カーボンニュートラルな環境意識の高まりとともに続々と誕生しているEV。もはや次にクルマを買うならEVしかない?
ソニーに“乗る”? 車載安全技術とエンタメを集結させた究極のEV
Sony VISION-S Prototype
いつの時代もエポックメイキングな製品で世間をにぎわせてきたソニー。その次なる舞台は、なんとEV! 同社初のモビリティ「VISION-S Prototype」がお披露目されたのは、2020年年明けのこと。ソニーと自動車開発のつながりを不思議に感じる人も多いと思うが、実は車載センシング技術の開発・提供を長年手がけてきた実績をもつ。このEVの誕生は、そうした開発の延長線から始まったソニー初の試み。
惜しくも発売の予定はないが、試作車は公道での走行実験を見据えて造られているため、けっして見かけ倒しのクオリティではない。中でも驚いたのは、細部に宿るソニーデザイン。世界中の最新EVに引けを取らないエクステリアもさることながら、ダッシュボードいっぱいに広がるパノラミックスクリーンや、直感で操作しやすいインターフェースからは、アンドロイドスマホやゲーム機で培った技術力を体感できる。そして極めつきは、シートやドアに埋め込まれた大量のスピーカーによる立体音響システム。大音量なのに快適という、まるで映画館のような臨場感は、まさに進化したウォークマンという印象だ。近い将来、こうした試行が市販のEVで実を結ぶことを願うばかり。
ちなみにVISION-S Prototypeの開発には、マグナ シュタイヤーという、メルセデスベンツ・Gクラスやトヨタ・スープラなどの生産も担うオーストリアの企業が加わり、EVのプラットフォームをベースにさまざまなボディタイプにも対応可能という本気度。まさかソニーに“乗る”時がくるなんて…単純に欲しいですよね?
VISION-S Prototypeのデザインコンセプトは「オーバル」。内外に搭載された40ものセンサーが走行中の安全を察知するほか、ドライバーが車両に近づくと灯火類やドアノブが光り、一つの円を描くような演出も。乗員を包み込むように設計された車内空間は、次世代の安全性とエンタテインメントを両立し、5Gによってそれらがアップデートされる仕様に。今年からオーストリアとドイツでは、公道実験が始まっている。まもなく日本の道でも走る姿が見られる?
神保匠吾
1982年福岡県生まれ。オンラインモーターマガジン「DRIVETHRU」ディレクター。学生時代に乗っていたBMW初代3シリーズ(E21)を電動化し、EVライフを実践中。詳しくはhttps://drivethru.jpへ。
Photos:Yuya Shimahara
Text:Shogo Jimbo