かねてより、芸人きっての時計マニアとして知られてきたマヂラブ村上さん。王道の名機を愛用する彼に、新鋭ブランドや、流行にとらわれない脱・王道な時計をあえて提案。イメチェンしたいつもと違う姿とともにご覧あれ!
BREGUET
僕のブレゲの印象が大きく覆った
TYPE 20 CHRONOGRAPH 2057
ドレスウォッチの老舗の知られざるミリタリーの名品
1775年に創業した老舗で、エレガントなドレスウォッチを得意とするブレゲ。実はパイロットウォッチの名門でもあり、1950年代にはフランス空軍が定めたパイロット用クロノグラフの規定「タイプ20」に準拠する腕時計を製作していた。その伝説的モデルをベースにしており、操作しやすい大型リュウズや大きな30分積算計などでレトロな空気を生む。「ブレゲ=ドレスウォッチの印象でしたが、これはカッコいい。クロノグラフの滑らかな動きも惹かれます」。搭載ムーブメントは最新鋭のCal.7281で、NATOストラップとカーフストラップを付属。
自動巻き。SS。ケース径42㎜。¥2,585,000/ブレゲ(ブレゲ ブティック銀座) 古着のコート¥13,200/サファリ プラス カットソー¥23,100/ウティ(にしのや) メガネ¥70,400/マックス ピティオン(コンティニュエ)
IWC
これ見よがしな時計は好きじゃない
INGENIEUR AUTOMATIC 40
’70sの復刻にも気になる名品アリ
1970年代は機械式時計にとって冬の時代だったため、逆に挑戦的なデザインが目立った。こちらのモデルは、天才的な時計デザイナーのジェラルド・ジェンタが手がけた’76年の傑作「インヂュニアSL」のデザインを、現代の技術を駆使してアップデートさせたもの。薄型の自社製ムーブメントCal.32111を搭載することで、オリジナルモデルよりも薄い10.7㎜厚を実現している。ケースからブレスレットへとつながる人間工学的なフォルムが、手首に心地よく馴染んでくれる。「質実剛健さも魅力。これは普段使いの時計にしたいです!」。
自動巻き。SS。ケース径40㎜。¥1,694,000/IWC シャフハウゼン 古着のデニムジャケット¥18,700/サファリ プラス ニット¥104,500/メゾン エ ヴォヤージュ(メゾン エ ヴォヤージュ 麻布台ヒルズ店) メガネ¥55,000/イエローズプラス(コンティニュエ)
GRAND SEIKO
ダイヤルの表現力に驚かされる…
EVOLUTION 9 COLLECTION SLGA021
スイスブランドの次は日本の名作を押さえたい
高級時計の本場はスイスだが、グランドセイコーも機構とデザインが高く評価されている。このモデルは、機械式でぜんまいを巻き上げて歯車を動かし、クオーツ式で精度をコントロールする世界初のスプリングドライブ機構を搭載。ダイヤルには、製造地から南東にある諏訪湖の“夜明け前の水面”をイメージし、やわらかな凹凸を深いブルーで仕上げた。「ダイヤル、カッコいいですね。年を重ねてからも似合う時計です」。
自動巻き式スプリングドライブ。SS。ケース径40㎜。¥1,155,000/グランドセイコー(セイコーウオッチ お客様相談室) ジャケット¥42,900/ネズヨウヒンテン(にしのや) シャツ¥44,000/マービンポンティアック(オーバーリバー) タイ¥17,600/メゾン エ ヴォヤージュ(メゾン エ ヴォヤージュ麻布台ヒルズ店) メガネ¥50,600/オージー バイ オリバー ゴールドスミス(コンティニュエ)
PARMIGIANI FLEURIER
知られざる名品、いい響きです
TONDA PF MICRO-ROTOR
ミニマルでラグジュアリー次世代ラグスポにも注目!
