2024.12.24
最終更新日:2024.12.24

【20000字試乗日記】気になる次世代のクルマと10日以上過ごしてみた〜レンジローバー PHEV (後編)

クルマの性格を知るだけなら一日乗ればわかるけど、せっかくなら日々生活の中でどう生きるかも知りたい。そこで、日頃からクルマに乗る物書きの二人が、スポーティなEVのアバルトと最高級のレンジローバーを長期試乗。最新のクルマと10日以上を過ごしてみて見えてきた刺激的な日々を、二人合わせて20000字のリポートでお届けします。

前編はこちら

CASE 2|Range Rover PHEV

Range Rover PHEV
2024年より追加されたプラグインハイブリッドモデル。EV航続距離は121㎞。最上級のラグジュアリーSUVでありながら、高い悪路走破性と環境性能を誇る。試乗車両価格はオプション込みで¥31,718,180。
編集者
山下丸郎さん

1982年生まれ。編集者としてファッションメディアに携わるほか、神保町のstacks bookstoreでオーナー兼ディレクターを務める。愛車はホワイトの4代目レンジローバーHSE。

10/19 Sat|イベント搬入もラグジュアリーに

東京タワー

 現行レンジ生活唯一の週末! せっかくならどこかに遠出したいところなんだけど、この週末は東京タワーの真下で開催されるBILLY’Sの10周年イベント、“Tokyo Culture Depart”にstacks bookstoreとして出店。BILLY’Sの皆様、10周年おめでとうございます。周りの出店者も久々にお会いする人から、気になっていたお店やブランドの方々などで楽しみにしていたイベントだった。出店用の荷物は昨日のうちにクルマに積んでおいたので、スムーズに搬入。大きなラックなどが必要のないイベントの場合、大体トランクだけで事足りるのもレンジローバーの強み。しかも、二段階で大きくトランクが開くので、荷物を載せる際も非常に楽。ラグジュアリーなだけでなく、実用性がとても高いところがレンジローバーの大きな魅力。少しつけ加えると、ここまでに自分はレンジローバーをラグジュアリーであると何度か述べているが、そのラグジュアリーさというのは、けっして華美でいかにも高級車!というような成金趣味とは無縁なものだ。むしろ、その対極にある佇まいのことを意味している。わかりやすく言うと、UOMOの読者にはいないと思いますが、メゾンブランドの作るロゴドーンなスウェットなどを嬉々として着るような人たちは選ばなそうなクラシックさが好きなのです。もちろん、ただクラシックなだけでなく、歴代の精神性を宿しながらも今の時代に合わせたアップデートを試みているのは言わずもがな。

Carhartt WIP Japanの15周年のディナー

 閑話休題、10月も後半だというのに残暑が厳しすぎたこの日は、ブースのテントの中にいると汗だく。近くの飲食ブースで鹿児島の芋焼酎、大和桜のソーダ割りを売っていたので飲みたすぎたけど、鉄の意志で我慢。夜はクルマを置いてから、渋谷で行われたCarhartt WIP Japanの15周年のディナーとパーティへ。久々に夜深くまで遊びました。Carhartt WIP Japanの皆さん、あらためておめでとうございます!

10/20 Sun|2日間の疲れを癒やす移動空間

Tokyo Culture Depart
Tokyo Culture Depart 2

 この日も前日と同じくBILLY’Sの10周年イベント、“Tokyo Culture Depart”に出店するため東京タワーまで。昨夜のダメージを引きずりながらも頑張りました。前日とはうって変わって、いきなり冬みたいな気候で、寒すぎ…。向かいのブースだったColor At Againstでいい感じのOakleyの古着のアウターを購入したことで、どうにか乗り切れた。一緒に2日間とも出勤していたスタッフのケイヤはまんまと風邪ひいてました。両日とも想像以上にたくさんのお客さんが来てくれたのでひと安心。

 東京タワーも久々に行くと面白いし、麻布台ヒルズとか虎ノ門ヒルズの辺りはどんどん街が新しくなってくる。久々に香妃園に寄って鶏煮込みそばでも食べて帰ろうかなとか考えていたけど、疲労困憊だったので、撤収しサクッと帰宅。

10/21 Mon|英国の高級オーディオでHip Hopを鳴らす

オーディオ

 キャンセルになりそうな打ち合わせが夕方からあったので、もしかしたらロケハンがてら遠出をするチャンスかも!と思っていたけど、予定どおり打ち合わせが行われるという連絡が。

