スケートカルチャーが今また注目を集めているけれど、ただ滑るだけじゃなく、そこから生まれるクリエイティブに着目して取り入れてみると、生活がちょっとおしゃれに、豊かになる。そんなわけで観点を変えて、“すべらない”スケートの話をいくつか。
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「型を作って枠を設けず」で、作法にセンスを追求
赤熊寛敬a.k.a.熊野宗寛/茶道家
1977年生まれ。千葉県出身。’94年にAJSAアマストリート部門で優勝し、’95年にプロとして活動開始。現在はスケートボードのハウツーを伝える「くまトレ」をYouTubeで配信中。家業である茶道の准教授のほか、古流松濤派華道の副家元でもある。
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現在も浦安のスケートショップ「instant」やエメリカなどからサポートを受けている。40代とは思えないしなやかな動き。
撮影協力:Sonik Distribution
お茶の世界もスケートも つながる、広がる輪を楽しむ
熊野宗寛さんは、裏千家茶道の准教授であり、今も多くのショップやブランドからスポンサードを受ける生粋のスケーターだ。小学5年生の頃に滑りだし、15歳のときに家業でもある茶道を本格的に始めた。高校生になってAJSAの大会で優勝し、プロのライセンスを取得する一方、静謐な空間でお茶を点て、客人をもてなす風流を尽くしていく。その相反するかのような二つのカルチャーを40歳を過ぎた今も両立している。ちなみに「熊野」は着物を着ているときの名前で、板に乗っているときは赤熊さん(本名)だ。
「スケートの自分もお茶の自分も、どちらも自然で噓がありません。ともに人前で披露する意味で共通している部分もあります。技と所作、どちらもかっこよく見せたい気持ちが練習と稽古のモチベーションにつながっています」と熊野さん。風流を楽しむお点前も、スケートも、その出自は遊びから。「一人で滑るスケートは好きじゃなくて、仲間と一緒にお互いを高め合ったり、茶も、教室にみんなが集まることで、広がっていく輪を楽しんでいる」というように、外に対して開けた感覚を大切にしているようだ。
お茶の世界に作法はつきものだが、熊野さんは「型はあっても枠はない」という。道具選びは好みとセンス。茶碗に棗(なつめ)、茶室内を演出する掛け軸、花器など、自分らしい観点で季節やバランスを考えているそう。熊野さん自身は否定するが、多くのカルチャーと接触するスケートボードで培われたセンスは、無意識に生かされているはず。勝手ながら静の世界に動を感じる、美しい佇まいがそこにある。
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Stylist:Takeshi Toyoshima
Composition&Text:Masayuki Ozawa