2021.12.09
最終更新日:2024.03.07

『トリリオンゲーム』ハッタリ男とマジメ男がゼロから起業で1兆ドルを稼ぎ出す!?【このマンガの実写化が見たい!|南 信長】

数ある漫画の中から実写にしてほしい作品を紹介する連載。第一回目に取り上げるのは、マネーゲームも楽しめる『トリリオンゲーム』だ。

『トリリオンゲーム』ハッタリ男とマジメ男の画像_1

ハッタリ男とマジメ男がゼロから 起業で1兆ドルを稼ぎ出す!?

もしも年末ジャンボで10億円当たったらどうするか…と夢想したことのある人は多いだろう。しかし、本作の主人公の一人「ハル」は違う。本気でトリリオン=1兆を獲りにいくのだ。しかも円ではなくドル。本稿執筆時点のレートでいえば、約109兆円である。2021年度のわが国の一般会計予算は約106兆円。日本の国家運営を丸ごとまかなえるぐらいのお金を稼ごうぜ、というのが本作のテーマである。

初っ端からスケールがデカい。しかも、そのケタ外れの成功を手に入れた時点からの回想として物語は綴られる。どこに向かうかわからないストーリーは安心して読めないという読者が多い昨今、賢明な選択と言えるだろう。

主人公はハルとガク。イケメンで社交的でケンカも強いハルとパソコンオタクで陰キャなガクという、本来なら水と油のように交わらないはずの二人が、ひょんなことからマブダチとなり起業する。エンジニアとしてのガクのスキルが第一の武器。第二の武器は、デタラメに見えて鋭いハルの発想力とモンスター級のコミュ力、突風のような行動力だ。時には反則スレスレの技も使いながら、口から出まかせのハッタリ事業計画を現実化していくさまは痛快そのもの。ボケとツッコミの会話も楽しく、バディものとしてグッとくる場面もある。新入社員なのに社長にされたマジメ女子・凜々のキャラもいい。

そして何よりすごいのが展開の速さ。あれよあれよという間に話が進んでいく。このスピード感は、10話ぐらいでケリをつけなきゃいけない今のドラマにぴったりだ。ライバルとなる巨大企業の社長令嬢も含め、クセの強いキャラはキャスティングのしがいもあるだろう。

原作:稲垣理一郎、作画:池上遼一という座組には正直不安もあった。『アイシールド21』『Dr.STONE』などを手がけた稲垣と、大御所中の大御所の池上とは32歳差。はたして嚙み合うのか? ところがフタを開けてみれば、絶妙のコンビネーション。稲垣の原作(おそらくコマ割りされたネーム原作)が池上の“決め絵”の力と化学反応を起こし、新しい価値を生み出した。それはハルとガクのコンビが起こすミラクルにも通じる。これぞ企画の勝利である。


『トリリオンゲーム』
原作:稲垣理一郎 
作画:池上遼一
1~2巻発売中/小学館
(ビッグコミックスペリオール連載中)

口八丁のイケメン・ハルと陰キャなパソコンオタク・ガク。謎の友情で結ばれた凸凹コンビが1兆ドル目指して起業する。猛スピードで疾走するビジネスサクセスストーリー。



南 信長
マンガ解説者。朝日新聞ほか各雑誌で執筆。著作に『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。


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