 普段から常にクルマ移動を選ぶということはないので、読書の時間がなかなかとれない。こういうときにオーディブルでの読書というものに挑戦してみようかと思ったけど、なんやかんや音楽やPodcastを聴きながら移動してしまう。現行のレンジローバーも英国ケンブリッジを拠点とするハイエンドオーディオエンターテインメント機器のメーカー、MERIDIANのサウンドシステムを採用しているので、音が本当にいい。マンチェスター出身のジャマイカ系ラッパーであるNemzzzの楽曲をこの時期はよく聴いてたけど、低音がききつつ、全体のバランスもよくて最高のリスニング環境だった。Trifield 3Dサラウンドテクノロジーという技術が用いられることによって、すべての楽器、すべての演奏者が発する音色と歌声をありのままに再現することを目指しているらしい。スピーカーのデザイン自体も、非常に抑制のきいたシンプルなところが、レンジローバーの世界観に見事にハマっている。

 店に行き、雑務をこなした後にまた渋谷に移動し打ち合わせをこなす。ちなみに、この頃になるとEVの充電はあきらめて、ガソリンのみで走っていた。燃費が結構いい気がするけど、ハイオクは本当に高い。普段はディーゼル車なのでまだ助かっているけど、ガソリンの値段ってこの先どうなっていくんですかね?

10/22 Tue|ついに!  念願のロングドライブ!

BOOKOFF

 この日は打ち合わせなどが入っていなかったので、三島と沼津へロケハンとリサーチへ。天気もよく、東名も渋滞していないので絶好のドライブ日和。三島までは都内から1時間30分くらいなので、気になるPodcastを聴いたりしているとあっという間。ちなみにPodcastってブームなんだと思うけど、本当に他愛もないおしゃべりを公開してるようなものも多いですよね。そういうなんてことのない空気感が求められる時代なのかな。かくいう自分も、好きなラジオパーソナリティの人のフリートークを聞けるのがうれしくてPodcastを聴いてます。

 東名を沼津インターチェンジで降りて、まずは目星をつけていたBOOKOFFに。この近所に読書のツボが近い人がいるっぽいなというくらいたくさんの掘り出し物を見つけることができた。これは幸先がよい! 通称“黒背”(®ikmくん)こと角川ホラー文庫からすでに版元に在庫切れとなってしまっているものを中心に10冊ほど購入。そのままLuca Wineというボトルショップへ向かう。

うなぎ 桜家
うなぎ 桜家 2

 向かっている途中、三島広小路という駅を越えると、道の反対側に気になるうなぎ屋さんを見つける。少し並んでいるようだったけど、店のすぐ脇に小川が流れていて、読書しながら待つのもいいかと思い、立ち寄る。桜家という名前のそのお店は、どうやら地元の名店らしく、創業安政3(1856)年ということらしい。こうやって気になったお店に飛び込むのもリサーチの醍醐味。20分くらいで入店でき、うなぎ丼とお吸い物をオーダー。『美味しんぼ』の教えが染みついてるので、うな重ではなく、うな丼を選んでしまう。読書をしながら待つと、いざ着丼。うなぎのエグミのようなものがいっさいなく、蒸し焼き加減も最高。これは素晴らしいな~と思いつつ、SNSに投稿したところ、どうやらここは先輩編集者である鍵山さんの地元であり、心の一軒だったとのリアクションが。偶然入ったお店なのに、すごい! 鍵山さんによると、店の脇を流れる源兵衛川という小川の水が富士山の地下水で、店の裏のタライでその水にうなぎを泳がせてドロ抜きしてるので、三島ではうなぎがとれないけど、ここまでおいしいうなぎが焼き上がるとのこと。確かに蒸し焼きのセンスも最高。勉強になりました!

 うな丼に大満足しつつ、あらためてLuca Wineへ。細い道が多いので、レンジローバーでの運転は少しヒヤヒヤするけど、モニターを使いながら運転すれば問題なし。Luca Wineは国産のナチュラルワインの品揃えがとても充実しているよいお店だった。クラフトビールも少しあって、反射炉ビールのボトルとエチケットのデザインが気になったフルーツジュースを購入。

 続いては、以前にお店に来たお客さんから教えてもらってから気になっていたYACHT BOOKSへ。店内にカフェスペースがあったり、stacksでも取り扱っているzineをいくつか扱っていると伺っていたが、民藝に関する書籍などもたくさんあり、オーナーの方の趣味がしっかり反映されているセレクトに好感を抱く。三島の中でも少しローカルっぽいエリアにこういうお店があるなんて。三島、奥深いです。気になっていた真鶴出版の本とzineを購入。

