2023.07.19

【目利きな大人が狙う新作時計#08】シャネル、IWC… 進化した定番5選

久々に通常開催となった「Watches and Wonders」などで発表された新作時計を、目利きたちが注目のトレンド別にガチレビュー。その魅力を深掘りする!

【目利きな大人が狙う新作時計#08】シャの画像_1
江口大介さん 江口洋品店・江口時計店 代表プロフィール画像
江口大介さん 江口洋品店・江口時計店 代表
古着のバイヤーの時代に時計に魅せられ、ヴィンテージウォッチショップのオーナーに。「小さいけれど時計以上に、その人の人生観や哲学を表現するモノってないんじゃないかなって思うんです」。
かっぴーさん 漫画家プロフィール画像
かっぴーさん 漫画家
アニメ化の決まった『左ききのエレン』などで知られる人気漫画家。「時計にハマったのは、1年ほど前からです。自分が描くキャラクターに似合う時計は何かなって考えるのも楽しいんですよ」。
後藤洋平さん 朝日新聞 編集委員プロフィール画像
後藤洋平さん 朝日新聞 編集委員
新聞記者としてパリやミラノのコレクションやスイスの時計展示会の取材を行う。「ヴィンテージウォッチが好き。でも、もっと好きなのは、時計好きの人たちと語らうこと。お酒が進みますよ」。
小林 新さん スタイリストプロフィール画像
小林 新さん スタイリスト
雑誌や広告など幅広い媒体で活躍する人気スタイリスト。「その時計がどういう時代背景から生まれたのかなど、考えるのが好き。僕にとって時計はもはや時刻を知るためのものではないかな」。
田中 遥さん フリーランスPRプロフィール画像
田中 遥さん フリーランスPR
大手セレクトショップのPRを経て、フリーランスPRとして活動。「愛用しているのはヴィンテージウォッチばかりです。故障もするし、精度もあまりよくないけど、あれこれ手をかけるのが好き」。

最新技術を搭載

進化した定番!

定番だって進化する
俺たちだって進化しないとね
後藤 シャネルの「J12」が典型ですが、ユーザーもブランドも、時計に対する考え方が変わってきていますよね。
かっぴー 自分の型をどんどん壊して進化している。ビジュアルはもちろんですが、その姿勢自体がカッコいい。
小林 定番になるようなモデルは、よくも悪くも一世を風靡したということを意味します。つまり特定のイメージがついてしまっているのも事実。だからこそ先入観を捨てないとね。
江口 そうそう。本当の魅力を見逃してしまいますよね。


シャネル

特殊素材さえもやすやすと手なずけるシャネルの技術力

シャネル J12 サイバネティック
シャネル J12 サイバネティック 寄り
江口大介 着用の様子
後藤洋平 着用の様子

1J12 サイバネティック

2000年のデビュー以来、一貫したスタイルをもつ「J12」。2020年に披露したバイカラーセラミックの技術を進化させた。ケースの3分の1をホワイトセラミックにするだけでなく、カクカクしたフォルムもユニーク。これは電脳空間のピクセル画をイメージしたもの。仕上げの難しい素材で徹底的に遊ぶという創造性には、いつも驚かされる。自動巻き。高耐性セラミック。ケース径38㎜。数量限定。¥2,013,000/シャネル カスタマーケア

以前から気になっていたモデルですが、実物に触れたら、やっぱりすごかった。時計というより、現代アート作品のようなカッコよさ(かっぴー)

時計らしくない時計。でもそれがコンセプトであり、楽しんでいるようにも見える。僕が好きなポストモダンの家具に似た雰囲気を感じる(田中)


