久々に通常開催となった「Watches and Wonders」などで発表された新作時計を、目利きたちが注目のトレンド別にガチレビュー。その魅力を深掘りする!
意識の高い男は
時計だってエシカル
時計にも倫理を求める
そんな優しい男でありたい
江口 歴史あるブランドが、エシカルという新しい取り組みに力を入れているのは、興味深い傾向です。
田中 ファッションの世界では広く取り入れられている考え方が、時計界にも広がっているのは意外でしたが、ストラップやケースの素材に注目するというのは、新しい観点かもしれません。
後藤 ショパールのように、単に再生素材であるだけでなく、硬度を高めるなど付加価値を意識しているのも、戦略としては正しい。
小林 事実、気になるモデルも多かったですね。
パネライ
ミュージアムから発見されたような味のある再生スチール
1ラジオミール オットジョルニ
再生素材で作られる高品質ステンレススチール「eSteel」を採用。パネライではこの技術や協力企業をオープンにして、他社でも使えるようにしている。この素材の表面にヴィンテージ加工を施した新素材を開発し、クラシック顔の「ラジオミール」で採用した。なおモデル名の「オットジョルニ」は8日間という意味で、この時計の連続駆動時間に由来している。手巻き。eSteel。ケース径45㎜。¥1,293,600/オフィチーネ パネライ
ヴィンテージ加工で、さらに男くさいカッコよさがアップ。レトロなデザインは、おじいちゃんの書斎から出てきたような感じがする。このくらい大きくないとパネライじゃない(かっぴー)
サイズ感、デザイン、仕上げなど、歴史的な文脈を理解したうえで手にすべき時計です。再生素材の雰囲気も含めて、説得力があります(江口)
ショパール
エシカルだけど、実用的な性能もしっかり確保する
2L.U.C 1860
時計業界ではいち早く、エシカル素材の採用に踏み切ったショパール。今年は再生素材ながら医療用スチールと同様の品質と、それを上回る硬度をもつルーセントスティール™を採用した。ポリッシュ仕上げやサーモン色のダイヤルなど、細部まで美しさにこだわった。搭載ムーブメントのCal.L.U.C 96.40-Lも必見。自動巻き。ルーセントスティール™。ケース径36.5㎜。年内発売予定。¥3,267,000(予価)/ショパール ジャパン プレス
すごくきれいな時計で、ダイヤルの仕上げも素晴らしい。僕は“ムーブメントガイ”ではないのですが、このムーブメントは特別。ジュエラーとウォッチメーカーを完璧に両立している(後藤)
今回の企画の中で、いちばん欲しい時計がコレです(小林)
オリス
伝統的なモデルにディアレザーのストラップを
3ビッグクラウン キャリバー473
オリスのアイコンモデルである針式カレンダーのパイロットウォッチの新作は、手巻き式の自社ムーブメントCal.473を搭載。ぜんまいを巻き上げる味わいを楽しめる。レザーストラップは廃棄されていた鹿の革を再利用して製作。またダイヤルには優しい色合いのブルーを使用、風防のデザインも丸みを帯びており、全体的にやわらかなニュアンスにまとめている。手巻き。SS。ケース径38㎜。¥638,000/オリスジャパン
初めて手にした機械式時計が、オリスなんです。今も手元にありますが、このモデルとデザインはほぼ同じ。それが自社ムーブメントを搭載し、エシカルでもあるなんて、感慨深い(後藤)
ダイヤルが美しい。北欧インテリアの色合いをイメージしているそうですが、ポップな雰囲気もあり、真面目なだけじゃないところがいい(田中)
※文中すべて、SS=ステンレススチールの略です。
Text:Tetsuo Shinoda