機能的でありながら高級感があるラグジュアリースポーツウォッチは、老舗の傑作たちが絶対的な人気を集めている。しかし新進気鋭のブランドにも注目したい。パルミジャーニ・フルリエは1996年の創業だが、その品質の高さで時計愛好家から強く支持されている。このモデルは7.8㎜という超薄型ケースや、バーリーコーンギヨシェと呼ばれる繊細なダイヤル装飾が特徴。「シンプルながらベゼルだけプラチナ製など、小さなこだわりが楽しい」。あえて秒針をつけないなど、静かに流れる時間を楽しむ時計となっている。
自動巻き。SS。ケース径40㎜。¥3,707,000/パルミジャーニ・フルリエ ジャケット¥154,000/ガブリエラコールガーメンツ フォー エディフィス(エディフィス 新宿) ニット¥23,200/クレプスキュール(オーバーリバー) ヴィンテージのメガネ¥27,500/にしのや
NORQAIN
この軽さなのに機械式なんですか?
WILD ONE 42MM
ブランドの歴史にとらわれないニューフェイスを狙ってみる
伝統を重んじる時計業界では、創業150年を超える老舗ブランドも珍しくない。そんな中で「ノルケイン」は、2018年の創業ながら時計業界の大イベントへの参加が認められ、多くの時計業界の重鎮がサポートを惜しまないという稀有なブランド。こちらのモデルは独自開発したカーボン複合素材「ノルテック」を使用しており、軽いのにタフ。オールブラックの精悍なルックスも存在感があり、スイス時計の新時代を開拓する存在になっている。「軽さに驚き! どんどん新しいブランドが出てくるのも、時計の面白さですね」。
自動巻き。ノルテック。ケース径42㎜。¥847,000/ノルケイン(ノルケインジャパン) 古着のアノラック¥29,700/サファリ 4号店 メガネ¥42,900/オリバー ゴールドスミス(コンティニュエ)
村上さん、愛機と時計沼を語る。
最後は、村上さんが所有する時計を前に、時計愛について存分に語ってもらった。
時計には文化がある。だから好きなんです
「僕の人生のテーマは“上品”。それは時計選びにもかなり結びついています。ギラギラして見られたくないですから」
そんな村上さんが時計に魅せられたきっかけは、学生時代に知人がつけていたIWCだった。
「さりげなくてオシャレに見えた。僕が芸人を目指したきっかけの一つは、IWCの時計を手に入れたかったからで、実際に2017年のM-1の決勝戦に出たタイミングで、IWCのポルトギーゼ・クロノグラフを購入しました」
その後もさまざまな節目に時計を手に入れてきたが、時計がコミュニケーションツールになることも多いという。
「先輩芸人には時計好きが多いので、○○つけてるやんけ、みたいなことから話しかけてもらえることも多くて、おすすめの時計やブランドの話など、文化レベルの高い会話を楽しんでいます(笑)。A.ランゲ&ゾーネをつけているときには、ケンドーコバヤシさんから『なんか勘違いしてたわ。おまえ、センスええんやな』と言われてうれしかったです。だからもっと時計を勉強して、もっとこの世界のことを知りたいですね」
次は芸歴20年、もしくは25年の節目に時計を手に入れたいと話す。そのときに彼は、何を選ぶのだろうか?
2017年に購入したIWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ」は、後輩芸人に貸し出し中。そこで同じIWCのアンティークウォッチ「ヨットクラブ」(右)を購入。A.ランゲ&ゾーネ「グランド・ランゲ1・ムーンフェイズ」(中)は、かなり通好みのセレクト。結婚の際に奥様からプレゼントしてもらったというジャガー・ルクルト「レベルソ・クラシック」(左)は、ケースバック側に“Forever Love”と刻印した。
時計を手首の内側につけるのが村上さんのスタイル。その理由も「上品に見られたい」から。これ見よがしに時計をつけることは好まず、時計のセレクトもブランドの看板よりは、意外性のある時計を選びたいという。ちなみに今回の撮影で選んだ時計の中で、最も気になったのはパルミジャーニ・フルリエのトンダ PF。ブランド名の語感も気に入っており、精密なダイヤル仕上げの上品な美しさにも驚いていた。
マヂカルラブリー 村上
1984年愛知県生まれ。大学時代にはお笑いサークルに所属し、卒業後に野田クリスタルと「マヂカルラブリー」を結成。M-1グランプリ2020の王者であり、キングオブコントでは、2018年と2021年にファイナリストに選ばれている。
Videographer:Atsushi Tanizawa
Hair&Make-up:HORI[bNm]
Stylist:So Matsukawa
Text:Tetsuo Shinoda