沼津港深海水族館
沼津港深海水族館 2

 次は隣の沼津へ。一応道中にEV充電のスポットがあればと意識はしていたけど、あまり見あたらなかった。やはり、成り行きに任せていると充電はできないみたいだ。沼津では日本で唯一だという深海魚専門の水族館、沼津港深海水族館へ。表のファサードの雰囲気に少し面食らうも、中の展示は非常に面白い。あいにく沼津漁港は定休日だったけど、逆にゆっくりとロケハンができたので、これはこれでいいか。誰から聞いたか忘れたけど、漁港のアジフライがおいしいとのことだったので、そこに関してはぜひともリベンジしたい。

 沼津でもBOOKOFFに立ち寄り、さらに古本を購入。駐車場で車内のWi-Fiを使用して、ちょっとiPadで作業。こないだ、iPad用のMagic Keyboardを購入したところ、操作性が段違いに上がって、もはやノートPCが不要になりつつある。車内Wi-Fiは意外と速度も早くて作業も快適。こうやって車内で作業をしていると、インテリアの高級感を感じさせつつも、本当にコンフォタブルな仕様がうれしい。作業をするために喫茶店にあわてて入ったりするよりよっぽどいい。当たり前だけど、空間が仕切られているからプライバシーも確保されているし。気になる場所を回りながら、クルマに戻ればすぐに作業を再開できる。これはますます、出張の際にクルマを使うことが増えてきそう。帰りは軽く渋滞したけど、帰宅後にガソリンの減りをチェックしたところ、半分も減っていなかった。やはり、かなり燃費がいい気がする。

10/23 Wed|令和のクルマで昭和を訪れる

電話番号にだいぶいい語呂合わせを使用した居酒屋

 某雑誌に掲載される対談企画に編集として立ち会いのため、葛飾区へ。渋谷でカメラマンをピックアップしに向かっていると、対談場所の近くで電話番号にだいぶいい語呂合わせを使用した居酒屋を発見。1808で“いっぱいやれや”。ちょっと強引なところも味わい深い。昭和の風情を残した商店街にある昔ながらの居酒屋で、ぜひ今度はいっぱいやりに行きたいと思います。

 葛飾区に来ることはあまりないけど、こうやって移動してみると、ひと口に東京といっても、だいぶエリアごとに特色があるのがわかる。もちろん、さまざまな再開発によって画一的な街が増えてきているのは間違いないと思うが、普段行かない街に足を延ばして、いろいろ見てみると自分が求めている街の雰囲気がどういうものなのか、なんとなくわかってくるのかもしれない。

10/24 Thu|お別れの前にちょっと鎌倉まで

鎌倉市農協連即売所
鎌倉市農協連即売所 2

 この現行のレンジローバーを試乗させてもらうのも今日が最終日。返却前に、stacksでいつもおつまみとして販売している、加藤野菜のピクルスと浅漬け用の野菜を鎌倉の駅前にある鎌倉市農協連即売所、通称レンバイまで買い出しに。昼前に到着し、加藤さんにいろいろな野菜の説明を受ける。ちょうど夏野菜と秋野菜の切り替わりのシーズンみたいなので、もうそろそろ秋野菜が楽しめるはず。加藤さんの作る野菜は味わいが濃厚で、シンプルに漬け物として提供するだけでも非常においしい。お客さんたちからの反応もとてもいいので、stacksにご来店の際はぜひお試しください。

 どこかお店に入って昼飯を食べていると返却の時間に間に合わなそうだったので、駅前のケンタッキーでテイクアウト。車内を汚さないように細心の注意を払いながら、和風チキンカツサンドをいただく。うまい。鎌倉の駅前の雰囲気はいつ来てもいい。鎌倉から神保町の集英社まで戻り、無事返却。

まとめ

シート

 西坂さんからクルマを受け取った際に、3000万円超えと聞いていたので、正直最初はかなりドキドキしながら運転していたし、ここまでのラグジュアリーさがクルマに必要なのだろうか?という思いも抱いた。しかし、実際に毎日乗ってみると、本当によいクルマで、搭載されていたオプションの数々をとりあえず現在乗っているレンジローバーに搭載させようかなと迷うところがたくさんあった。プラグインハイブリッドというシステムに関しては、自宅の駐車場に充電ポートがあれば問題ないだろう。でも旅行中などはEVをメインとして使用することは、現状では少しリアリティがないように感じたので、充電ポートの設置に関してはもっと改善される余地があると思う。あと、インストゥルメントパネルまわりがすべてデジタルになっていたけど、エアコン関連の操作に関しては、旧来どおりのツマミがあったほうが、絶対に使い勝手がいいと思う。

 自分にはまだこのグレードは早いので、この先、仕事もプライベートも楽しみながら人として精進し、いつか最新のレンジローバーが似合うようになったら乗り換えを本格的に考えてみたいと思う。あらためて、レンジローバー最高!

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