IWC

歴史的傑作デザインを現代的に進化今年最大の話題作はコレだ

IWC インヂュニア・オートマティック40

2インヂュニア・オートマティック40

天才デザイナー、ジェラルド・ジェンタが1976年にデザインした「インヂュニアSL」を、巧みに継承した最新作がついに誕生。耐衝撃性を高めるためにリュウズガードを加えたのが大きな変化だが、薄型ケースを好んだジェンタのデザインにオマージュを捧げて、10.7㎜厚の薄型化に成功。ダイヤルのグリッドデザインも、当時のモデルからインスピレーションを受けている。自動巻き。SS。ケース径41㎜。¥1,567,500/IWC シャフハウゼン

これは争奪戦でしょうね。新作として発表されると聞いて、かなり心が揺れました。時計としての完成度も高いし、ジェラルド・ジェンタのデザインを継承しているのも魅力。新しく加わったチタンモデルもいいな(小林)

すでに僕の周囲でも、何人かがオーダーを入れてます。すごくきれいな時計ですよね(後藤)


ベル&ロス

メカ好きならコレ。パリで生まれたインダストリアルな一本

ベル&ロス BR-X5 ブラック スティール

3BR-X5 ブラック スティール

航空計器のデザインを時計に取り入れるという大胆な発想から生まれたBRシリーズに、都会的なエッセンスを加えたのが「BR 05」で、さらにそこに構造的な美しさを加えたのがこのモデル。ケースサイドを大胆に彫り込むことで緊張感のある精密なデザインに仕上げた。大きなカレンダー窓やグラフィカルなパワーリザーブ表示も美しい。自動巻き。SS。ケースサイズ41㎜×41㎜。¥990,000/ベル&ロス 銀座ブティック

この時計が好きな人は、絶対メカ好き。僕も好みです。カジュアルにさらっとつけてもいいし、逆にクラシカルなスタイルのハズシにもいいかも。わかっている人って感じに見えます(小林)

ブランドの考え方も、デザインもシンプルで潔い。華美さがないところが好みです。このボリュームが、いかにもベル&ロス(後藤)


ゼニス

伝統を継承するパイロットウォッチをモダンにアップデート

ゼニス パイロット オートマティック

4パイロット オートマティック

20世紀初頭から航空計器やパイロットウォッチを製作し、時計業界では唯一ダイヤルに「Pilot」と明記できるゼニス。これまでは計器風の武骨なレトロデザインだったが、今年からモダンなスポーツウォッチへとリニューアル。同社の技術力が詰まった高振動ムーブメント、エル・プリメロを搭載しているのも新しく進化した点だ。自動巻き。SS。ケース径40㎜。¥968,000/LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス

漫画家のモンキー・パンチ先生は、次元大介にゼニスの時計をつけさせたそうです。僕も自分が描くキャラクターに、こういう時計をつけてもらいたい。想像力が広がる時計です(かっぴー)

高振動ムーブメントのエル・プリメロを搭載しており、秒針の動きが超絶滑らかで驚きました。いい時計です(後藤)


フランク ミュラー

時計デザイン史に残るケースがさらに官能的にアップデート

フランク ミュラー グランド カーベックス

5グランド カーベックス

1992年の創業以来、アイコンデザインとなっていたトノウ カーベックスケースが進化。風防ガラスをケースの縁ギリギリまで拡大させることで、ケースや風防のカーブを強調し、今まで以上に美しい3次元曲線を引き出した。ダイヤルのギヨシェ装飾もさらに複雑になっており、眺めるだけでも楽しい時計である。自動巻き。SS×18KPG。ケースサイズ53.1㎜×36㎜。¥2,035,000/フランク ミュラー ウォッチランド東京

小林 新、江口大介、後藤洋平 話す様子

このケースのデザインはとても好みです。一つの完成形でしょう(江口)

天才時計師の作ったケースデザインですから、やっぱり深く考えられています。今回「グランド カーベックス」にグレードアップしたので、あらためてそのカッコよさや美しさに注目してほしい(小林)



※文中すべて、SS=ステンレススチール、PG=ピンクゴールドの略です。




Photos:Yoshio Kato(Still)  Mai Shinya(Person)
Text:Tetsuo Shinoda

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