細かい蘊蓄やスペックの話は置いといて、シンプルに見た目だけでファミリーカーを選んだらどうなるか。各界のクルマ好き6名が集まり、現行モデルから発売予定のニューモデルまで、グッドルッキングなモデルについてあれこれ語ってもらいました。
ー 参加者 ー
EV化でクルマのデザインはどう変わる?
―座談会を始めるにあたって、まずは今のクルマのデザインのトレンドについて、渡辺さんに簡単に解説いただければと思います。
渡辺 自動車業界は今、「100年に一度の大変革期」みたいなことを言われています。それは多分にバッテリーEVの登場がかかわっているのですが、バッテリーEVになるとエンジンが要りません。じゃあ、どこにバッテリーを積むかといえば、だいたい床下に積むのが合理的だという話になります。バッテリーの大小によってタイヤの前後間の長さ(=ホイールベース)が変わってくるので、航続距離を延ばそうとすると、バッテリーが大きくなって、必然的にホイールベースが長くなっていきます。そもそものクルマのデザインがこれまでとはまったく違うものになっているんですね。そうした状況で、例えばメルセデスのEQEはバッテリーEV専用のプラットフォームを使っていて、ある意味、未来のクルマの形状をいちばん現実的に表したモデルかなと思っています。
佐藤 ほんとにそうですね。前後の違いをあまり感じないところとか、未来のクルマだなって気がします。
Mercedes-Benz EQE
渡辺 その一方で、アバルト500eみたいなケースもあって、これもバッテリーEVなんですけれども、デザインはガソリン車のフィアット500の流れをくんだレトロフューチャーな形になっています。同じバッテリーEVであっても、500eのように過去のデザインソースをちゃんと継承して形にしていくところもあれば、EQEのように完全に未来に振り切ってデザインするところもあって、現状はこの二つの流れがあるのかなと思います。
Abarth 500e
佐藤 EQシリーズでいうと、EQGもリリースされるみたいですね。コンセプトモデルの写真を見たんですけど、EVなのに、現行のGクラスとほとんどデザインを変えてないような感じでした。
渡辺 EQGはまんまですね。多少EV化によるコズミック感は出ると思いますけど、構造自体はまんま今のGクラスでいくみたいです。
藤村 あの丸目のヘッドライトとか角張ったデザインが残るのはいいですよね。Gクラスはやっぱり変わらないでいてほしい。
遠藤 ハイブリッドが普及して、プリウスとかアクアが普通のクルマになったように、EVが未来の乗り物ではなくなって、今までのクルマの形のまま置き換わるというのも増えていくのではないかなと思います。「EVだからこの形じゃないといけない」というのはないんじゃないのかなって。
Mercedes-Benz G Class
服部 一つ質問いいですか。
―どうぞ。
服部 最近、半円のヘッドライトって多いじゃないですか。あれは何でなんですか?
渡辺 素直に丸にしたくないんだと思います。
服部 えっ、それだけなんですか!?
遠藤 真ん丸とか真四角って単純で簡単だからこそ、デザイナーは置きたがらない。
渡辺 芸がない、仕事をしてないというふうになっちゃうから。
服部 最近のクルマだと、デリカミニとかも半円ですけど、なんかカーズみたいに見えるんですよ。
今泉 カーズっぽいってわかる(笑)。
遠藤 最近はクラシックな雰囲気が人気だから、丸いヘッドライトのクルマも少しずつ増えていますよね。
渡辺 動力源がモーターへと変わっていっている時代なので、それこそエキゾーストサウンドとか、自分が慈しんできたものがどんどんなくなってしまうんじゃないか的な危機感が自動車をつくっている人たちの中にあって、どうやったら愛されるクルマでいられるのかという、その一つの表れが丸目なのかもしれません。でも、もうそろそろ丸目は総量規制したほうがいいんじゃないかという気がしてますけど(笑)。
ーPART.2へ続く
Interview&Text:Masayuki Sawada