1980年~90年代の日本のネオクラシック車の魅力を余すことなく紹介。クルマとの出会いや愛着など、文化系男子のクルマ生活のあれこれを聞いてみた。
「ネオクラシックカー」とは?
1980年代から90年代にかけて製造されたクルマを、主に1960年代から70年代に製造された従来のクラシックカーと区別して「ネオクラシックカー」と呼ぶ。
30代から40代にとっては青春時代の憧れのクルマであり、若い世代にとっては最新のクルマとは異なる、メーカーの姿勢が色濃く反映された個性的なつくりが新鮮に映り、世代を問わず人気を博している。また車種にもよるが「クラシックカー」よりは、まだ現代でも日常使いしやすいものが多いのも魅力的だ。とはいえ昨今では、状態のいい人気の車種は年々価格が高騰している。買うなら今がラストチャンスだ。
ネオクラシックカー日本車
01. 三菱・ジープ デリバリワゴン(J36)(1982年式)
一生乗り続けたくなる「わがままなクルマ」
平 健一さん(スタイリスト)
ジープといえばこの顔、という人も多いだろう。三菱・ジープは、かつての警察予備隊、防衛庁に卸され、民間用としても広く愛された元祖国民的4×4だ。今回ご紹介するのは、希少な4ドアモデルである「ジープ・デリバリワゴン(J36)」。見た目はクラシックカー然としているが、1982年式というから細やかなアップデートが行われている。そうした実用性の高さからしても、十分にネオクラシックと言える年ごろだ。オーナーでありスタイリストの平 健一さんは、10年前に友人からこのジープを譲り受け、その後幾度となくトラブルに見舞われたものの、修理と日常のメンテナンスを繰り返し、大切に乗り続けている。
02. いすゞ・ピアッツァ XE(1983年式)
初の愛車はジウジアーロと決めていた
後藤和樹さん(空間デザイナー)
トラック業界で世界有数のシェアを誇るいすゞ自動車。同社にはかつて乗用車部門があり、多くの名車を世に送り出していたことをご存知だろうか。その中の一台が、今回ご紹介する「いすゞ・ピアッツァ」。イタリアの工業デザイナーの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロによる美しいボディラインは、一見すると国産車ではないような錯覚を覚える。こうしたクルマに出会えるのも、ネオクラ車の面白いところだ。
03. ホンダ・シティ カブリオレ(1985年式)
「自分と気が合う」シティのオープンカー
小野康太郎さん(フィットネストレーナー)
ホンダが生んだハッチバック「シティ」は、エポックメイキングなクルマだ。1980年代はVWゴルフやプジョー205、ルノーの5など、実用的で小洒落た3ドアハッチバックが花咲いた時代だった。が、シティはそうした欧州勢とも一線を画す、日本独自のコンパクトカーだった。1981年にデビューしたシティは、「トールボーイ」と呼ばれるポップなスタイリングがヒット。次第にターボを搭載した刺激的なモデルを追加するなど、走りの面と合わせて当時の若者の心を掴んだ。
「マルセイユブルー」と呼ばれる地中海をイメージした青がまぶしい小野康太郎さんのシティは、1985年式。前年にラインナップに加わった「カブリオレ」だ。この小さなクルマも、イタリアのカロッツェリア(ボディデザインの工房)ピニンファリーナの手にかかれば、ご覧のようなソフトトップとルーフバーを備えた本格的なオープンカーに様変わりする。
04. ホンダ・シティ GG(1987年式)
あえて地味な2代目シティがよかった
中川拓海さん(CRANK TOKYO スタッフ))
1981年にデビューしたホンダ・シティ(初代)は、まごうことなき傑作だった。愛嬌のある丸い目に背が高い個性的なプロポーション、過激なターボモデル、そしてシティに積むことを前提に設計されたモトコンポ……まさにそれは、80年代日本のユースカルチャーを代表するアイコンのひとつといえる。
その一方で、先代がそこまでの名声を得ると、その後に続く者はどうにもやりづらい。今回登場する2代目シティは、初代とは異なるスタンスに舵を切った、真新しいコンパクトカーだった。いま改めて見ると、直線的で緊張感のあるデザインとワイド&ローなスタンスは実に格好いい。それに走りだってなかなかにスポーティだ。
05. 日産・グロリアバン V20E(1996年式)
渋いカタチと純白なボディのギャップがいい
瓜坂拓海さん(スタイリスト)
軽から普通乗用、そして商用にいたるまで、すっかりハコ型のクルマがもてはやされる世の中になった。そんな今こそ、見るだけで急に懐かしい気持ちが込みあげてくるのが、ワゴン・バンタイプのクルマだ。50年代後半から90年代後半までにつくられたミドルクラスの乗用車のなかには、ワゴンや商用バンなどのボディバリエーションをもつ車種が一定数存在していた。今回ご紹介する「日産・グロリア(Y30)」もそのひとつ。乗用車がベースであるからこそ生まれる“ゆとり”は、国産ネオクラ車にしかない魅力といえる。