリーライブ』
いしいひさいち
「キャラデザ最高。線を極限まで減らした究極のデフォルメ。これまで描かれた老若男女すべてのキャラが今作のサウダージに結集されている」
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浅田貴典
1973年生まれ。マンガ編集者。週刊少年ジャンプ、ジャンプスクエアで『ONE PIECE』『BLEACH』『血界戦線』などを立ち上げた。現在は集英社第3編集部部次長、第3編企画室室長。